第18話 ニールセンの街

 馬車を降りて入門用の列に並ぶ。農家の親子と話していたので、待ち時間は苦にならなかったが、1時間半ほど待っただろうか。親子の次が俺だ。


「次の者前へ。20代くらいの男性っと。身分証はあるか?」

「持ってません」

「それなら、この木板を持って右の列、最後尾に移動してくれ」

「え? 入れないの?」

「お前初めて来たのか? 身分証無いと時間かかるぞ。漏らさんように済ませとけ。戻ったら直接俺のところまで来い。」

 親子に可哀想な顔されて手を振っていた。ため息が出る。


 トイレを済ませて戻ったら、木板に何か書き加えて渡された。次はあっちか・・。

 そこからさらに1時間ほど。疲れたー。


「次の者前へ。んー。ここに来たのは初めてか。名前を言え」

「タカハシミノルです」

「ん? アッシム=ノールね。どこから来た?」

「東の山村から来ました」

「村の名は?」

「名前? 知らないけど……」

「なんだ。そうとう田舎から来たのか。アッシム=ノール名無しの山村っと。ここに来た目的は?」

「探索者か薬師のギルドで仕事しに来ました。あとは観光」

「仕事探しっと。この水晶に触れてくれ」


 透明で人工的な水晶に触ると、白く光り出す。


「お前真っ白だな。ははは。傭兵は向かんな。一応持ち物見せてね」


 身体チェックと持ち物検査をされて、頷かれる。


「刃物は街中で振り回すなよ。入門料は大銅貨5枚ね」


 と言われたので渡す。村でお金得ていてよかった。


「この木板が一時的な身分の代わりだ。無くすなよ。早めに身分証はとっておきな。探索者は外に行くだけなら便利だ。作っておけ。じゃあな色無し!」


 そう言われると後ろで護衛してた兵士に笑われた。なぜだ。


 とりあえず、近くの宿屋に行くも身分無しはダメだった。探索者ギルドの場所を聞いて、行くことにした。



 街の構造は、上から見ると、八角系の石壁に囲まれている。中心部はさらに壁で囲ってあり、外側は下街、内側は上街となっているそうだ。入ってきた所が東門。その大通りから横道に入って、一本上の中通りにギルドが集まっている。

 探索者ギルドはすぐに見つかった。靴とナイフのマークが目印だ。


 中に入ると広めな空間があり、奥にカウンターがあり、職員らしき人がいる。2階まで吹き抜けになっていて、何人かちらっと見えた。かなり高級そうな装備をしているな。俺は1階のほうが似合うか。うわっ、向こうで殴り合ってるし、近寄らんとこ。そう思いながら、喧嘩の反対側にある空いてるカウンターに向かう。


 メガネかけた細身のダンディーだな。


「すみません。探索者の登録をしたいんですけど」

「ふむ。身分証は?」

「えっと、持ってないので門でもらったのです」

 木板を渡す。


 そこから、登録の為に書類に書く必要があると教えてもらった。共通語しか許可されてないようなので、代筆をお願いし、なんとか登録完成! ちょっと質が良くなった木板に紐が付けられている。


「これより当ギルドの説明をします。時間がかかるので、隣のカウンターにある椅子にお座りください」

 とまだ時間かかるのか……。結局それから30分程説明が続き、さらに後日、探索者の心得という小冊子を読むように言われた。持ち出しは出来ない為、カウンターの一番端で読むようにと。


 この説明でわかったこと。

 1つ、階級は総合的な判断により昇級される。探索、採取、戦闘の3つを技術と知識で判断するが、実績に重きを置いている。

 11:最下級。街中の仕事のみで雑用しかない。

 10:初心者レベルに毛が生えた程度。街の近くしか行けないが、依頼で出かける時に料金がかからなくなる。この段階から弱い魔物の討伐が出てくる。

 9:脱初心者。小型の魔物や動物の多い地域への探索が始まる。ごく一部の森に入る許可が降りる。

 8:近隣の森や遺跡の調査などの許可が降りる。この段階から指名依頼が入るようになる。

 7:ベテラン。ここから中級と呼ばれる。中型の魔物(ハングリーウルフ等)を狩り始める。

 6:一般人の限界と呼ばれる階級。総合的に能力があり、依頼成功率が高い者。

 5:探索、採取、戦闘のどれかで大きな貢献をした者。

 4:ここから上級と呼ばれる。全ての能力が高い。

 3、2、1級を含む上級の情報は機密であり、昇級を受ける者だけ内容を知らされる。

 戦闘だけ得意な者は、7級あたりで傭兵ギルドへ移籍や併用することが多いようだ。


 登録から3ヶ月は無料の訓練が受けられるので、初心者なら出た方が良いと勧められた。

 やっと終わったと帰ろうとすると、職員のメガネダンディーに声を掛けられた。


「まず1年間。私、セルジオがノール氏を担当します。依頼を受けギルドに関する事を行う時は、必ず私のところに来てください。いない時はあらかじめ担当を用意するので聞くように。ではノール氏に良き探索を」

「はぁ、わかりました」


 すごい疲れた。


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