8・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期

・みてるかヴィクター


「このサングラスの下、目が片方潰れてる。キモイぜ、けっこう」

「そう思われるのが嫌なんだね」

傷痕を隠すのは他者に不快な思いをさせないためだ。自分がどうか、なんて考えたこともなかった。

「そ。嫌なんだ不気味がられるの」

彼女はサングラスを外せとは言わない。そんなところも好ましかった。






・どうせ離れられやしないのに


「それじゃあ、さよならだ」

リュックを手に背を向ける。彼女の視線が背中に刺さる。止めはしないだろう。彼女ならそうすると確信できる。そのくらいの付き合いはあったはずだ。

「お互い生きててまた会えたらその時はぶん殴ってあげる」

今殴ったっていい。なんて言えないことを、彼女も知っている。






・天体観測


ベランダに出ると横に傾いたオリオン座が見えた。「さびさび」と震えながら彼女も隣にやってくる。

「今日は星がよく見える」

「中入ろうよ」

「私はしばらくいるよ」

彼女は不平を垂れながらも暖かい家に入ろうとはしなかった。彼女が凍死しても困るので、戻ったら珈琲でも淹れてあげようと思った。






・物語のはじまり


「やらなきゃいけないことがある」

「それは何?」

「……思い出せない」

頭を抱えてうずくまる。彼女は付かず離れずの距離で見守っている。自分の決定次第で、おそらくだが得体の知れない彼女は女神にも悪魔にもなる。

「待つよ。気は長い方なんだ」

のんびりした口調で言い彼女は冷たい床に転がる。






・布団


耳は家事などこなしながら動き回る同居人の生活音を拾う。布団の中でぼんやりしながら彼女が声をかけてくるのを待つ。

「もう昼過ぎだよ。なんか食う?」

お互い生活サイクルが異なるから寝てるのは別に問題ないのだが。布団の上から彼女に触れられるのが好きで、無駄に眠り続けている日もあった。






・待ち合わせ


待っているとやがて彼女がホームから出てくるのが見える。持ってきて傘を渡すと彼女は嬉しそうに礼を言った。

「助かったよありがとう!」

「じゃ、帰ろう」

「相合い傘をしようとしないあたりさすがというか」

「もうそんな歳でもないでしょ」

「馬鹿だなーいちゃつくのに年齢は関係ありませんー」






・火のあるところに立つ煙


「きみ高いところが似合うよね」

展望台から眺める都会の街並み。「人がたくさんいるな」以外思うところが何もない。ぼんやりしてたら友人からよくわからない賛辞。ほんの数ミリ、さらに高いとこにいるような気になる。

「見飽きたでしょ、行こ」

そうして彼女に手を引かれ、地上へ降りる道を行く。






横書き表示推奨。2021.02.09から2021.02.016までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。

最終更新日・2021.05.21

・みてるかヴィクター(顔に傷がある女とそれを気にしない女)

・どうせ離れられやしないのに(くっついては別れてを繰り返す女たち)

・天体観測(同棲百合・趣味がまったく合わないけど仲良しな女たち)

・物語のはじまり(大事な記憶を失った女と彼女を導く長命の女の話)

・布団(同棲百合・生活サイクルが違う女たち)

・待ち合わせ(雨の日に傘をもってきてあげるクーデレ女×持ってきてもらういちゃつくのが好きなデレ女)

・火のあるところに立つ煙(高いところが似合う女と高いところが好きな女)


「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。

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