第148話 対策会議1
「カオルちゃん! それに実さんも!」
元気な海野さんの声が出迎えてくれた。
隣の明石さんは覚えている。海野さんを治療してた人だよな?
「先生は元気そうですね。明石さんもお久しぶりです」
「カオルさんも元気そうでなによりです」
隣から小さな舌打ちが聞こえてくる。
お前はこいつも嫌いなのかよ。
明石さんも嫌われてるのがわかっているのか、笑顔がぎこちない。
「ドラちゃん。とりあえず座ろうよ」
「そうだな。コルード殿は私の隣へ。……ミノちゃんもこっちだよ!」
「嫌だよ! なんでこのデカイテーブルのお誕生日席に」
「お誕生日席とか言うなよ! これもみんなが気を遣って作ってくれたんだぞ?」
早くセンスが悪いと言ってやれ!
どうせ月1回使うかわからない程度だろうに。
ドラちゃんを中心に俺と王弟様で両サイドを固める。俺の隣にカオル達の召喚組。王弟様の隣にナイトや料理長という順に並ぶ。
宰相は座らず後で食べるとか言い出す。こいつも座りたく無い口だな。薄めで宰相を見つめると、目を
「そちらの明石殿からも話を聞いておこう。他の召喚された者たちについてもね」
「では……」
王弟様の話とほとんど同じだが、召喚された者達のことが詳しく聞けた。
勇者含め4人で行動していた時は、まだ問題は無かったらしい。個々の力がついてきた時に、個別での訓練になってから様子が変わった。
徐々に反応が薄くなる状況に違和感を覚えつつも、回復すると元に戻っていたので、放置していた。それが、自己治癒も訓練のうちだと、会えなくさせられてから悪化するばかり。
人伝に聞く話だと感情が薄れ、町人たちからは、まるで人形のようだと言われている。
中位に分けられていた者たちとも隔離され、王弟様やナイトといる機会が増えた頃。その王弟様が殺されそうになる。
一緒に逃げる形になってしまい、追手に勇者立花が向けられる。その様子もおかしいので回復を掛けたが、何かに弾かれてしまったという。その時そばに居たのが王女だった。
「なるほど」
「なるほど、じゃないですよ。途中瞑想してましたよね?」
海野さん。
こんな長い話1回じゃ覚えられないって。
3回かもしれないけど……。
でも、何とか理解出来たかな。
「大変だったねー。それで、どの国に逃げるの?」
「え? 逃げる?」
「追われてるんでしょ? 逃げないの?」
「いえ。戦うことになると思ってました」
戦うの?
王弟様たちも真剣な表情で頷いている。
どっちでも良いけど、どうやって戦うつもりだろうか。
「彼らの覚悟もわかったね。じゃあ」
「ちょ、ちょっとお待ちください」
「どうかした?」
「あの、こちらの方は参加されないのですか?」
明石さんが俺を指している。俺に戦わせるのは見当違いだと思うが、周りを見渡しても、苦笑いしているばかり。
「放置で良いと思うんだけど、ミノちゃんがまともに戦ってもねぇ?」
「ドラちゃん! ……言い方に悪意を感じるけど、間違っては無い!」
みんなの視線が痛い。でも、事実だから仕方ない。戦力だけで言うと、そろそろカオルに負けそうだしな。ペロ君が強くなりすぎた。どんな話を聞いたか知らないけど、明石さんは、俺を過大評価しすぎたんじゃ無いか?
「聖女殿には私から話したのだが、間違って伝わったかもしれん」
「王弟様! 私の勘違いで迷惑を」
「私より詳しい者に聞いておこう。私も聞いてみたい」
俺のことを知ってどうするつもりだ?
誰が言うのかと思ったら、ドラちゃんがウキウキしだす。
「私が話そう! その前に食事を並べておいてくれ」
これは話が長くなるな。
「い、いまは何年の話でしたか?」
「ちょうど君達が居た年に近いんじゃないか?」
俺とカオルが小声で話している横で、意気揚々と話し続けるドラちゃん。互いに遊んだ思い出や、他の国で偶然であったことまで。全部話してたら何年かかることか、…本当に何年もかかる。俺もそこまで覚えてないし、そういうこともあったなーと思い出す。
「ブルンザ王よ。昔のことはそこまでにして……興味はあるのだが」
「すまんすまん。ついつい楽しくなってしまった。それで何の話だったか?」
「ノール殿。今は
「そうだった。ミノちゃんは仙人のくせに一度に出せる力が弱いんだ」
くせにとか言うなよ。
「だけど、逃げながら相手に嫌がらせをすると世界一だよ。それに仙術を使った洗脳の解除と、生存能力の高さが売りだね」
「俺って褒められてるの?
「褒めてるんだよー。私からしたら一番相手にしたくないね。面倒だもの」
「ま、まぁな。あんまり褒められると照れるな」
隣のカオルから「褒めてないです」と小声で言われ、少し機嫌が悪くなった。それぞれわかってくれたようだが、表情は複雑だ。考え込むような険しい表情から、苦笑いしている者までいる。
「まぁ、洗脳が解除出来るというのは心強いな」
「たぶんカオルや海野さんも出来るよ?」
「そうなのか!?」
王弟様の剣幕に、呼ばれた2人がたじろいでいた。
「あとは……魔鴨団にも気を使えるやつがいるでしょ?」
「そうなのか!? す、すまん。だが、兵たちの洗脳が解ければ」
王弟様も食い気味だな。かなり切羽詰まっていたのだろうか。とにかく、俺以外にも出来るやつを言っておけば役割が分散されるだろう。
この時点でも、戦争で何かやれと言われそうな気がしている。それなら、なるべく負担を減らしておいた方が良いよな。
「ドラちゃんも依頼するつもりなんでしょ? ノーリには早めに言っておけば?」
「いや、すでに依頼はしてあるんだが……気が使えたか。それなら明日呼んでみるか」
「ん? ドラちゃんが気づかなかったの?」
「ミノちゃん。魔力との相性悪いの知ってるでしょ? 魔力の察知じゃ全然わからないよ」
そうだったのか。両方使えないとわからないのかな?そういえば魔力が分かるまで時間かかったし、もしかしてそれが関係してるのかも?
「ミノちゃんは存在が自然に近いから、なおさらわからないよ。妖精族も自然に近いから、似ているよね」
なるほど。
瞑想のおかげかな?
「ちなみに探しても無駄だと思ったのは、それが理由だからね。ゴンの探知からも逃げれるのって、ミノちゃんくらいじゃない?」
「ゴンの探知ってレーダー?」
「そうそう。だけど、地表の魔力でレーダーの精度下がってるみたい」
ふーん。
見つけられてないけど、今のところ困ってないし良いか。
「そろそろ本題に戻ろうか」
ドラちゃんの言葉に全員が居住まいを正した。
「マイナールの王について、本日の朝に情報が入った。あの男はワイトという悪霊になっていた」
苦々しい顔をしてそう告げた。
その名前を聞いて、みんな思っているだろう。
俺が代表して答えようじゃ無いか。
「ワイトって何?」
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