第119話 学年人気投票

 『緊急ちつてと会議・放課後の部』は大した打ち合わせも無く早めに解散したので、俺は余裕をもってバイトに行く事ができた。


「あら、今日は早いわね、颯君?」


「そ、そうかな? ってか、魔冬も今日バイトだったんだね? てっきり『学年人気投票』前日だから友達と打ち合わせなどがあって休みだと思ったよ」


「フフフ……別に打ち合わせすることなんて無いわ。ここまで来れば後は結果を待つだけだし……それよりも私は颯君の顔を見る事の方が大事だし……」


 うっ!! 魔冬、止めてくれ~っ!!


 可愛らしい表情をしながら、そんな事を言われるとめっちゃ恥ずかしくて仕事が手に付かなくなってしまうじゃないか!!


「二人共、仲良しね? もっとイチャイチャしてくれてもいいのよ?」


 春日メイド長、何て事を言うんだ!?


 まぁ、メイド長の真の目的は他にあるんだけどな……


「分かりました、春日メイド長!! 颯君ともっとイチャイチャしながらお仕事させていただきますね?」


「ま、魔冬……お願いだから普通に仕事をしてくれ? そういえば春日さん、伊緒奈も帰っているんですよね? 自分の部屋にいるんですか?」


「いいえ、伊緒奈お嬢様はまだ帰られていないわよ。なんかお友達とお会いされる約束をされているみたいで帰りは遅くなるというご連絡をいただいているけど……」


「えっ、そうなんですか……?」


 友達と会う約束?


 いつものメンバーでは無いみたいだな?



 【武田静香陣営】


「島津さん、明日は頑張ってね!?」


「武田先輩、別に明日は頑張りようがありませんが……」


「え? ま、まぁ……そうなんだけどね……でもアレよ。こういうのは気持ちが大事だから」


「そうそう、静香の言う通りよ、島津さん。投票ギリギリまで笑顔を絶やさないとか色々気を付けることはあると思うわよ」


「なるほど、さすが山本先輩ですね? 分かりました。最後まで口角を上げるように努力します。それはそうと武田先輩は今後の事は考えられているのでしょうか?」


「えっ、今後の事……?」


「はい、今後の事です。私が『学年一位か二位』に入ればしばらくは大丈夫ですが、万が一負けてしまったらという事です」


「そんな……私は今から負けた時の事を考えたくはないんだけど」


「でも静香? 島津さんの言う事も一理あるわよ。もし島津さんが『生徒会長候補』になれなかったら、あんたはそれで終わりにするの?」


「そうよ、野々花の言う通りよ。負けたらそれで終わりじゃないんでしょ? 『生徒会長候補』の誰かの応援をしないと竹中君と付き合える可能性が無くなるんでしょ?」


「そうよね。野々花や麻美子の言う通りね。負けた場合は誰を推すかなぁ……」


「静香、逆もあるのよ!! 島津さんが勝った場合は負けた人がこちら陣営を応援させて欲しいと懇願してくる可能性もあるんだから……それを受け入れるか拒むのか……」


「そうね、カンナ……じゃぁ今からそこらへんを簡単に話し合いしよっか……」




 【毛利茂香陣営】


「千夏ちゃん、投票前日でも余裕の表情だね~?」


「え? あーしですかぁ? そうっすねぇ……あーしは昔からあまり緊張したことが無いんすよぉ……まぁ、なるようになるっすよ」


「フフフ……とても心強いわ~千夏ちゃんがいなかったら萌絵ちゃんか柊ちゃんを推すしかなかったからね~」


「別にその、お二人でも全然、票は取れると思うんっすけどぉ……」


「 「無理無理無理無理無理!!」 」


「げっ!? す、凄い勢いで拒否ってきましたねぇ!?」


「ちょ、長曾我部さん、何を言っているんだ!? 私達は二年生なんだよ? 二年生にはあの織田会長や羽柴副会長、それに上杉さんが推している直江カノンという強者がいるんだよ。私達が太刀打ちできるはずが無いじゃないか!!」


「そうっすかぁ? あーしから見れば吉川さんや小早川さんも十分、可愛いと思うんっすけどねぇ……」


「私も萌絵ちゃんや柊ちゃんも十分可愛らしいとは思うけど、やっぱり『カリスマ性』は千夏ちゃんの方があると思うわよ~特にこの学園のギャル風な人達やギャル好き男子からは絶大な人気があるしね~」


「そうそう、それでいて勉強もできるんだから最強よ。そのギャップも魅力の一つだわぁ」


「イヒヒヒ……小早川先輩までそんなに、あーしを褒めないでくださいよぉぉ……でも茂香せんぱ~い、もし、あーしが負けた場合はどうするんっすかぁ? 『陰キャ野郎』の事は諦めるんすかぁ?」


「うーん、諦める気は無いけどね~でも、そうねぇ~どうしよっかな~明日の投票結果を見てから考えるわ~」


「ふーん……そうっすかぁ……」




 【上杉ケイト陣営】


「カノンちゃん、最近さ、人気急上昇中だね!?」


「え? そ、そうかしら……?」


「そうよ、カノン!! カイトの言う通りだわ。小柄なカノンが実は『怪力』だとカミングアウトしてから、凄い人気が上がってきているって二年生の知り合いの子達からよく聞くわ。ほんと、明日が楽しみだわぁ……」


「上杉先輩が楽しみでも私は不安でしかないですよぉ……蓋を開けたら『ランキング外』って事もあるんですからぁ……」


「それは少し恥ずかしいわね? 私だったら学校に来なくなるかもしれないわ」


「ちょっと沙耶!! 余計な事を言わないでちょうだい!? カノンなら大丈夫よ。二年生の戦いは織田会長、羽柴副会長、そしてカノンの『三つ巴の戦い』になるに決まっているから……」


「しかし面倒くさいよねぇ……私達、三年生は別に『学年人気投票』をする必要があるのかしら? まぁ、投票結果で進路が色々と変わるのは知っているけどさぁ……そんなの上位の人達だけで底辺の私達にはあまり関係無いしさぁ……」


「加奈ちゃんは相変わらず面倒くさがり屋だね? 逆に俺は一年だからカノンちゃんに投票できないのが悔しくてたまらないよ。明日、俺は誰に投票すればいいんだろうな?」


「あら、カイトは誰に投票するのか決めていないの? それじゃぁ、私から一つ提案が……」


「提案? どんな提案なんだ、姉貴??」




 【学年人気投票当日の朝】


 つ、遂にこの日が来てしまった……


 なんか、めちゃくちゃ緊張してきたぞ。


「皆さん、おはようございます。前に紹介させていただきました、本日、一年一組の担当をさせていただきます、『投票部』の天海です。それでは早速、投票用紙をお配りしますので、皆さんがこの学園で一番素敵だと思われる同学年の方のお名前を書いてくださいね? そして書き終わったら私の前に設置している『投票箱』に用紙を折りたたんでから入れてください」


 さぁ、いよいよ始まった!!




―――――――――――――――――――

遂に『学年人気投票』開始!!

果たして『生徒会長候補』の権利を勝ち取るのは誰だ!?


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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