第71話 伊緒奈の嫉妬?

 武田一派、上杉一派とも無事にライン交換を終えた俺は少しだけ安堵していたが、そうは問屋が卸さなかった。


 羽柴副会長同様に教室から出て行った武田さんと上杉さんからも直ぐにグループラインの誘いが来たのだ。


 武田さんのグループ名は『風林火山』……


 上杉さんのグループ名は『毘沙門天びしゃもんてん』……


 カッコ良過ぎやしないか!?


 いずれにしても徳川や羽柴副会長のグループに参加している俺としては二人の誘いを断ることは出来ないので素直に参加したのだった。



 そ……そして……


「驚いたわぁ……まさか、伊達さんがこの列にいるなんてねぇ……」


「フフフ……そう、徳川さん? 私は必然的だと思うのだけど」


「もしかして、伊達さんがここにいるって事は……」


「そうよ。私も颯君の事が好きで少し前に屋上で告白したの」


「 「 「えーっ!? そ、そうなの!?」 」 」


 何故、ここで本多、酒井、榊原の三人が驚くんだ?


「ふーん……やっぱり情報通りね……でも伊達さんと颯君って何か接点があったっけ?」


 情報通りだと?


 も、もしかしてあの時、屋上に『情報屋』の服部華子がいたって事か!?


 そういえばバイト初日に服部華子だけは帰宅せずに徳川に報告があるとか何とか言って部屋に行っていたもんな……


「うん、接点は凄くあるわよ。だって颯君とは中等部一年の時に同じクラスだったし、その頃はよく一緒に色んな行事をこなしていたから……ね、颯君?」


「えっ? ああ、そうだねぇ……ハハハ……」


 ギロッ


 うわっ!? な、なんか今、徳川に睨まれた様な気がしたぞ……


 ギロッ


 えっ? 本多にも睨まれた様な……


「颯君もそうならそうと私には言って欲しかったなぁ……私の『自宅』でアルバイトをしているんだし……私と颯君との間で隠し事があるのはとっても寂しいなぁ……」


「ご、ごめん……い、伊緒奈……」


「ウフッ、早速、私の事を呼び捨てで呼んでくれたから許してあげるわ」


「ホッ……あ、ありがとう……」


 ぜっ、絶対に羽柴さんにまで告白されているなんて事は言えないぞ!!


 って、もしかしてこの件も服部華子を通じて知っていてワザと知らないフリをしているって事は無いだろうな?


 しょ、正直に言うべきか……?


 でも今それを言うタイミングでも無いしなぁ……



「はっ、颯さん!? わ、私の事も呼び捨てで呼んでくれないと、ゆ、許しませんからね!?」


 な、何で本多にまで許しを乞わなければいけないんだ!?


 でも、面倒な事になるのは嫌だしなぁ……


「た、太鳳も……黙っていてごめんな……」


「キャーッ!! ヤッター!! 颯さんが私の事も太鳳って言ってくれたわ~!! はーい!! 私も颯さんを許しちゃいまーす!!」


 何なんだ、こいつは!?



「と、徳川さん? 今、なんか聞き捨てならない事を聞いた気がしたんだけど……」


 あっ、もしかして……徳川の自宅でのアルバ……


「え? 何の事かな? それより伊達さんも早く颯君とライン交換をした方がいいんじゃない? 後ろの……たしか二年生の片倉さんでしたっけ? 伊達さんよりも眠たそうな顔をされているわよ」


「そうよ、魔冬……徳川さんの言う通りよ。私も食後だから眠くて眠くて……本当なら今頃私は『理科準備室』でお昼寝をしているところなんだから……ふぁぁああ、眠いよぉぉ」


 そ、そういえば、この片倉さん? っていう人を含めて伊達さんの後ろに並んでいる人達って俺は全然知らないぞ。


「あっ、ごめんなさいね、小町ちゃん。でもちょっと待ってくれないかな? 私は徳川さんに聞き直したい事があるから……」


「ふわぁぁああ、別に構わないわよぉぉ……その代わり私は机を並べてその上で話が終わるまで寝ているから終わったら起こしてねぇ?」


「うん、分かったわ」


 いや、机の上で寝ちゃダメだろう!?


「ちょっと魔冬!? 徳川さんとの話はライン交換が終わってからにしてよ!? もう私は我慢の限界よ!! あんな『地味な子』となんかとライン交換する為にこんなにも長い時間、待たされるなんて!!」


 うわっ!! 


 こ、この子、めちゃくちゃ気が強そうだけど、顔は伊達さんに似ているような気がするんだが……


「し、忍ちゃん? 竹中さんの事をそんな風に言っちゃいけないと思いますよ……」


 この気の強そうな女子に注意しているおかっぱ頭のメガネ女子は普通の感じだな……


 いや、普通というよりも、どちらかと言えば俺よりの感じがするぞ。


「わ、分かったわよ、つぼみ!! ご、ごめん竹中君……ちょっと待ち過ぎてイライラしちゃって……」


「い、いや別に構わないよ。全然気にしていないから」


「ウフッ、やっぱり颯君は優しいね? 私なら忍をぶん殴っているところだわ」


 だ、伊達さん怖ぇぇ……


「そ、それよりも片倉さんだっけ? やっぱり机の上で寝るのは良くないから伊達さん?さ、先にライン交換しないかい?」


「そ、そうね。颯君がそう言うなら徳川さんとは放課後にお話をさせてもらうわ。それで良いかしら、徳川さん?」


「ええ、別にいいけど……」


「それと颯君? これからは私の事も『魔冬』って呼んでちょうだいね?」


 だ、伊達さん、あんたもかよっ!?





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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