第153話 似た者同士

 第二試合、まもなく開始。


 第1コース…上杉ケイト

 第2コース…島津佳乃

 第3コース…服部華子

 第4コース…酒井知由

 第5コース…榊原八雲


 それにしてもこのメンバーに対しては思うところが二つある。


 まず一つ目はケイトさんと島津さん、瞳や髪の色は違うけど二人の雰囲気がよく似ているってことだな。


 二人共、長身で姿勢が良く常に凛としている。同性からもとても慕われているのも同じだ。


 来年、ケイトさんが卒業したら島津さんが『上杉枠』の後継者になるのは間違いないだろうなぁ……ってか、『上杉枠』って何だよ?



「あなた、一年生の島津佳乃さんだったわね?」


「はい、そうです」


「ふーん……島津さんはどことなく私に似ている感じがするわねぇ? もし同じグループだったらカノンの後継者に推していたかもしれないわ」


「それはとても光栄です。私は中等部の頃から上杉先輩に憧れていましたのでそう言って頂けて嬉しいです……」


「え、そうなの? じゃぁ何故、羽柴グループに入っているのかしら? そう言えば昔から茂香とも親しくしていたわよね?」


「そうですね。毛利先輩とも親しくはしていましたけど付き合い度が全然違うといいますか……羽柴先輩とは幼稚園の頃からの幼馴染で実のお姉ちゃんの様な感じでいつも助けていただいていたんですよ。だから羽柴先輩の言われることは絶対だったんです……」



「へぇ、そうだったのねぇ……でも颯君の件だけは違ったってことなのね?」



「フフフ……そういうことです。羽柴先輩にも言いましたが『恋愛は自由』ということです……」


「フッ、そうね。『恋愛は自由』同感だわ……」

たとえ彼が違う人を想っていたとしてもね。


「え? 今、何て言われました?」


「ううん、なんでもないわ……似た者同士、頑張りましょう……」





 俺がこのメンバーで思うところがある二つ目は……


 そう、何で伊緒奈グループの華子、知由、八雲の三人までがこの水泳対決に参加しているのかってことだ。


 まぁ、おそらく俺の代わりに直人あたりが突っ込んでくれると思うが……


「オイオイオイッ!! 何でお前達が参加しているんだ!? 別にお前達は颯さんの事が好きっていうわけでも無いんだろ!?」


 ほら、やはり直人が突っ込んでくれたぞ。

 ん? 知由が何か言い返そうとしているけど、何て言い返すんだろう?


「直人、あんた何を言っているのよ!? 颯君の事が好きか嫌いかで言えば好きに決まっているじゃない? この数ヶ月、一緒に行動している仲間なんだしさぁ……」


 仲間かぁ……懐かしい響きだよなぁ……


 そう言えばそうだよな。俺はこの数年、こんなにも多くの人と接する事なんて無かったのに高等部に進級してからの俺の学園生活は一変したもんなぁ……


 こんな賑やかな奴等に囲まれてさ……


「仲間だって事は分かっているよ!! 俺だって颯さんの事は大好きだからな!! でもお前達には颯さんに対して恋愛感情ってのは無いだろ? なのに何で優勝者が颯さんに日焼け止めクリームを塗ってもらう特典の対決に参加するんだよ?」


「直人君……勘違いしないでくれるかな? 私達は太鳳ちゃんと同じで伊緒奈さんを援護する為に参加しているだけよ」


「えーっ、ほんとかぁ、八雲?」


「ほ、ほんとよ。今まで男子に身体を触れられたことが無いから一度、触れられてみたいっていうことで参加したわけじゃないから……」


 八雲……今、サラッと本音を言わなかったかい?


「私は颯君の事が好きだし日焼け止めクリームも塗ってほしいから参加するのよ」


「 「 「えっ!?」 」 」


「は、華子!?」

「は、華ちゃん……?」


「へぇ、華子は颯君の事を恋愛対象で見ているってことだな?」


 は、華子……いや、服部さんマジなのか!?


「そうよ。私はコスプレ大会での衣装を颯君に褒めてもらったのがとても嬉しくて……そしたら少しずつ彼のことを意識し始めて……それで時間が経つほどに颯君の事が……す、好きになってしまって……」(ポッ)


 えーっ!? あの時の俺のセリフが原因なのか!?


「ちょっと待ってよ、華ちゃん? そういうことなら私だって同じ時期から颯君の事を好きになっていたわ。見た目、地味な颯君を私は似た者同士な感じがして嬉しかったの……」


「何だよ、八雲? 華子が本音を言ったからって慌ててお前も本音を言い出したな?」


「だ、だって……」


 いや、マジですか八雲さん? 俺も最初に八雲と会った時はなんか同類の様に思えて話しやすかったのは確かだけど……


「な、何よ二人共!? 急に乙女の顔になっちゃってさぁ……でもまぁ、私は二人の気持ちは薄々かんじていたけどね」


「そう言う知由はどうなんだよ? 本当はお前も颯さんのことが……」


 イヤイヤイヤッ、さすがに知由は無いだろう。

 そんなに知由とは会話もしていないんだし……


「わ、私だって颯君のことをついさっき好きになったわ!!」


 あんたもかよ!?


「ついさっきって何だよ? 何かあったっけ?」


「さっき颯君に私の水着を褒められた時に胸がキュンってしたのよ。それって恋じゃない? いえ、きっと恋だわ!!」


「え? ま、まぁ……そうかもしれないな……」


 な、何なんだ? 華子も知由も俺が褒めたから好きになったのか?

 これはマズイな……


 これからは気を付けて相手を褒めないと大変なことになるよな?



 ピーッ!!


「おーい、あんた達!! さっきから話しばかりしていないで、早くスタート準備をしなさいよね!?」



「 「 「 「 「あっ!?」 」 」 」 」


————————————————————————


 ピーーーッ!!


 ザボーン!!!!!



 第二試合も各選手デッドヒートだったが途中で運動神経抜群のケイトさんと島津さんのトップ争いになり最終的にケイトさんが腕の長さの差で勝利したのだった。


そして予選最後の第三試合……


第1コース…黒田かなえ

第2コース…羽柴陽菜

第3コース…伊達魔冬

第4コース…長曾我部千夏

第5コース…春日天音


「えっ、何だ、このメンバーは!?」

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