第26話 従魔ギルド2

 外に出て裏手に回ると、小さめの牧場と言えるサイズの広場があった。


「うわー。こんな広いとは思ってなかった」

「せやろ。大型の従魔もおるからな。あっちが厩舎や。うちの相棒見せたる」


 よくしゃべる子だ。なんか嬉しそうだな。

 少し歩くと平家の厩舎が見える。ただし、平家の割りにかなり高く7mくらいはあるか? その隣には柵だけのスペースもとられている。


「向こうの柵は規格外。普通は大型でも厩舎に入る。うちのもこっちにおるで」


 門もでかいし、中に入ったら支柱もぶっとい。


「この子が相棒のペーテちゃん。他の街におったときに使役したんや。ハーピーで風魔法が得意や」

「魔法が使えるのか。すごいね」

 と言ったら呆れられた。


「うせやろ? 魔物なんやから当たり前や。まさか……知らんかったのか?」

「初めて聞いた……。教えてくれ」


 おいメサ。震えながら頭叩くなよ。


「かまへんかまへん」


 カエデが姿勢を直す。


「ごほん! 魔物ちゅうんは、魔力がある動物です。魔力がある為か、動物より知恵がまわり狡猾な面もあります。そういうこともあって、危険度が高い。それに合わさって魔力を使うのがうまい。人系の種族は魔力が後天的に増加する傾向があります。しかも使わないと増えないし、増えても伸びしろは小さい。例外はおるけどな。でも魔物は生まれつき魔力量も多いから、本能的に使いやすいということです」

「わかりやすかった。ありがとう」

「めっちゃ恥ずいやん。おもろないわー。ちなみに浮きクラゲが浮いてるのは魔法って言われとる」

「お前それか! メサ。攻撃じゃない魔法使ってみて」


 プルプルしながら揺れると小さな水の玉ができた。水玉が落ちると代わりに土が盛り上がる。


「風や無いんか!? まさか土とは思わんかった。あとでマスターに知らせたろ」


 カエデが一人で驚いてる。


「ちなみにペーテちゃんは隠し球を持っとるんやけど、それはそのうちな。また来るなー。次は隣に行くで」

 そう言ってハーピーに手を振りつつ隣に移動。


「さっきのと此処がうちの使てる場所。此処の子は運搬が得意なんやけど、今はオカンに貸し出し中やな。岩石トカゲって種類で岩食いとも言われとる。本当は宝石が一番好きやけど、それをやったらナンボあっても足らん」

「宝石か。拾った安物だけど、これあげようか?」

 そう言って小指の先サイズの水晶を見せた。


「ほんま? ええんか?」

「そこまで価値無い奴だし、使い道も無いから良いよ」

「ま、まぁ。そこまで言うなら貰っておいたるわ。後から返せ言うても無いからな!?」


 そう言って上機嫌で水晶を見ていた。本当にトカゲにあげるんだろうか。


「ちゃんと食べさせてやれよ?」

「わ、わかっとる!」


 その後も軽く話をした。トカゲは男の子で生後2歳。卵から孵したそうだ。名前はケント。なんか聞いたことあるが、気のせいだろう。今度銀でも食わせてやろうか。


「メサちゃんはどこに住むん?」

「今の居る場所が空いてるから、そこで良いかと思ってる。というか、こいつの仕事があるからそこしかダメか」

「さよか。まぁ、従魔増えた時のために管理人さんには会っとき。こっちや」


 厩舎のそとに出て、外壁側へ行くと、大通りとは違う門があった。こっちもかなりでかい。


「おや。カエデちゃんか? 今日は仕事無いんじゃなかったのかい?」

「せや。たまたま新人見かけまして。気のいいうちが案内してるんです」


 めっちゃ丁寧に話してるんだけど。俺ってかなり格下扱いなんじゃね? 従魔ギルドは新人だから仕方ないのか。


「今日登録したノールです。よろしくお願いします」

「この人が管理人のキール爺さん。魔物に関してはマスターと同じくらい詳しい方や。おっさんキール爺さんに登録したの見せたって」

「あぁ。あいつは……。あれ?」


 見回してもいないな。どこいった?


「上のあれかい?」


 上……。


「おい! あんまり上がりすぎるなよ? 撃ち落とされても知らんぞー」


 声が届いたのかユラユラと降りてきた。


「珍しいもん見せてもらいましたなー。この子だったら。これかな?」


 キール爺さんがメサにある葉っぱを見せる触手を上げて受け取った。


「うむうむ。遠慮なく食べなさい」


 よく食べるものがわかったなと二人して考えていたようだ。それを見透かされたように教えてくれた。

 若い頃、浮きクラゲを見かけた時に1ヶ月程追いかけて調査したと言っていた。その時、毒草や毒を持つ魔物をよく捕食していたようで、それで釣ったこともあると言っていた。

 俺も野菜で釣った話をしたら、何かの毒があったのかもしれないという話だった。アレルギー対策型だったら反応しなかったかもしれんな。

 キール爺さんの話は面白く上手かったので、長居してしまった。浮きクラゲの新情報が入ったら話しに来よう。


 メサ。お前は帰ったら畑の水やりと保安だ。

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