第14章 緊急ちつてと会議編

第76話 中等部の頃の俺

 【昼休みの自習室内】


「せっかくのお昼休みに集まってくれてありがとね?」


「本当だぜ。伊緒奈からの招集じゃなかったら来なかったぞ!!」


「フフフ……ありがとう、直人」


 このメンバーが集まるのは俺のバイト初日以来だな。


 しかし相変わらず濃いメンバーだぜ。


「で、伊緒奈ちゃーん? 今日は何について話し合うの? 私との結婚式の日取りとかかな?」


 相変わらず、この百合っ子はバカだな。


「今日の伊緒奈さんは真剣だから、みんなちゃんと話を聞く様に!!」


「はぁああ!? 何で太鳳が偉そうに言うのよ!?」


「そうだ!! お前、生意気だな!?」


「うっ、うるさいわね!? 私は伊緒奈さんと同じクラスだし、伊緒奈さんの今の気持ちが良く分かるからそう言っただけじゃない!!」


 はぁ……それくらいの事で言い争いをするなよな……


「言い争いはそれくらいにしましょうよ……?」


「俺も……や、八雲の言う通りだと思う……」


「 「はい!! 申し訳ありません!!」 」


「な、何よ二人共!? ほんと、あんた達は颯君には弱いわねぇ?」


 うん、俺もそう思うぞ。


 こんな俺になんて恐れる必要は無いのに……



「それでは本題に入るわね? みんなもご存じの様に颯君は学園の人気美少女達に現在モテモテ中よね?」


 えっ!? お、俺の話が議題なのか!?


 で、それを太鳳だけじゃなく、他のみんなも知っていると!?


「そうね。私にはその現状が理解できないけどね!!」


「知由!! それは颯さんに失礼よ!!」


「そ、そうだぞ、知由!! 颯さんは凄い方なんだぞ!!」


 直人、それは言い過ぎだろ!?


「フンッ、思っている事を口にして何が悪いのよ? っていうか太鳳と直人って颯君に関しては同じ意見なんだし、気が合いそうだからいっそのこと付き合いなさいよ」


「 「バ、バ、バカな事を言うな!!」 」


「な、何で太鳳みたいな『怪力女子』なんかと付き合わなきゃいけないんだ!?」


「そ、それは私のセリフよ!! 何で私がこんな『もやし男』と付き合わなきゃいけないのよ!?」


「 「フンッ!!」 」


 いや、結構気が合うんじゃないのか?


「伊緒奈ちゃん? 二人は放っておいて早くお話を勧めていただけませんか?」


「フフフ……ありがとう、八雲ちゃん。そうね、話を進めさせていただくわね? で、颯君が学園の人気者達にモテモテなのは別に何の問題は無いの」


 イヤッ、問題アリアリだろ!?


「ただ、颯君は見ての通り……本人も認めているから言わせてもらうけど、『陰キャオタク』で『自分に自信を持っていない人』で『超コミ障』しょ?」


 『陰キャオタク』や『自信が無い』のはともかく俺がいつ『超コミ障』って言ったんだよ!?


 まぁ、その通りだけどさ……


「私以外は『中等部』の頃の颯君を知らないと思うけど、その頃の颯君に比べたら今はだいぶ変わってきていると思うの。あの人達のお陰で色々と話をしなくちゃいけない状況になってしまったし、それに私達のグループにもこうやって参加してくれているし……」


「とても良い傾向ではありますよね?」


「そうなのよ。フフ、太鳳ちゃんよく分かってくれているわね?」


 なんなんだ、この二人の会話は?


「と、ところでさ……い、伊緒奈は中等部の頃の俺を知っていたのかい?」


「うん、知っていたわよ」


「で、でも一度も同じクラスになった事は……」


「そうね。同じクラスになった事は一度も無かったよね? でも何度か颯君と会話をしたことはあるのよ」


「えっ? そ、そうなのかい?」


 マ、マジか!? 俺は伊緒奈の事を全然、覚えていないんだが……


「フフフ……私ね、颯君に何度か助けてもらっているの。それで、その時にお礼を言っていたんだけどねぇ……ただ、その頃の颯君は私の顔を全然見てくれなくて……だから私の事は覚えていないんだと思うよ」


 俺が伊緒奈を何度か助けた?


 陰キャの俺がそんな何度も人助けなんてしたっけ……?


「さすが颯さんだ!! さすが俺が唯一認めた男です!!」


「フーン、そんな事があったのね? 少しだけ見直してあげるわ」


「そ、それで颯さんは伊緒奈さんにどんな事を助けられたのですか?」


 そうだ。俺もそれが知りたいぞ。


 俺はどういった状況の伊緒奈を助けたんだ?


「えっとねぇ……颯君が私を助けてくれた状況は……私が階段から落ちそうになったところを助けてくれたりとかぁ……私が先生から頼まれたプリントを廊下に落としてしまったのを一緒に拾ってくれたりとかぁ……急にお腹が痛くなってうずくまっているところに声をかけてくれて先生を呼んでくれたりとかぁ……」


 えーっ!?


 今、言われて当時の事を思い出したけど、あの時の女子って全部、伊緒奈だったのか!?


「そ、そうだったんだ……あの時の……」


「フフ、やっと思い出してくれたみたいね? だから私は颯君の内面がとても素敵な事を前から知っていたし、高等部になったらあの時のお礼がしたいと思っていたのよ。それに中等部の頃にもう一人私と同じ考えの人がいてね、その人と一緒に颯君の手助けをしようって約束したんだぁ……」


 えっ?


 もう一人、伊緒奈と同じ考えの人がいただって!?





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


次回もどうぞお楽しみに(^_-)-☆

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