第30話 炎の怪人フレザード
魔法少女に変身したオレは、そのままの勢いで怪人の元へと向かっていた。
あのクソ妖精に啖呵を切って飛び出したのはいいんだが……。
「ちょっとマズいかな。作戦とか何も考えてないんだけど……」
って、そうだった。結局この姿の時の言葉遣いはどうにもならないんだったな。クソ、これもなんとかしてぇけど。
まぁ今は気にすることじゃねぇ。後回しだ。この魔法少女としての力が使って間抜けにも捕まっちまったあのアホを助けねぇとな。
「っ、見えてきた!」
駅前に近づくにつれて聞こえる悲鳴。それと荒々しい怪人の声と、耳障りに響く戦闘員の声。
この感じ、どうやらまだ他の魔法少女も到着してねぇみたいだな。だったら話は早い。
「ちょっと待ったぁああああああああっっ!!」
「っ! あぁ、なんだぁ?」
「燃え盛れ——『ラブリィファイア』!!」
「キーッッ!?」
まさに人に襲い掛かろうとしていた戦闘員を魔法の炎で焼き払う。
オレの魔法が直撃した戦闘員はあっという間に溶けるようにして消えていった。
そこまでの熱量があったわけじゃねぇから……もとから倒されたら消えるような仕組みになってやがんのか?
まぁそれならそれで後処理の面倒がなくていいんだろうが。
戦闘員は使い捨ての道具ってわけか。
「なんだテメェ……いきなり出てきやがってよぉ。俺の邪魔をしようってか?」
「えぇ、その通りよ。あなたが何を狙ってるか知らないけど、その企み。このラブリィレッドが阻止させてもらうから!」
こいつが何考えてるかなんて関係ねぇ。オレの前に立ったのが運の尽きだ。
全力でぶっ飛ばしてやる!
「くあはははっ! そうか。テメェが魔法少女ってやつか。組織の奴から聞いちゃいたが……なんだよ。ただのガキじゃねぇか」
「ガ、ガキ!?」
「まさか戦闘員如きを倒せたくらいで調子に乗ってんじゃねぇだろうなぁ。言っとくけどな、戦闘員なんざいくら倒しても無駄だぞ。おらっ」
「っ、また……」
怪人が黒い球体を投げ、地面にぶつかると同時にぶくぶくと膨れ上がり、さっき倒した戦闘員が現れる。なるほどな。あぁやって出て来てたわけだ。
そんじゃあんまり倒しても意味なさそうだな。
「キーッ!!」
「こんな風にいくらでも出せるからなぁ。それにテメェ、炎を使うみてぇだが……それもまた運が悪かったなぁ」
「どういうこと?」
「こういうことだよぉ!!」
「っ!?」
怪人が大きく口を開く。その瞬間、俺の背筋を悪寒が走り、慌ててその場から飛び退く。
「ゴアッ!!」
「っ、炎!?」
数瞬前まで俺の立っていた場所を炎の柱が通過する。もし飛び退いてなかったら確実に焼き尽くされてただろう。
もしかしたらこの体なら耐えれたかもしれねぇけど、それをわざわざ試す気にはならねぇしな。
「俺は炎を操る業炎の怪人、その名もフレザード様だぁ! やがてヴィラン組織『ウバウンデス』のトップに立つ大怪人様だ。覚えときなぁ。いや、覚えてもらう必要もねぇか。テメェはここで死ぬんだからなぁ!」
「っ! 速い!」
オレが着地した瞬間、そこを狙って怪人——フレザードが突っ込んでくる。
体のでかさを活かしたタックル。とっさに腕をクロスにして防いだが、とんでもない衝撃が体を貫いた。
何度も地面をバンドして、建物の壁にぶつかってようやく止まった。
「くぅ……」
なんつースピードとパワーだよ。
いや、でもダメージ事態は大したことねぇ。まだ全然動ける範囲だ。
つくづくこの体もチートくせぇっつうか。もし変身してねぇときにあんなタックルくらったら一発でお陀仏だってのに。
派手に飛ばされはしたが、それだけで済むんだからな。
あのパワーとスピードに関しても、意識さえしてりゃ捉えるのは難しくなさそうだな。
「へぇ、今のをくらってまだ立てるのかよ。耐久力だけはあるみてぇじゃねぇか。だが相当無理してんだろ? そのまま寝転がっときゃ命は助かったかも知れねぇのによぉ! このフレザード様のパワー、スピード、そして全てを焼き尽くす炎!! これさえありゃ俺が天下を取れるんだ!」
「…………」
「どうした? ビビっちまって声も出ねぇってか? くははははっ! 情けねぇなおい! 帰ってママのおっぱいでもしゃぶってろよクソガキがよぉ!」
「む……」
さっきから極力流しちゃいたが……こいつ言動からして相当ムカつく奴だな。
確かにオレが今まであったどの怪人よりも強ぇし、調子に乗るだけのことはあるのかもしれねぇ。でも、だからってオレより強いわけじゃねぇ。
確信がある。魔法少女になったオレの力はまだまだこんなもんじゃねぇって。
こうしてる今も、体の奥底から力が湧き上がって来る。
「いいよ。だったら決めようか」
「あん?」
「ふんっ!」
ゴウッ、とオレの全身から炎が立ち上る。その炎はオレの体……というより、服に張り付くように蠢く。
でもオレ自身には全く害はない。熱くもねぇしな。
「なんのつもりだよ。テメェ程度の炎がオレに届くとでも思ってんのかぁ?」
「うん、思ってる。いや、違う。届かせてみせる」
「……はっ、どうやら相当調子に乗ってるみてぇだなぁ。だったらいいぜ。わからせてやるよ。テメェの力が、このオレには通用しねぇってことをなぁ! おら、行けや戦闘員ども!」
「「「キーッッ!!」」」
「どっちが調子に乗ってるか、思い知らせてあげる! はぁあああああああっっ!!」
そして、オレはフレザード、そして戦闘員達に正面から突っ込んだ。
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