第43話 ブルーメンの街(裏)

 俺の名前はアーケン。

 ブルーメンの探索者ギルドのマスターをしている。

 最近困ったことがあるんだ。

 ワレィ子爵家の小僧ケッツが探索者になって、しばらくすると良く無い噂が増えてきた。

 ケッツが獣人に暴行しているとか、貴族の名前を使って出店を荒らしているとかだ。

 本人に聞くが、はぐらかすばかり。

 なので一度後をつけて、現行犯でとっちめた。

 それなのに後日、言いがかりだったと文句が来る始末。

 報告書も上げたが取り扱われない。

 しかも、今回の件は不問にしてやると逆になだめようとしてくる。

 やりづらい相手だ。

 採取系の依頼も最近滞ってばかり、うまく行かないもんだなぁ。

 今日もケッツに絡まれたと苦情が来ている。

 馬車利用中に貶されたあげく、客に護衛させようとしたらしい。

 翌日に、御者からも同じことも言われた。

 ケッツは変わらず認めない。


 その日、ケッツが獣人と喧嘩していると話が飛んできた。

 なんであいつは俺がいない時に問題を起こすんだ!

 俺がギルドに到着すると、もう終わっていた。

 怪我人は介抱されて帰ったそうだ。

 その治療した奴が薬草を納品しにきたという。

 逃がすものかと俺も見に行くが、なんともノラリクラリとかわそうとする手強い奴だった。

 他の奴に聞くと、ニールセンの草取りじゃねーか。

 俺も採取の名人の話は聞いたことがある。

 こいつがケッツに絡まれていたとか、本当にツイテねぇ。

 俺も受付と一緒に頼んだが全然ダメだ。

 ケッツに一切会いたく無いって、相当だろ。

 しかも聞いてみると、ケッツ本人だけじゃなく、関わりのある人にすら会いたく無いとか筋金入りだ。

 俺も何とか出来ないか色々考えたが、良い案が思いつかなかった。

 すると草取りが何か考え出して、森の入り口まで取りに来るなら良いと言った。

 なんでも森に拠点を作成中らしい。

 行く奴は、こっちも人員を精査して真っ当な奴を選ぶ。

 その人員も監視対象にして、ケッツと関わりがないか確認することになった。

 経費は痛いが、それだけ逼迫しているからな。


 後日薬草が届くと、最高品質の漢方やハーブ、高級ポーションに使う太陽草まである。

 これは有名になるわけだ。


 ちょくちょく薬草を貰ってきたが、そろそろ限界か。

 他のギルドとも協力してみたんだが、うまく尻尾を隠してやがる。

 しかも領主は俺らを疑っているらしい。

 良い領主だと思っていたが、相手が上手だったか・・。

 金が底を着く前に引くのが良いだろうと、話し合ってこの街から撤退することになった。

 数ヶ月前から、役人には書類を出していたので大丈夫だろう。

 同じ書類も保管してあるので、無くさないようにしないとな。

 最近は草取りにも会えず、使いっ走りの孤児が相手だが、伝えておく。

 先に出て行って悪いなと。

 それにしても10歳にもならないのにあの身のこなしはやるな。

 一度ニールセンに言って、あいつに話してやるか。



 _______________


 俺の名前はケッツ・ワレィ。

 子爵家の3男だ。

 長男が領主館の高級事務官をしている。

 次男が騎士団の副団長だ。

 今、子爵家総出で、このブルーメンの乗っ取り計画を行っている。

 外部の聖教縁のある犯罪組織と手を組んで、中に入れて仕舞えば、あとは領主に退場していただくだけさ。

 その為には、街の互助会が邪魔になる。ここまでデカイ街だと民間の力がデカイんだ。

 亜人共もデカイ顔しやがって気に食わない。

 有能な人族の糧になって当然だろうが!


 3兄弟で亜人を締め出し、親父が証拠を揉み消す。

 領主様には、間違った情報を流すことで更に追い詰める。

 そろそろ、組織を呼ぶ頃合いかな。


 街に亜人がいないと当たる奴もいない。

 俺の不満はどこに向かえば良いんだよ!

 そこのお前。

 こっち見てるんじゃねぇ!

 まだ奴らは来ない。


 おいおい聞いてねえぞ?

 なんでこっちまで攻撃してくるんだよ。

 護衛だけじゃ足りねえ?

 また1人斬られた!

 くそ。

 俺が相手してやる!


 イテェ。イテェよ。

 俺の右腕はどこだ?

 左足はどこいった!

 前に戻してくれよぉ。

 親父。

 なんで頭から下が無いんだ?


 _______________


 私の名前はハルク・ブルーメン。

 この街の領主をやっている。

 辺境の伯爵にあたる地位だ。

 10数年前、ニールセンのクソ領主が悪辣だったので、北と協力してすげ替えてやった。

 ワレィともそれ以来良好な関係だ。

 私の指示で、的確に動ける優秀な人材がいると助かるな。

 この街は平和であるな。


 最近、なんとか主義が声高で煩いという話が来る。

 領主は中立が基本なので、あまりかたよりがあるのは良く無いのだが、こんなに話があると嫌になってくる。

 ワレィも諌めてくるし、しばらくは様子見か。


 街から亜人が減ってきているらしい。

 少しは煩いのが減って良くなるだろうか?

 最近忙しくて、息子とも会えてないな。

 つい先日5歳になったんだ。

 名前はアドルフきっとカッコいい男になるぞ。

 娘はエルザ。7歳でちょっと大人びてきた。

 背伸びしたいんだろうが、それがかわいいんだ。


 街からギルドが撤退するらしいが、知ったことでは無い!

 そんなことより、行方不明の子供達はどこなんだ!?

 誰か助けてくれ!

 ワレィ。

 早く捜索隊を出してくれ!


 何もやる気が起きない。

 早く子供に会わせてくれ。

 どうしたワレィ?

 何を言ってるんだ?

 お前が連れ去ったのか!?

 どこへやった!

 隷属の首輪までつけて・・

 許せん!!!


 相当仕組んでいたらしいが、私の技量は見くびっていたようだ。

 首は切り落としてやったが、そこかしこから火の手が上がっている。

 もうこの街は終わりだろう。

 願わくば、子供達が良い主人にあって幸せになれますように。


 _______________


 アチシの名前はミーアにゃ。

 もともとは街で暮らしてたけど、親が死んでスラム暮らし。

 ある日、いつも通りにょ宿の奴を襲ってたら、返り討ちにあったにゃ。

 もう終わりかと思ってたら、そいつが飯をくれるって。


 その後も森の生き方を教えてくれて、力まで貰ったにゃ。

 リーダーのベンも卒業して、お見送りにゃ。

 次のリーダーは、初期から居るアチシ。

 みんな人見知りだからにゃぁ。

 色んにゃ武器も使い始めたけど、棒の動きがマッチして上手ににゃった。

 あと首領は、自分の魔鴨にそろそろ名前にゃまえを付けてあげるべき。


 最近街から人が抜け出して、どんどん孤児も増えてにゃぁ。

 よく聞くと、亜人差別とかでイジメられたそうにゃ。

 ここの孤児は人族も関係にゃいから、イジメられたらすぐ言うにゃ。

 アチシのゲンコツはちょっと痛いにゃぁ?



 首領がまた寝るって言うにゃ。

 寝る時間長にゃがすぎて、にゃぞの生物に見えるにゃ。

 でも、待たせるにゃ。

 最近スラムからの攻めが多いから少し守って欲しいにゃ。

 メサはフヨフヨしてニンニクばかり気にして頼りにゃい。

 魔鴨達も前より強くにゃったけど、まだまだにゃぁ。


 毛色の違う孤児が来たにゃ。

 男児はアドルフとかカッコいい名前にゃまえだけどにゃき虫にゃ。

 少女はエルザって名前にゃまえで、ちょっと上から目線だったにゃ。

 アチシのゲンコツ一発で従わせたにゃ。

 街のお偉いさんの子も孤児ににゃったら一緒にゃ!

 みんにゃ、仲間にゃかま


 首領が久しぶりに目覚めたにゃ。

 どうにも出来にゃかった首輪をダメもとで頼んだら。

 すぐ壊したにゃ。

 やっぱり首領は謎生物だったにゃ。

 首領もアチシが引き継いだから、幹部と話していた夢をミンニャに言ってみたい。

 魔鴨団の街が欲しいにゃ。

 ミンニャ同意してくれて良かったにゃ。

 首領が言った「良いことも悪いことも自分に返ってくる。」

 初代首領が力をくれた時に言ってたことは忘れてにゃい。

 人殺しはしにゃい!

 そういえば、エルザとアドルフはお偉いさんの子だったかにゃ?

 アチシ達に付いてくるにゃ。

 そにょうち前とおにゃじ目線まで連れてってやるにゃぁ!


 ちゃんと初代の名前にゃまえも刻んでやるにゃ。

 初代首領ニョール。

 2代目首領ミーア。

 完璧にゃ。

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