第57話 いつもの朝

 翌朝。学校のある日特有の倦怠感に包まれながら目を覚ました。


「う……ちっ、もう朝か……」


 カーテンの隙間から差し込む朝日に無理やりたたき起こされる。ベッドの置いてある位置的にこの時間はどうやっても朝日が差し込んでくるんだよな。しっかり閉めときゃ問題ないんだろうけどな……秋穂の奴だな。オレが朝起きるように昨日のうちにわざと少し開けときやがったな。

 最近秋穂はこういう小細工でオレを起こそうとしてくる。まぁそもそも自分で起きろって話なんだが……この間は目覚ましの位置を変えてやがったしな。


「はぁ……仕方ねぇか」


 ゆっくり体を起こして体を伸ばす。まだ眠いが二度寝してまた起きれる自信もないしな。


「顔でも洗ってくるか」


 まだ眠いと訴える体を無理やり起こして洗面所へと向かう。

 やっぱ昨日の疲れが相当残ってるなこいつは。クラカッティだけならまだしも、ブレイブブルーとも戦ったわけだしなぁ。

 くそ、完全にあいつのせいだ。学校であったら絶対に文句言ってやる。


「ふぁああ、なーに、もう朝なの?」

「ちっ、そのまま寝てりゃよかったのに」

「ふふん、残念ね。私これでも朝に強いから」

「学校ではずっと鞄の中で寝てるくせに何言ってんだ」

「それはそれよ。だって暇なんだもの。鞄の中にいることしかできないなんて、そんなつまらない話はないでしょう」

「……まぁそれもそうか」


 それもこれもこいつが勝手に鞄の中に入ってついて来るからなんだが……確かに鞄の中に入ってるだけってもの暇だろうな。同情するつもりはねぇが。


「そろそろちょっとくらい自由を与えてくれてもいいと思わない?」

「誰が自由をやるか。お前がちょろちょろしてたら何があるかわからねぇって言ってるだろうが」

「見える人なんてほとんどいないのに」

「アホか。絶対じゃねぇならダメだ。それが嫌ならついてくんな」

「あーはいはい。わかったわよけち臭いわね」


 ぶつくさ文句を言いながらフュンフはフラフラ飛んでベッドにもぐりこむ。どうせまた学校に行くまで二度寝するつもりなんだろうな。そのままずっと寝てりゃいいのに、学校に行く前になるとどうせ起きてくんだろうな。


「……よし、すっきりした」

「お兄ちゃーん、起きてるー?」


 顔を洗ってから着替えてると下から秋穂が声を掛けて来た。下の方でなんかバタバタしてる音も聞こえてるから、チビ共ももう起きてるんだろうな。朝から元気なこった。

 面倒見てる秋穂も秋穂だが……って、オレも少しは手伝えって話か。

 いつも秋穂にばっかりチビ共の面倒任せてるしな。


「お兄ちゃん?」

「おう! ちゃんと起きてるぞ」

「あ、良かった。じゃあちゃんと効果あったんだ」

「効果って、やっぱりあのカーテンはお前の仕業か」

「えへへ、ごめんね。ちょっと試してみただけだったんだけど。効果があるならこれからも試してみようかな」

「眩しいから止めてくれ。普通に目覚ましで起きれるからな」

「それで何回も寝坊仕掛けてるからダメなんでしょ。もう……あ、ご飯もうできてるから」

「わかった。すぐ行く」


 親父たちが忙しいからってなぁ。オレも親父たちもちょっと秋穂に頼り過ぎか。

 さすがになんでもかんでも秋穂に任せすぎかもしれねぇな。料理とかはさすがに無理だが、チビ共の面倒くらいならどうにかできるだろうしな。


「今日は別に依頼を受けてるわけでもねぇし、特に用事があるわけでもねぇ。チビ共の迎え、俺が行ってもいいかもしれねぇな」

 

 オレはそう決めてから、朝食を食べるためにリビングへと向かった。

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