5章 獣王国

第80話 洞窟発見


 半亜人村は、快く迎え入れて、助け合っている。村も亜人村へ変更。半亜人はハーフエルフのメルさんを代表に、獣族はベアさんが代表になった。メルさんは、俺が始めてきた時に案内してくれた人。


 メルさんが、ケープ村長の話を知ると、戻ったら村長を譲ると言ってしまう。獣族達総出で、引き留めを行って、ようやく納得してくれた。

 あの人はやりたくて村長やってた訳じゃないからね。


 俺が到着してから3日と早いが、荷物を準備し始めた。


「ノールさん。出かけられるのですか?」

「メル村長。こいつの行動を気にしてたら仕事できんぞ?」


 顔を上げるとメルさんとベアさんが揃って居た。


「山に行こうと思っただけだよ? お土産欲しい?」

「あっても無くてもいいぞ。待ってたらいつになるか分からないからなぁ」

「えっと。私もどちらでも構いませんよ?」


 2人共遠慮しちゃってるが、覚えてたら適当に見繕うかな。


 なぜ、山に行こうとしてるかと言うと、例の鱗人族さんから面白い話を聞いたんだ。

 彼の曽祖父は、獣王国の更に先からやってきたそうで、山を超えてきたと言う話があった。

 山越えは何度も試されてきたが、標高が高く、寒くて凍え死ぬ者が多発している。通れた者もいるが、何らかの後遺症が残ったという記録がある。

 それを、数十人の集団で出発し、数人欠けて辿り着いたという。全員が方法を伝えることなく亡くなったが、親類の中では抜け道があると目星を付けている。ただし、未だにそれは見つかってないけどね。


 そんな話に心躍らせて、ちょっと探してみたくなった。

 聖教国への道も、今は閉ざされていて通れないし、海路も人の輸送は制限されている。要するに、獣王国へ行けないので、暇なんだ。


「それじゃあ、ちょっくら行ってくるね」

 ピッピィ!

 ぷるぷる。





「あの様子は、当分戻ってこないな」

「そうなんですか?」

「ターさんは、面白いことを見つけると、予定を全部忘れるんだよ。俺達が生きてるうちに帰ってくれば良い方だな」

「えぇ!? そんなにですか?」

「長命種はそういうのも多い。頼む時はしっかり催促しないと、話は進まんぞ」

「なるほど、気をつけます」



◆◆◆



 1ヶ月程、山の中を彷徨っている。

 麓は整備されていたが、100m程奥に行くと薮や木々が鬱蒼としている。これだけ人の手が入ってないと、抜け道を見つけれれないのもわかるな。

 ある程度予想立てて、探っているんだが、それらしいところは無かった。見つけた穴は全部獣が掘ったところ。これが、抜けているとは思えないので、別の穴か元々無いかだろう。


「ダメだねぇ。だいぶ東側に来ちゃったよ」


 現在地は、ブルーメンから東へ2つ目の村を南下した所かな。木に登ると、遠くに小さな集落のような物が見える。


「昼飯にしようか」


 その言葉に反応して、屋台を抱えていたメサが降りてくる。メサが屋台を浮かせて、オスクが引っ張る。役割が定着したようで、最近はほぼこの状態だ。屋台で簡単な山菜鍋を作り、みんなでつつく。俺とメサだけ炙ったニンニクを後入れだ。

 この地域の野生動物はニンニク臭に慣れてないのか、全然襲ってこない。襲撃されても面倒なので、1日1回ニンニク生活になった。オスクは相変わらず苦手みたいだが、少しは慣れたのか、食べていても大丈夫になった。しかし、近づくと逃げる。


「そこまで期待してなかったけど、そうなるとどうやって獣王国へ行ったものか……」


 戦争はすぐ終わったものの、行き来が出来なくなったのは困る。本格的に山脈越えを考えないとダメかな?

 そう思いつつ、山を見上げてみるが、雪で覆われた部分が多い。しかも、もう1つ厄介なのが居る。


「ここから見える鳥って、どんだけデカイんだよ」


 山頂まで10km程離れているが、その近辺に、はっきりと鳥とわかる形をしている生き物が見られた。目測だと、最低でも10mは超えるサイズ。しかも、通りやすそうな道を巡回するように飛んでいる。


「あと少しだけ東側に行ってみよう」


 ここまで来たから、調査も兼ねて先へ先へと調べてみることにした。



 ……

 …………



 念入りに調べたせいか2ヶ月経っている。現在は、更に2つ先の村南方の山。

 おかげで面白いことがわかった。1つ手前側辺りから生態が変わっている。

 植物も動物も大きめの個体が増え、ここらでは見かけないはずのイタチ類が見られるようになった。

 しかも、通常の動物ではなく魔物の個体だけ。


 この国自体でイタチを見たことが無かったので、怪しさを醸し出している。これはと思ったので、慎重に後をつけると当たり!

 草木で隠れた洞窟を発見した!


「やったな! 向こうまで続いてるかわからないけど、それっぽいぞ」


 ピピィィィ!


 オスクも喜んでくれている。

 メサは新しい毒草に夢中だ。


 洞窟の入り口を見てみると、人の手が入ってることがわかる。

 木の生え方が等間隔でおかしい。

 外部の岩も形が綺麗過ぎて違和感がある。


「中に入る前にちょっと補充しておこうか」


 松明や食料、水が必要だな。

 近くの村に行って油だけでも貰ってこないとな。




 ……

 …………




 数日で戻ってこれた。

 だが、村人が怯えていたな。

 会話するにも苦労したぞ。

 悪魔とか言ってたが、何か恐ろしいことでもあったのだろう。



「準備は出来たな。メサは良いだろうけど、オスクは暗いところ慣れてないだろ? ちゃんと着いてこいよ」

 ピィィ。

 ぷるぷる。



 中に入ると、反響音と振動のせいか、コウモリが飛び出してきた。可哀想に何匹かはメサのごはんだ。ナムサン。


「やっぱり人の手が入ってるね」


 屋台が入っても更に幅2m程余裕があり、梁まで組まれている。奥まで広めなので、しばらくこのまま進んでみることにした。

 入り口付近は生き物も多く、5分置きに飛びかかってくる。軽く叩き落とすだけだから良いけれど、ちょっと面倒。

 ウネウネと曲がった道を、2km程進むと分かれ道が見える。右は広く、左は狭い。


「どっちが良いのか……」


 するとメサが迷わず左へ向かった。


「道がわかるのか?」


 ぷるぷる。

 そうだという意思が伝わってくる。

 それならと、屋台を縮小化して先へ進む。


 ……

 …………



 あれから、1日。一向に終わりは見えないが、時々厄介な生き物が出る。

 毒を飛ばす蛇だ。


「またかぁ」


 メサが勇んで捕まえて締め上げると、嬉しそうに捕食する。


「本当にこっちであってるのか?」


 ぷる?


 あ、こいつは違うな。毒蛇目当てで来やがった。

 だが、ここまで来たら、もう少し進んでも良いだろう。

 後で合ってましたじゃ、目も当てられない。

 どうか合っていてくれと土下座祈りしておく。



……

…………



 それから2日。

 土下座祈りは通じなかった。


「予想してた通りだな」


 俺の前には、頭がようやく入るかどうかの穴。

 周りを見ても怪しい場所すら無いという。

 一応、気配、魔力ともに探ってみるが、小動物が数匹いる程度。


「戻るか……」


 メサも満足したようだし、数日程度は気にすることでも無いからな。


 ……

 …………


 帰りは登りだったが、生き物も少なく2日で戻れた。

 通った道にバツ印を刻んで、今度こそ、間違いなく広い道を通る。


「やっぱり広い道のほうが楽だよな」


 ここまで来ると、地面は凸凹しているが、それでも通りやすい。


 ピィィ。

 うむ。オスクも同意なようだな。


 ぷるぷる。

 お前は飛んでるからわからんのだ。



 ……

 …………



 途中、ギリギリ通れる幅になったりしたが、なんとか進むことができた。


 更に10日進むと、前に広場が見える。


「ここは、良い場所だな!今日はここまでにしよう」

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