9・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期
・手が届く星
しっかり目があう。早朝の公園で周りに人はいない。無視して立ち去ることもできず立ち尽くしてしまう。
「えっと、お芝居の練習?役者さんなの?」
「劇団には所属してるけどそう名乗れるほどじゃ」
彼女はキラキラ目を輝かせている。欲しかった視線を、ステージでもなんでもない場で浴びてしまった。
・ランナーズハイ
淡々と走る彼女の背に追いつけない。体育でやらされる持久走でも、他のことでも。
「走った後は座るより歩き回った方がいいらしいよ」
「こっちのが楽……」
走り切った後の背中は追いかけてる時より小さく見える。淡々なんてとんでもない。彼女も「頑張っている」。それで少しだけ、溜飲が下がる。
・でこぼこ
乾いた洗濯物から彼女のシャツを手に取る。背が高い彼女の服を小柄な自分の身体にあてがってみる。びっくりするくらい、不恰好だ。
「カノシャツ、なーんて」
着てみる勇気はなかった。見つかればからかわれるに決まっているし、恥ずかしい。彼女が仕事から帰る前に終わらせよう。黙々と服を畳む。
・せんせい
千切れて砕けて潰れた、人だったものたちの中で立ち尽くす。血塗れの手を高いスーツで拭いてると、迎えの足音がした。
「もっと綺麗に片付けらんないのかい」
「教わってないからわからない。あの人がそれで良いって言った」
迎えの女はげんなりした顔で、返り血を拭くためのタオルを投げてよこした。
・のけものたち
「テメーいつか絶対ぶん殴る」
「できるもんならね」
言い争う二人の周りには彼女たちの喧嘩を邪魔したために殴り倒された荒くれ者たちが転がっている。彼女らを始末するはずだった刺客たちは、そんなしょうもない理由でのされることとなった。
とんでもない人たちと友達になった。今更、自覚する。
・推しとの遭遇
何を言えばいいのかわからなかった。「応援してます!」とかそんな簡単な言葉さえ出てこない。
「あれ、えっと、大丈夫ですか!?」
大好きなアイドルが自分の頬に手を伸ばした。いつのまにか泣いていたらしかった。
「気持ち悪くてすみません……」
憧れとの不意の邂逅にやっと出た言葉は謝罪だった。
・あかい
彼女はうーうーと唸りながらうずくまっていた。手には彼女を殴りつけた時の生々しい感触が残っている。
「……大丈夫?」
「なわけないでしょバカ」
彼女も鼻血には慣れていないようだ。下を向いて血が流れるままにしている。血に濡れた彼女の手と、血が落ちて変色するアスファルトを交互に見ていた。
横書き表示推奨。2021.02.017から2021.02.023までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。
最終更新日・2021.06.01
・手が届く星(スターを目指す女とそれを応援することになる女)
・ランナーズハイ(一方的に友人をライバル視する女)
・でこぼこ(同棲百合・体格差百合)
・せんせい(殺し屋として働く少女とその世話役の女)
・のけものたち(荒くれ者と友達になった女の話)
・推しとの遭遇(偶然大好きなアイドルと出会ってしまった女の話)
・あかい(乱暴者の女とその友達の話)
「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。
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