第146話 ヴィラン組織からの宣戦布告

 センリに連れられてやってきたのはグリモワール内にある一室へと連れてこられていた。


「それで、何があったの? この慌ただしさはさすがに普通じゃないと思うんだけど」

「お二人が知らないのも無理はありません。入院している間のことでしたから。お二人の治療に影響が無いよう、情報は伝わらないようにしてありましたし」

「そうだったんですか? 道理で調べ物をしても上手く情報が見つからないと……」

「プレアナースさんの意向です。余計なことを知れば勝手に動きかねないからと」

「そこまで信用無かったんだ……」

「お二人は色々と無茶をされていますから。もしかしてお二人はプレアナースさんに会いに来られたのですか?」

「まぁ一応。退院したんでその挨拶に。後一応教官にも」

「でしたら少し間が悪かったかもしれません。ソードメイデンさんもプレアナースさんも今は出かけておられるので」

「あ、そうなんだ。じゃあ出直すしかないか」


 教官達はともかく、ドワーフメイスは居るだろうから、今日はそっちだけ行くか。


「教官が出なければいけないほどの用事、ということですか?」

「えぇ。端的に言ってしまえば。本題に入りましょう。こちらを見てください」


 センリが取り出したのはノートパソコンだった。そしてその画面に流れる映像をオレ達に見せてきた。

 そこに映っていたのは、初めて見るトカゲ型の怪人だった。前にあったフレザードに少し似てる気がする。

 纏ってる雰囲気はフレザードとは比べものにならないほど凶悪だが。



『ごきげんよう、愚かなる人間諸君。私はヴィラン組織『ウバウンデス』の幹部、レプトデスだ』


 こちらを見下すような声音で怪人――レプトデスは話し始めた。

 

「っ!」


 隣にいたブルーの顔が一瞬強張る。

 だが、そのことに突っ込むよりも早くレプトデスの話は進んでいった。


『これは我らからの挨拶だ。ようやく準備が整ったのでな。そう、貴様ら人間社会への侵攻の準備が。それに先立ち、こうして貴様ら魔法少女共へメッセージを送ることにしたというわけだ』


 準備が整った? どういうことだ?

 『ウバウンデス』とかいう組織の名前は前にも聞いたことがあった気がするが……レプトデスのこの態度、わざわざメッセージを送ってきたことといい、よっぽど自信があるのか?


『ここに我らは宣言しよう。他のどのヴィラン組織よりも先に我らが地球を支配してみせると。魔法少女共よ、貴様らの安寧の時代は終わった。これから先は我ら怪人の時代だ』


 その言葉を最後に映像は終わった。

 つまりなんだ。この映像は……ヴィランからの宣戦布告ってことか?


「これが先日送られてきた映像です」

「えっと……よくわからないんだけど、こういうのって珍しいの? なんかヴィラン組織っていっぱいあるみたいだし」

「えぇ、確かにこういったことは多くあります。ですが今回は組織が組織でしたから」

「有名なの? この組織。私も名前くらい聞いたことはあるけど」

「ここ数年で急激に勢力を拡大している組織です。危険度もそれに比例して上昇していて……つい先日、危険度の見直しがなされ、A級危険組織に認定されたばかりなんです。だからこそ今回の映像は無視できないものがあります。それに何より、この言葉通り彼らは動き出していますから」

「え、もう?」

「はい。『ウバウンデス』の構成員を名乗る怪人がすでに複数回襲撃を仕掛けてきています。今はまだなんとか対処できていますが、これ以上増えれば手に余る可能性があります」

「なるほど。それでこんなにバタバタしてると」

「そういうことです。今急いで『ウバウンデス』に関する資料をかき集めています。ソードメイデンさんは今は現場対応に当たっているところです。いつ戻ってくるかはまだわからないですね」

「教官が現場対応って……」


 つまり直接怪人と戦いに行ってるってわけか。そりゃよっぽどだな。

 だがこれで『グリモワール』がせわしなく動いてる理由がわかった。確かにこんな映像が直接送られてきたならそうなるのも仕方ない。


「対応すべきは『ウバウンデス』だけではなく、他の組織の怪人も、野良怪人も無視はできません。つまり、いくら人がいても足りない状況になっているというわけです。今は諸外国への応援要請も検討しているくらいです」

「なるほど」

「ともかく、魔法少女統括協会は現在『ウバウンデス』の対応に力を割いている状況です。ラブリィレッドさんも、ブレイブブルーさんも十分に留意しておいてください。そして、何かあれば情報の提供をお願いします」

「うん、わかった。そんな状況だとさすがに無視できないだろうしね」

「助かります。っと、すみません。私これからまだ片付けないといけない案件がありますので。これで失礼します」


 そう言うとセンリは足早に部屋を出て行った。

 さっきもどっかに向かってる途中だったみたいだしな。


「さて、それじゃあ私達も行こうか。教官達はいないみたいだけど、ドワーフメイスはいるかもしれないし」

「……えぇ、そうね」

「? どうかした?」

「なんでもないわ。行きましょう」


 今一瞬ブルーのやつ……さすがに気のせい、じゃないよな。


「……まぁいいか。今はそんなこと追求してる場合でもないし」


 そしてオレは先に部屋を出て行ったブルーの後を追ってドワーフメイスの元へ向かうのだった。


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