第37話 魔の修練

 1週間後に2人の成果を見てみると、気を把握するきざしは見えている。

 今後は瞑想を続けつつ、会った時に様子を聞けばいいだろう。

 その時、ノーリから聞いたが、孤児院にいるマーガレット先生に魔力も教えてもらえる手配をしたとか。

 今度は俺が魔力を知る番だな。


 俺が探索者活動を再開したこともあり、最近では孤児達メインで教えている。

 孤児達にとっては、午前に畑や内職などの作業。

 午後に勉強というルーティーンになっている。

 少しずつだが文字の読み書きが出来るようになってきた。

 この様子だとスラムの住民より優秀になりそうだな。


「ノールさん戻りましたね。お館様から、魔力を教えるように聞いています」


 マーガレット先生が待っていてくれていたようだ。


「せんせー。今日は何の勉強?」

「また外のお話かなー?」

「へへっ。それが聞きたいんだろー?」

「今日は魔力の勉強です。これはみんなも受けられますよ」


 先生がそう言うと、みんなワーワー騒ぎ出した。

 孤児達も魔力のことは知りたいようだ。


「では、始めましょうか」



 <魔力とは>


 この世界に漂う魔素。これを使う生物のエネルギーを指すらしい。

 電気と電力の関係に似ているかな。

 生物は何らかの方法で、その魔素を取り込み魔力に変換、もしくは体内で作り出す。

 生物と言われている者には、全て魔力が備わっている。

 小動物から木々にまであり、その量の大小でわかりづらいだけらしい。

 その為、魔物を魔力量が多い生物として言うようになった。




 <属性について>


 この魔力を持つ生物は、個体ごとに得意な属性がある。

 その属性は、曜日の闇火水無風土光である7つ。

 それに雷、氷、木、聖属性がある。

 4大元素属性に近い考え方かな?


 ただし、これだけでなく他の考え方もある。

 攻撃、防御、支援、回復と分けている流派など多様らしい。

 武道の流派と同じように、魔法にも流派があるようだ。

 元素が一番主流な為、曜日に使われているという。




 <魔法の使用方法>


 メサが使っている魔法は魔力操作。

 魔力を実際に動かして、属性へ変換後に発動。

 ほとんどの魔物がこの方法で使用している。


 次に一部の流派で使われる呪文の詠唱。

 魔法言語と呼ばれる文を魔力を込めながら詠唱することで発動。

 聖教国などで多く見られ、魔力操作が苦手でも、文さえ読めれば発動出来るのが人気である。


 最後に魔法陣。

 これは特殊で、魔力の内包された素材で描かれて陣に、魔力を込めると発動。

 魔法言語や古代文字などが読める前提で、さらに魔法陣にも詳しく無いと作ることはできない。

 魔力量が少ない人でも、陣さえ完成させれば、魔力の代わりに素材で魔法を発動させることも出来るようだ。

 魔法陣は、魔法の上位互換として魔術とも呼ばれているみたい。




 <種族による魔力量の差>


 一般的に、精霊と親和性の高い種族は、魔力量も多い傾向があると言われている。

 魔人→エルフ→ドワーフ→ホビット→人族→獣人→鱗人

 という順番だが、どの種族にも例外はある。

 個体により極端に多くなったり、ほとんど無かったりもする。




 <魔力とスキル>


 スキルを使用する時は、魔法と似て魔力を使うが面倒な手順が無く、使用量も少ない。同量の魔法と比較しても、かなり協力な技となっている。

 スキルに関しては公表しないことが一般的なので、不明な点が多い。



「大まかな説明なこんな感じですかね」

 そう言いながら、透明な玉がめ込まれた掌サイズの金属棒を7つ出した。


「ここでみなさんの属性を見てみましょう。一定以上の魔力を込めると属性がわかるようになっています」


 その7つは曜日にある属性で、特殊属性を判別する棒は高価で持ってないそうだ。

 孤児達が順番に並んで調べ始めた。


「風と水だ!」

「わたし火と無ね」

「ぼくは闇と土だった」


 それぞれ調べていくと持ってる属性は2つか3つが多いな。

 と思っていると。


「それは得意であるというだけで、効果は弱りますが他の属性も使えますよ」


 少しでも使えるのは便利だな。

 だが、魔力がわからん。

 俺と孤児が3人程残ってしまった。


「先生。魔力がわかりません」

「あたしも!」

「わからなーい」

「おしえてー」


 俺もわからなーい。


「大丈夫。これから教えます。その前に、終わった子達はここまでなので、あとは自由時間です」

 と他の子達を解散させた後、こちらに向き直った。


「さぁ続きです」


 4人共、先生と対面になるように座る。

 そして先生が1人ずつ手を握り魔力を流していく。

 最後に俺なんだが、魔力が体に入ってこない。

 先生が顔を赤くしながら魔力を流し込もうとするが、ダメそうだな。

 何か問題があるんだろうか?


「ノールさんだけ魔力が流せませんね……。他の子達は今のでわかりましたか?」

「「「はーい」」」

「では、その魔力をゆっくり体の中を巡らせてみてくださいね。それが出来るようになったら、さっきの棒で調べられますよ」


 そう言うと棒を触りに動き出した。

 お前ら成長早すぎだろ!?

 と思ったが、まだ巡らせられてないようだ。


「最低数日は練習が必要ですからね! 空いた時間に魔力を巡らす練習です!」

「ふぅ。ではノールさんの続きです。さっきやってて思ったのですが……」


 喉に骨が引っかかったようなセリフ。

 どうやら俺に魔力を流すと、俺に触れた箇所から徐々に消えていると言う。

 そんなこと言われてもわからないよ……。


「こんな事は初めてなので、少し調べてみたいと思います。久しぶりに面白い研究が……。デュフフフ」


 ヨダレ垂らしている。ちっこいインテリ先生はどこに行った!


「はっ!? 失礼しました。そんな訳で……3日後には出発すると思います。いつ戻るかはその時にでも!」

 と言ったらそそくさと帰ってしまった。


 結局わからず仕舞いか。

 俺だけじゃ何も出来ないし、探索者生活に戻るかな。


 ———————————————


 ペトラの館


「あら、マーガレットから連絡ね。何かしら?」


 紅茶を啜りつつ手紙を読んでみる。


「ぶっ!?」


 綺麗なテーブルに霧が吹き上がった。

 というのも手紙の内容がひどい。


『前略、お館様。

 暑い日も過ぎ肌寒くなり始めましたが、ご健勝でしょうか。

 私ごとですが、本日ノール殿に魔力の教導を行ったところ、私の魔力が削れるという反応がありました。

 この事例は調べたことが無かったので、一度孤児院を離れて文献を探ってみようと思います。

 つきましては3日後に出立をする予定ですが、1年程は時間をいただきたく思います。

 追伸。

 孤児達には、属性判別までしか行っておりません。代わりの教師は魔力操作からで問題無いかと思います。』


「あの子。やっぱりダメだったわね。こうなったら何言っても変わらないし、他の人をつけるしか無いわね」


 そうこぼすと、誰が適任か考え込んでしまった。


 ———————————————


 孤児院の畑

「兄ちゃんさ。先生しばらくどっか行くんだろー?」


 ジャンが話しかけてきた。

 この子は孤児のリーダー的な男の子で13歳。


「それがどうかしたか?」

「先生がいない間だけで良いからさ、何か教えてくれよ」

「何かって言われてもなぁ……。大きくなってココを出た後は何するんだ?」

「大体は傭兵か探索者だな。あとは農業の従僕とか。でも勉強教えてもらったから、その中から街中で働ける奴が出るかもな」


 誇らしそうにしている。

 他の子もこっちを見ている。

 そう言われてもなぁ……。


「俺が教えられること……棒術でもやってみるか?」


 言ってみると、孤児達が詰め寄ってきた。


「棒術ってなんだ!?」

「武器か?」

「戦い方教えてくれんの?」

「剣とか槍じゃないの?」

「なんか弱そうに聞こえるー」


 最後の2人は棒を舐めすぎだ。


「お前らな、棒術は便利なんだよ。刃物じゃないから持って入れる場所も多いし、警戒もされにくいんだ」


 そう返すと、みんなで顔を見返す。


「「「「それ教えて!」」」」


 と言うことで空いた日に教えることになった。

 俺も孤児に魔力を教えてもらえないかなー?

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