無能と呼ばれているお兄様!〜ハイスペックすぎるお兄様は学園では手を抜いているようですが、私のために本気をだしてくれるそうですよ?

はち

いやです、お兄様!

 「お前…次の試験の結果次第では留年だぞ…」


 担任の先生にそう告げられた。

 周りからはクスクスと笑い声が聞こえてくる。

 「全く……お前の妹は学園1位なのにどうして兄貴のお前は最下位なんだよ…」

 担任は呆れた顔でそう言った。


 「はぁ……すみません」

 俺――神沢 優(かみさわ ゆう)はそう言い自分の席へと戻った。

 これ以上ここにい続けると説教が長引くと思ったからだ。


 それにしても留年か……


 留年ってことはもう一度1年生をできるってことだよな?それはそれで楽でいいかもしれない。

 2年生になると行事も増えるし、授業も6時間から7時間授業へと変わる。正直面倒すぎる。

 6時間でも苦痛なのに7時間なんて……想像しただけで気が狂いそうだ。


 親は土下座でもしたら多分許してくれるだろう。

 俺はそんなことを考えながら眠りについた。(授業中)


     ◇



 放課後になった。

 携帯を見ると妹の――凛(りん)からLINEが届いていた。


 『お兄様!今日は買い出しの日なので先に下校しますね!気をつけて帰ってきてくださいね♡』


 文面だけ見るとまるでカップルのようだ。

 『了解した』


 と、俺は簡単に返事をして教室を出た。


 教室を出て歩いているとすれ違う生徒は俺の顔を確認するとヒソヒソと話し始めた。


 『おいあれって…凛さんの兄貴だよな?無能って呼ばれてる』

 『そうだな…どうしてあの完璧な凛さんと無能なアイツが兄妹なんだか……』


 無能――俺の学園でのあだ名だ。

 誰が初めにそう呼び始めたのかは知らないが、今では学園中に広まっている。


 凛は結構気にしてくれてるようだが、実際俺はなんとも思っていない。――だって本当の無能はお前らなんだから。



     ◇


 「ただいまー。」


 俺は妹と二人暮しをしている家の扉を開けた。

 現在両親は出張中である。月1くらいで母親か父親かが帰ってきてくれるのでこれといった問題は特にない。


 強いて問題があると言うなら母親が息子の俺を溺愛しすぎて、1度帰ってくると駄々をこねて帰ろうとしないとこだ。


 「おかえりなさい!お兄様!」

 満面の笑みでそう言ってくれるのが妹の凛だ。

 シミひとつない綺麗な肌に、大きな目、鼻筋が綺麗な完璧美少女だ。

 髪はボブカットで銀髪だ。

 生まれつき銀髪!なんてアホな話ではなく、俺が「銀髪ヒロイン可愛いな」と呟いた翌日に髪色が変わっていた。

 高校の校則的にはうちの高校はかなり緩いから大丈夫らしい。


 「ご飯にしますか?それともお風呂にしますか?それとも……ワタシにしますか?」


 身長が俺より低い凛は上目遣いでそう言ってくる。


 「それじゃ……凛にしようかな」

 「……はいっ!お兄様♡」


 そう言って凛は抱きついてきた。

 俺も優しく抱き返す。

 普通の兄妹ならありえない光景かもしれないが俺達からすると日常である。

 凛の甘い香りがする。このまま眠ってしまいそうだ。

 そう思ったとこで凛の体を離した。


 「そろそろご飯にしようかな」

 「……はい。お兄様♡」


 少しだけ凛は残念そうな顔をしたが、すぐに笑顔になりご飯の用意をしてくれた。


 晩御飯はカレーだった。

 凛の作る甘口のカレーは凄く美味しい。


 「あ、そうだ……」


 と、俺はいい今日の留年の話をした。


 「まぁもう一度1年生をできるなら俺はそれでもいいかなって思ってさ、何より楽だしな」


 俺は笑いながらそう言った。

 しかし、そこでスプーンの落ちる音がした。

 凛が涙を流していた。

 俺は何が何だかよく理解できなかった。


 「いやです……!私…!お兄様と同じ学年じゃなくなるなんていやです!!何がなんでもいやです!」


 凛はそう言いまた、抱きついてきた。

 俺は酷く後悔した。初めて凛を泣かしてしまった。


 「ごめん凛。妹を泣かせるなんて兄失格だな。絶対留年なんてしないように俺も"本気"だすよ」


 俺は凛の頭を撫でた。



     ◇



 次の試験の結果

 俺は全ての教科で100点を取り学年1位を取った。

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