第74話 絶世の美少女

 【女子トイレ内】


「お疲れ様……徳川さん……」


「うん、本当に疲れたわ。でもあなたの計画通りには進んでいるわ」


「そうみたいだね? 本当に有難う……」


「だから前にも言ったけど、お礼なんていいから。私はあなたの考えに共感しているし、好きで協力しているだけだから……」


「でもこれだけは言わせて? 私の事は気にしなくても良いから徳川さんの本当の気持ちは殺さないでね?」


「本当の気持ち? あ、あなたの言っている意味が分からないけど……でも私は何も我慢していないし……毎日、楽しく過ごしているから……それに……」


「それに?」


「いえ、何でも無いわ。そ、そろそろ教室に戻るわね? 太鳳ちゃん達に変に思われても嫌だから」


「うん、分かったわ。こ、これからもよろしくね?」


「フフフ、勿論よ! それじゃまたね?」


 ギーッ ガチャッ……



「あれ? 今、徳川さんが出て行ったけど……もしかしてあなた達ってお友達同士なのかなぁ?」


「えっ? いいえ、たまたま一緒になっただけですよ。それよりもよく私がここにいる事が分かりましたね、黒田先生?」


「そりゃぁ、あなたとは『長い付き合い』ですものぉぉ……』




 【図書室】


 はぁ……やっとライン交換が終わったなぁ……


 めちゃくちゃ疲れたぞ。それに昼休みもあと十五分程しか残っていないじゃないか。


 今日は勉強は無理だなぁ……


 こうなったら十五分だけでも昼寝でもしよっかな……



「竹中君、お疲れの様ね?」


「え? あ、天海さん!?」


「どうかしたのかな?」


「う、うん……色々あってさ……っていうか、天海さんも今、図書室に来たところなのかい?」


「いいえ、私はお昼を食べて直ぐに来たんだけど、忘れ物を思い出して教室に取りに行っていたの」


「そ、そうなんだぁ……」


 やっぱ、天海さんといる時は心が落ち着くんだよなぁ……


 何でだろうか? で、でもこの落ち着く感覚はこ、恋心ではないからな!!


 多分だけど……


 ひ、一つだけ天海さんに質問してみようかな……


「あ、あのさ天海さん?」


「ん? なーに?」


「い、いやさ……天海さんってメガネを外す時ってあるのかい?」


「フフフ、そりゃぁあるわよ。お風呂に入る時や寝ている時は必ず外すわ」


「ほ、他では……?」


「うーん、そうねぇ……他ではあまり無いかなぁ……メガネを外しちゃうと何も見えなくなってしまうしね」


 そ、そうだよな。俺も同じだしな……


 それにしても何で片倉さんは俺にメガネを外せなんて言ったんだろうか?


 ってか前に春日さんにも外せと言われたよな?


「あっ、もしかして竹中君はメガネを外した時の私の顔を見てみたいのかな?」


「えっ!? ま、まぁ……見れるものなら一度くらいは見てみたいなぁっていうか……あ、でも嫌なら別にいいんだよ!!」


「フフフ……竹中君になら別に見せてもいいわよ」


「えっ、ほ、ほんとに!?」


「ええ、いいわよ。でもこれだけは約束してくれない? メガネを外した私の顔の感想を絶対に誰にも言わないって……」


「あ、ああ勿論だよ。絶対に誰にも言わないよ」


「ありがとね。それじゃぁ早速メガネ外すね?」


 天海さんはそう言うとゆっくりとメガネを外してくれた。


 そして俺は仙石学園中等部から通じて一番の衝撃を受ける。


「なっ……」


 なんて美しいんだ!!


 こ、こんな美人、今まで見た事が無いぞ!!


 天海さんの素顔は俺が予想していた以上の銀髪にピッタリの顔立ちだった。


 くっきりとした二重瞼、大きな瞳でまつ毛も長く、瞳の色は少し茶色である。


 俺は見とれてしまった。絶世の美少女だ……


「竹中君? あ、あまり、じっと見つめられると恥ずかしいんだけど……」


「えっ? いっ、いや……その……天海さん、そんなに美人なんだからコンタクトにすればいいのにと思ってしまって……」


 思わず感じたことを言ってしまったぞ……


「フフフ……有難う……嘘でも嬉しいわ」


「うっ、嘘じゃ無いよ!! マジで天海さんは美人だよ。おそらく学園一美人だよ!! な、何で『投票部』に入ったんだい? 天海さんならどの人気投票でも一位になれるのに……」


 織田会長も超絶美少女だけど、天海さんはその上を行くくらいの美少女だぞ!!


「前にも言ったけど、私は投票する側もされる側も嫌だから……それに私は竹中君が言ってくれている様な美人じゃないよ。性格もそんなに明るく無いしね……逆に私は竹中君こそメガネを止めてコンタクトにして欲しいなぁ。せっかくイケメンなんだし……」


「えっ!?」


 イヤイヤイヤッ!!


 俺はついさっき複数の女子からメガネを外した顔を『普通』やら『中の下』やら『中の中』やら言われたばかりだぞ!!


 だから天海さんこそ俺に気を遣っていないか?


「そ、そんな事は無いよ……俺は普通だから……」


「フフフ……そっかなぁ? 私はイケメンだと思うけどなぁ……それに竹中君は内面も素敵だと思うし……」


「えーっ!? お、俺の内面なんて顔以上に最悪だよ」



 キーンコーンカーンコーン


「あっ? 予鈴、鳴っちゃったね? 教室に戻らないと……」


「そうだね。それじゃまた……」


「うん、またね」


 こうして俺達は図書室から出て各々の教室へ戻るのだった。



 ん? 待てよ……


 天海さんって俺のメガネを外した顔を見た事があったっけ……?





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


また次回もお楽しみに(^_-)-☆

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