第147話 顔に出やすいタイプ
センリの話を、というか、あの『ウバウンデス』とかいう組織の映像を見てからブルーの様子がおかしい。
目つきが変わったというか、雰囲気がピリピリしてるというか。
正直意心地が悪くてしょうがねぇ。
「ねぇ」
「なにかしら?」
「なにかしら、じゃなくてさ。逆に何かあったの? なんかさっきから変だけど」
「…………」
「まぁだいたいの原因はわかるけどさ。その感じだと完全に個人的な感情入ってるよね」
「……そうね。それは否定しないわ」
ブルーは軽く嘆息してから口を開いた。
さすがに自分の態度がおかしなものであることはわかっていたらしい。
「でも、私とあの組織の因縁については別に話すようなことじゃないわ」
その言葉には明らかな拒絶の色があった。
踏み込ませない、踏み込むことを躊躇わさせる雰囲気。
まぁいいか。別にオレには関係ねぇ話だ。
「ならいいけど。そんな周囲を刺すような態度でいられるとこっちがやりづらいんだけど」
「そうね。ごめんなさい。少ししたら気分も落ち着くと思うから」
「ならいいけど」
なんだ? 妙に素直っつーか。あぁくそ、やりづらくてしょうがねぇ。
まぁいいか。それよりも今はドワーフメイスのところにいかねぇとな。しばらく魔道具の整備もしてもらってねぇし。というか前にオウガとやりあった時に若干壊れてるしな。
あんな話を聞いた以上は直してもらわねぇと。
それからしばらく移動してる間に、オレ達はドワーフメイスの工房へと着いた。
煙突から煙が出てるのを見るあたり、いないってことはなさそうだな。
「ここがドワーフメイスの工房なの?」
「うん。この感じならたぶんいると思うんだけど。気をつけてね」
「え?」
ブルーの返事を待たず、オレは家の扉を開けた。
途端、凄まじい熱気が外へと流れ出してくる。もちろん前回の経験からそれがわかってたオレはドアの後ろに立って躱している。
だがそれを知らなかったブルーは内側から溢れてきた熱気を直でくら――って、なに?!
「『水壁』」
溢れ出した熱気をブルーは涼しい顔をして受け流した。
「んなぁっ?! なんでバレたの!」
「あのねぇ。さっきからあからさまに何か狙ってる顔してたでしょ。そんな顔してたら身構えるに決まってるでしょ」
「うそ、そんな顔してた?」
「えぇ。それはもう。あなた、自分が相当わかりやすい、顔に出る性格だってことを自覚した方が良いわよ」
「うぐぐ……」
「ふふ、残念だったわね」
クソ。バレてやがったとは。あの一瞬で汗が噴き出すような地獄の熱さをこいつにも喰らわせたかったってのに。
「でも、確かにこれは相当暑いわね。ドワーフメイスはいつもこんな環境で作業してるの?」
「たぶん。この感じだとかなり熱中してるんじゃないかな」
しばらく開けたままにして、熱気がある程度外に逃げたのを確認してから中へ入る。
それでも相当暑いけどな。正直ブルーが羨ましい。熱を躱す方法、オレも考えねぇとな。
工房の中へ入ると、奥の作業場からカンカンと鉄を叩くような音が聞こえてくる。
「おーい、メイスー!!」
大声で呼びかける。が、案の定反応は無い。
前と一緒で作業に集中しきってるんだろう。
オレはズカズカと作業場の方へと入り込む。そこではメイスが一心に前だけを見つめて鎚を振り降ろしていた。
「メイスッ!」
「へ? うひゃぁっ!? っていたぁっ!!」
近くまで行ってようやく気づいたメイスは、オレのことを見て驚いたのか手に持っていた鎚を落としてしまい、それが足の上に落ちて悲鳴を上げる。
「だ、大丈夫?」
「だい、じょうぶ……」
「いや、明らかに大丈夫な顔じゃないんだけど」
「どうしたの? すごい悲鳴が聞こえて来たんだけど」
「あー、まぁ、ちょっとした事故かな?」
「何してるのよ。大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫。ちょっと向こうの部屋で待っててくれるかな? あたしもすぐにそっちに行くから」
それから約五分後、作業に区切りをつけたドワーフメイスが大量の茶菓子と紅茶を手に戻ってきた。
「ごめんね。作業に集中すると全然気づかなくてさ。レッドちゃんと会うのは久しぶりだよね。大怪我したって聞いてたんだけど。もう大丈夫なの?」
「うん、この通りね。まぁ完全に元の調子かっていうと微妙なところだけど」
「そっか。なら良かった。えーと、それで君がブルーちゃんだよね! レッドちゃんと一緒にチーム組んでる」
「ブルーちゃん……それ、私のことですか?」
「うん、そうだけど。ダメだった?」
「いえ、ダメというか……そうですね。それで大丈夫です」
「じゃあブルーちゃんで決まりね。今日は二人なんだ? もう一人いるって聞いてたんだけど。イエローちゃんだっけ?」
「今日は退院してそのままの足で来たんだよ。だからイエローはいないの」
「そうなんだ。せっかくだから一緒に挨拶したかったんだけど。でも良かったよ。二人のことはあたしも聞いてたからさ。心配してたんだよ? お見舞いにも行こうとしたんだけど止められちゃったし」
「あー、そうだったんだ」
止められたのは間違いなくオレのせいだろうな。オレが男だってことが周囲にバレないようにするための処置だろう。
「ごめん、ちょっと事情があってさ。でもこの通りだから。で、今日は退院の挨拶に来たっていうのの他にもう一つメイスに用事があったんだよね」
そう言ってオレは壊れた状態の魔道具を取り出した。
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