18・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期

・おひさま


彼女にはいくつもの選択肢がある。みんなに好かれて友達がたくさんいる彼女が捻くれ者の同級生とわざわざ一緒にいる理由なんてない。

クラスでのシフト担当時間が終わり一人で文化祭を回る。彼女がいないと味気ない。さっき人といるのを見かけた時声をかけるべきだっただろうかと思い、すぐ首を振る。






・アグレッシブご先祖さま


「こう見えて長生きしてるから私。オリンピックなんかもう全部見てるからね」

とても本当だとは思えない。だけどナイフで刺されたはずの傷が塞がって血も止まってるのをみると、嘘だとも言い切れなかった。

「言ったでしょ、キミを守るって。私強いよ?」

自称ご先祖様の彼女は明るく言って微笑んだ。






・魔王の卵


「世界征服したい」

彼女がまた無駄にスケールの大きいことを言い出す。本人も別に叶うとは思ってないのだろう。アイスを舐めながらぼんやり夕焼け空を見ている。

「征服してどうすんの?」

「んー、みんなが争わないようにさせて世界を平和にする」

「それっぽい」

なんとも中身のない会話だった。






・月と向日葵


「君だけいてくれたらそれでいいんだけどな」

日直日誌を書く手が止まる。彼女はいつもの人懐っこい笑顔ではなく、無表情。

「どういう意味?」

「ずっと仲良しでいようねぇって意味」

彼女は笑みを浮かべるが目は真剣だった。クラスの人気者から急にそんなことを言われて、胃の辺りがきゅっと痛む。






・こころなんてなければ


「なんかね、全部どうでもいいんだ。私より辛い思いしてる人、紛争地帯に住む人とか、飢えて苦しんでる人とか色々いるじゃん。それに比べたら私が苦しいのなんてくだらないなって思う」

そんなことはない、と言いたかった。彼女は笑っている。さっきまで泣いてたのがなんでもないことだっかのように。






・おせっかい


あの子はぼんやりしてるから、なにかと危なっかしいから、自分が見ててあげなくちゃ。そんなふうに思っていた彼女はとっくに自分の足で行きたいところへ歩き出していた。置いていかれたと気付いてからずっと、何もかもに現実味がない。

彼女と共に生きたかっただけなのだ。気づくのが遅すぎて、一人。






・イカロス


ドリンクを置き紅白試合に興じる仲間を見る。近くのボールで軽くリフティングをする。なんなくできる。けどフィールドを駆けることは、もうできない。

「未練たらたらって顔だね」

「監督」

「私も、君ほどの逸材を失うのは悲しい」

励ますように背中を叩かれた。胸の内に空いた孔が、また径を広げた。





横書き表示推奨。2021.04.21から2021.04.27までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。

最終更新日・2021.06.23

・おひさま(友達が少ない女とたくさんいる女の話)

・アグレッシブご先祖さま(とっても長生きなご先祖さまの女に気に入られた子孫の女の話)

・魔王の卵(いつか世界を征服しちゃうかもしれない女たちの話)

・月と向日葵(いつも笑顔の人気者だけど何考えてるかわからない女と目立たない普通の女の話)

・こころなんてなければ(我慢することが得意な女とその友達の話)

・おせっかい(面倒見がいい女の話)

・イカロス(怪我で選手生命を絶たれた女と元いたチームの監督の話)


「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。

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