6・Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期
・これはゲームではない
「ゲームでなら息ぴったりなのに」
荷物をまとめて出て行った彼女の、それが最後の言葉だった。
「世界がゾンビだらけになったら私ら多分英雄になれるよ」
小さな背中にそんな戯言を返した。戯言が現実になるなんて、世界に化け物が蔓延り彼女と命を預けあうなんて、その時は少しも思っていなかった。
・芸術家と凡人
彼女の部活が終わるまで図書室で待つことにも慣れた頃。あっさりと彼女は部活をやめてしまった。
「やめてよかったの」
「絵なら家でも描けるからね。ただ何か描いてたいだけで、描いてる人と関わったりしたいわけじゃないんだ」
芸術家の気持ちはわからない。だから、気の利いた返事が出来なかった。
・一人じゃ気付けないこと
彼女と暮らす家に帰る。「おかえり」と言う彼女にされるがまま上着やマフラーを脱いでいく。
「寒かったでしょ」
「そうみたい」
「あれ、そんなにだった?」
雪の中ではなんともなかったのに、彼女のいる空気を吸った途端「寒かった!」と全身が叫ぶ。彼女の暖かさが麻痺した感覚を溶かしたのだ。
・はたらけ!モラトリアム
なんとなく就いた仕事でいい大人に出会った女の話
将来について夢や希望や、そんなふわふわした話を彼女はしなかった。将来性のある資格、自分の適性、したのは今の職を踏まえた具体的な話。
「まぁそんなに焦らなくていいと思うわよ。あなたまだ若いし」
親身になってくれる大人とはこういう人を言うのだ。お酒が飲める歳まで生きて初めて理解した。
・ギャルとメガネさん
「すごいこの絵」
彼女はキラキラした瞳で言う。キャプションをみてその絵を描いたのが隣にいる自分だと気付いたらしい彼女がパッと笑った
「アタシには描けないこんなの、すごい」
真っ直ぐな褒め言葉がじくじく刺さる。クラスで人気者のギャル、クラスで一番苦手な人からの賛辞はもはや凶器だった。
・水に流して
便器に顔を突っ込み胃の中身をぶちまける。ぐねぐねと食道やら何やらが蠢く感覚でさらに気持ち悪くなる。びちゃびちゃ嫌な音が響く中でも、彼女がドアの前にいる気配はよくわかった。
「スッキリしたー?」
「ぜんっぜん」
「そっか」
板一枚隔てた向こうからする声は軽い。軽すぎて苛立ちすらしない。
・ねじれの位置
「孤児に憧れてるの」
「そ。いっそみなしごだったらよかったなぁって思う」
「それ私に言う?」
「サイアクだよね」
まったくだという気持ちを込めグーで肩を殴った。喉から手が出るほど普通の家族が欲しい。そんな家族のもと育ったはずの彼女はみなしごへの憧れを語る。ひどいないものねだりだ。
横書き表示推奨。2021.01.26から2021.02.01までにTwitterへ投稿した約140字の創作百合小説をまとめました。
最終更新日・2021.04.25
・これはゲームではない(ゲーマー・元カノ同士・ゾンビもの)
・芸術家と凡人(絵描きと普通の人)
・一人じゃ気付けないこと(同棲百合)
・はたらけ!モラトリアム(社会人百合)
・ギャルとメガネさん(ギャルと大人しい女)
・水に流して(嘔吐百合)
・ねじれの位置(「普通の家族」に憧れるみなしごと「普通じゃない家族」を持つみなしごに憧れる女)
「pixiv」と「小説家になろう」にも投稿しています。
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