第59話 友情よりも愛情
「竹中君? わ、私と付き合ってもらえないかな?」
「いっ、いや……そのぉぉ……」
まさかの告白で気が動転しそうだけど、ここでちゃんと断らないと後々、面倒な事になってしまうよな……
「私じゃダメ……かな?」
だ、だから俺の身体に胸を当てながら上目遣いは止めてもらえませんかね?
「は、羽柴副会長には俊哉がいるじゃないですか!?」
「えっ、俊哉? ああ、あの子は幼馴染で弟みたいな子だから気にしなくていいわよ」
俊哉が聞いたら号泣する様な事をあっさり言わないで欲しいぜ……
「いや、俺としてはそうはいかないですよ……俊哉は羽柴副会長の事が大好きでこの学園に外部入学して来たんですから!! お、俺は俊哉とは『親友』なんであいつの気持ちを考えると……」
まさか、こんな時に俊哉を『親友』って呼ぶ事になるとは……
とても複雑な気持ちだな。
「そ、そうなんだぁ……あの俊哉が私の事をねぇ……」
おっ? 羽柴副会長の顔が少し赤くなった様な……
こ、これはもしかして今まで弟の様に思っていた俊哉の気持ちを知って、急に異性として意識してしまった的な感じになり俺の事を諦めてくれるパターンかもそれないぞ!!
「そうなんですよ!! だから俺は羽柴副会長とは……」
「分かったわ……」
「わ、分かって頂けましたか?」
「うん……俊哉も親友のあなたと私が結ばれるとなれば心から祝福してくれるかもしれないわね」
全然、分かってねぇな、この人!?
何でこうなる!?
「は、羽柴副会長、俺の話を聞いてもらえませんか? それと出来れば俺から離れていただけませんか?」
「私の事は『陽菜』って呼んでちょうだい」
「イヤイヤイヤッ、それは無理ですよ!!」
「呼んでくれなければ離れないわ」
えーっ!? こ、この人……織田会長よりも手強いかかもしれないぞ!!
しかし、早く離れてもらいたいしなぁ……
「ひ、陽菜さん……お願いですから……離れてもらえませんか……?」
「はーい、颯く~ん」
うわっ、そう来たか……
でもなんとか離れてくれたから良かった……という事にしておこう。
「それでですね、ひ、陽菜さん……お、俺は誰とも付き合う気は今のところ無いんです」
「うん、それは分かっているわよ」
「えっ? 分かっているなら何故……」
「颯君が『陰キャ』ぶっているのには何か理由があるんだろうなぁとは思っているわ。でもそういう人の事を好きになってはいけないっていう法律は無いじゃない?」
「ま、まぁ……そうなんですけど……」
まさか、法律なんていうワードが出てくるとは……
「それに私がこんなに男性を好きになるのは初めての事だし、そう簡単にはこの気持ちを抑える事なんてできないわ」
「でも俺は陽菜さんの事を何も知らないですし……それに織田会長は大丈夫なんですか? もし陽菜さんが俺に告白した事が知られてしまったら……」
「フフフ……大丈夫では無いわねぇ……でも別にいいのよ。乃恵瑠だって去年、私があれだけ協力して生徒会長の座を掴んだのに……今年も引き続き立候補をすると思っていたのに颯君の事が好きになった途端、私に立候補しろだなんて勝手な事を言ってきたんだから……私だって自分の好きな様にやらせてもらうわ……」
「でも、それじゃぁ二人の友情関係が……」
「今の私は『友情』よりも『愛情』よ!! それに乃恵瑠は外部入学だから友達になってまだ一年ちょっとよ。そんな短い期間で友情ってのもねぇ……」
知り合って二ヶ月も経っていないのに俺の事を『親友』と言ってくる前田って……
ってか、どうすれば羽柴副会長は俺の事を諦めてくれるのだろうか?
うーん……ここはガツンと……
「ひ、陽菜さん?」
「なーに、颯君?」
「きょ、今日は『保留』って訳にはいきませんか? 俺としては先に告白をしてきた三人にもちゃんと話をしなければいけないと思っていますので……」
だ、ダメだ……俺みたいな奴の事を好きだと言ってくれている人にガツンとなんて言えないぞ……
はぁ……情けない男だよなぁ……
「颯君の気持ちは分かるわ。私、四番手だもんね。でも他の三人の性格はきついから十分に気を付けてね? その点、私の性格は穏やかだから一番付き合いやすいと思うんだけどなぁ……」
なんか自分をアピって来たぞ……
「は、はい……気を付けて話をします。ということで今日は失礼させて頂いてよろしいですか? ってか今日のところは教室に帰らせてください!!」
「うーん……分かったわぁ。後の三人とお話が終わったら、また私とゆっくりお話をしてね? そうねぇ……今度は遊園地の観覧車の中でお話したいわぁ」
それって『デート』じゃないか!?
「し、失礼しました……」
ガチャッ……
「はぁ……何とか解放されたぞ……しかし疲れたよなぁ……」
「あら? 竹中君、ため息なんかついてどうしたの? 生徒会室に呼ばれていたのよね? 何かあったのかな? そう言えば前にも呼ばれていた事があったよね?」
えっ? 良く知っているな!?
ってか……
「だ、伊達さんこそ何でこんな所に?」
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
グイグイ迫って来る陽菜。
それから逃れようとする颯だが、何を言っても陽菜には通じない。
とりあえず今回は『保留』という形でどうにか陽菜から逃げる事はできたが……
そして生徒会室を出るとある少女に声をかけられる。
その少女は学年一位の伊達魔冬であった。
ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆
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