第84話 魔道具の使い方
ドワーフメイスにもろもろの初期設定を済ませてもらった後、オレは店の外へと出てきた。
「それじゃあさっそく始めよっか。さっき言った通りにしてくれたらいいから」
「えーと、魔道具の名前を読んだらいいんですよね?」
「そうそう! さ、それじゃあ元気よく行ってみよーっ!!」
「…………」
「? どうしたの?」
「な、なんでもないです。それじゃあ……ビュ……『ビュンビュンちゃん』……」
若干の気恥ずかしさすら覚えながら魔道具の名前を呟く。
登録名が『ビュンビュンちゃん』だからその名前で呼ぶしかない。せめて自分で魔道具の名前を決めれたら……いや、ここは我慢だ。我慢するしかねぇ。
オレがその名前を呟くと、腕輪がブォンと小さな音を立てて駆動し始める。
そして、オレの足にさっき見た魔道具が自動で装着された。しかも完全に足にフィットしてる。すげぇな。サイズも自動で調整されるのか。
「うん、上手くいったね。どんな感じかな?」
「……うん、大丈夫。特に問題なさそうです」
軽く足を動かして感触を確かめる。多少重いけど、まぁそこまで問題にはならねぇだろう。
魔法少女として強化された状態なら特に問題なく動ける。
「……装着の方も特に不備は無さそうかな。それじゃあ機能を試してみようか」
「はい」
「じゃあ『ビュンビュンちゃん』に魔力を込めてみてくれる? 足の方に意識を集中したら勝手にできると思うから」
言われた通りに魔道具に魔力を送りこむ。すると、魔道具に嵌められていた三つの赤、黄、緑の宝石みたいなのが光り始めた。
「これが魔力の充填状況だよ。赤から順番に光っていって、緑が光ったら魔力充填MAX状態。これ結構魔力吸わせる必要があったんだけど、思ったより早かったね」
「まぁ、魔力の量は多い……らしいんで」
なんかフュンフにそんな感じのことを言われたことがあった気がする。って言っても、他人と比べたことがあるわけじゃねぇから実際どんなもんなのかはわからねぇけどな。
「ふーん。それもちょっとまた機会があったら確かめてみたいかも。とにかく、赤になったら魔力が切れかけってことだから同じように補充してあげてね。結構長時間持つとは思うんだけど、こればっかりは試してみないとわからないから」
なるほど。自動で吸われるとかそういうわけじゃねぇのか。気付いたら魔力が無くなってる、なんてこともありそうだな。
「それじゃあちょっと飛んでみてくれる」
「はい」
いつも飛ぶ時の感じで浮かび上がる。
「っ、と、と……お、お?」
なんだこの感覚。姿勢が無理やる直されるっていうか、さっきまでみたいに飛んだ直後の不安定感がなくなってるっていうか。
これが魔道具の効果なのか?
「どんな感じかな」
「なんか空中でのバランスがめちゃくちゃ取りやすなくってるって感じです」
「うんうん。その辺りは設計通りかな。地に足が着いてるのとはやっぱり違うからね。その補助をしてくれてる感じだよ」
「なるほど。確かにバランスがとりやすくなってる分、かなり飛びやすくなったというか」
「はぁ、よかった。実は飛行の補助以外にもいくつか機能があるんだ。えっと——」
ドワーフメイスから魔道具の残された機能についての説明を受ける。
だが、正直どれも今すぐに試せるものじゃなかった。できなくはないんだろうけどな。とりあえず今は飛行の機能にだけ集中してくれたらいいらしい。
まぁいきなり全部試せって言われるよりは楽だ。この後も使っていいらしいし、一つずつ確認していけばいいだろ。
「うん、特に挙動に問題は無さそう。気になることとかある?」
「うーん、今の所は特に。ゴツゴツしてたんで気になるかと思ってたんですけど、そこまで気になる感じじゃないです。重さも平気です」
「なら大丈夫かな。とりあえずこれで魔道具の使用に関する一通りの説明は完了だよ。付き合ってくれてありがとね」
「いや、まぁ、こっちも色々としてもらいましたから」
思った以上に時間を喰ったのは確かだが、それに見合うだけの収穫はあった……はずだ。
「それじゃあ私、もう行きますね。とりあえず使用感と使用状況のデータだけまた送ればいいんですよね?」
「うん! お願いね。わたしもまた試して欲しい魔道具があったら連絡するから。逆にそっちも、欲しい魔道具があったら教えてね」
「そんなのがあるかわからないですけど。ま、わかりました」
「じゃあまたね、バイバーイ!」
笑顔のドワーフメイスに見送られながらその場を離れる。
ほんとにこれで良かったのか? なんかまた面倒事をしょい込んだような気がしないでもないが……もうなるようになれだ。
そんな諦めに近い感情を抱きながら、オレは今度こそ黒の塔へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます