第94話 記録

「金属板の部屋とは…中心のオブジェも興味深い」

「教授! こっちも色々ありますよ!」


 テンションの高い2人と比べ、他の人たちは引き気味だ。


「中入って良いのか? 危なく無いか?」

「急に落ちてきたりしないよな?」


 金属は重いイメージがあるからな。

 壊れて落ちてくると思ってるらしい。


「大丈夫だよ。入ろう」



 床には、落ちて壊れた機材もあるが、使えそうな物も多い。

 壁際のモニターを見ると、割れた様子も無く、エネルギーさえあれば稼働しそうだ。

 ただ、電気か燃料か……。

 それ以降のエネルギーは詳しく無いんだよね。


「これはダメだな。こっちも」


 あとは教授達が見てる中央のやつ。


「ここの出っ張りは何でしょうか?」

「押してみようじゃ無いか」


 教授が押しても反応は無い。


「カチカチ軽い音だけするな。ジール君もやってみたまえ」

「ではでは」



「あの方達は怖く無いのでしょうか? 私はとても」

「俺もいきなり触るのはごめんだぁ」


 知らない物に触るのは俺も躊躇するかも。

 そう考えると研究者って度胸あるよな。

 野草は別だよ?


 あんまり押しすぎて壊しても良く無いので、止めるか。


「押しすぎても壊れち」


 言い切る前に、中心の投影機から光が溢れ出した。


「やっぱり魔道具か! 警戒!」

「うひゃああ」

「じ、ジール君! 置いてかないでくれ!」


 徐々に収束すると一部の機材が点灯し始めた。

 中心部は光ってるだけで変化は無し。

 壁際のモニターが点灯している。

 そちらに移動すると、いくつか表示があった。


「これは記録かな? ぽちっと」


 中央の機材からホログラフが投影される。

 軍服と白衣の人族。

 そして、背の高いドワーフに羽の生えた鱗人族?


 _______________


「これで撮れてるのか?」

 顔をしかめながらドワーフが話す。


「ちゃんと撮れてますよ。じゃあ記録を始めますね」

 白衣の女性が嗜めるように声を出した。


「現在DC3805。DC3800の年明けに大規模な地震が起き、新たな人類を発見した。獣の特徴を持つ者から、神話で登場する人種。数年かけ、彼らと意思疎通を図り、機械の手助けで会話ができるようになった。これより彼らの紹介と世界の変動を言う。ではお一人ずつどうぞ」


「儂からじゃ。儂はハイドワーフのヴェルグ。大地震が起きて地下から出てきたら、ひ弱な人間が多数おった。瓦礫と石の城跡に囲まれて暮らしておったが、しばらく様子を見ていた。こいつらの技術は面白くて色々見てみるが、今でもよくわからん。しかし、魔力もなく、鉄のひょろ玉も魔物に通じないので今は匿っておる」


「次は私か。龍人族の○○○だ。おい! 何か変だぞ?」

「ちょっと待ってください。あぁ、龍人語は読み取れないようです。他の言葉でもいいですか?」

「仕方ないか。龍人族の…確か……そうだ。静かなる空だ」

「お主の名前はそんな意味じゃったのか? 名前と逆の性格じゃろ」

「それは後にしてくれ。続きを。なんだったか……」

「人に会うた時じゃ」


「そうだった。山から弱き者を見つけ守ったんだったな。今まで見たことある人族と違って、頭は良いが極端に弱くてな。全く魔力の無い者など初めてだった。すでに相当数死んでいたが、残った少数を獣族のところに住まわせている」


「ありがとうございます。このように大地震後、危険生物である魔物が現れ、人間は淘汰されつつある。銃等は効果無く、なぜか兵器もほとんどが使えなくなった。魔力という新エネルギーが干渉していると思われる。これより、人間は一度文明を捨て、種族として力をつけることにする。先日、人に近い獣人族と仲良くなった物の中で、生まれた子がいる。その子は、より人へ近付き、魔力を内包しているという話だ。次は大佐。お願いします」


「わかった。今、地上にあった文明は、触れると砂のように崩れる現象が起きている。その中一部の人型ロボットだけ活動出来ているので、それらを開放することにした。少しでも多くの人が助かることを願う。また、一部納得できぬ者達も居たが、すでに去った」


「ありがとうございます。最後に、解明出来ていないが、我々の居た世界と彼らの世界が融合したと考えられる。融合の際に起きた大地震は、互いに大きな被害を与えられた。手を取り合って、困難を乗り越えて欲しい」






「ボタン押したよな? これで良いはず……ヴェルグじゃ。あれから200年経ち、地球の人は全員亡くなった。そして、先日もう一度大地震が起きよった。それで地上にあった彼らも儂らも文明はほぼ消え去った。植物の伸びも早く、こんな現象は儂でも初めてじゃ。儂らは一度地下へ潜り、残っている文明を埋めてくる。少しでも残れば良いが」



 _______________


 映像終わりかな?


「お、おい」

「龍人様がいたぞ!」

「アズさま……」


 それぞれ映像の感想があるようだが、他にも記録はあるよ。


「ノール。彼ら、知ってる?」

「映像の? うーん。誰か知らないけど、あの軍服は見たことある気がする。でも、2つの世界が融合ねー」


 いくつか記録を起動してみたが、砂嵐になったりとほとんど見れない。

 そんな中、もう一つだけ表示できた。


「おぉ? これは見れるじゃないか?」




 何人か獣族と獣人がいる。

 _______________


「龍人様が言ってたのこれだよな」

「そうだよ。押したけどこれで良いのかな?」

「早く戦利品見せようよ」

「じゃーん! 良い服だろ! 動かない石像から引っ剥がしたんだぜ!」

「こっちの本も! 字はわかんないんだけどさ、絵がいっぱい書いてあってわかりやすいんだ。ギルに見せたら良いものだってさ」

「あと種な! 色々生えてきて、食ったらうまかったんだぜ! 俺らの宝物だよ」


 わーきゃー騒ぐ獣族と獣人族。

 その後ろからエルフが現れた。


「ちょっと、置いてかないでくれよ」

「ギル! これが龍人様の言ってた……なんだっけ?」

「ホロホロだよ!」

「中に閉じ込めるんだろ? なんだか怖いな」

「大丈夫だって。名前は強いのにナヨっちいんだから」

「それは妖精王様に言ってくれよ。自分でつけたんじゃ無いのに」

「それより! これに俺らの顔残そうぜ。山向こうから帰った英雄8人!」


「「「「「「「「いぇーい!」」」」」」」」



 _______________



「はは。こいつら面白いな。バートに似てるのもいたぞ」

「あ、あぁ」

「でも、作務衣って結構あるもんだな」

「これは……まだ世に出せないな」

「ドリー氏。君達には悪いが大きすぎる発見だったようだ。問題が多すぎるのはわかるね?」

「は、はい。オレは嘘じゃ無いってわかっただけで良いです」


 みんな勝手に話進めてるけど、作務衣は反応無し?


「ノール。この星、名前わかる?」

「地球だろ? それくらい知ってるよ」

「今違う。この星、セラシアス、って名前」


 星の名前を改名したのか!

 最近の人はすごいことをやってのけるな。


「なるほど。セラシアスね。美味しそうで良い名前だ」


 なんだか腹減ってきたな。


「腹減ったから一度帰ろうよ」

「いや! まだ研究が!」

「また来れば良いじゃん。どうせ食料持たないし」

「ぐっ。それは……ノール氏の言う通りだ」

「ジールも諦めろ」

「ほら。下の機材とか持って帰って見ればいいじゃん」


 諦めきれない研究者達を宥めながら説得する。


「今戻るなら、連れてっても、良い」

「さすがサグ! お礼にこれあげる」


 壊れた端末ですまんな。


「良いな。貰っておく。さぁ、行くぞ」




 黒モヤを通り抜けると、モール族の村近くに出た。


「久しぶりの太陽は良いね」

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