『レグネ婆とエミルク』

────────────レグネばあとエミルク────────────


「婆、いける?」


「なんの、お茶の子さいさいじゃあ」


「───婆、重くないの」


「ん? コレかえ?」


「うん。婆、腰は曲がってないけど、頭真っ白だし、歳だって百ウン十歳なんでしょ?」


「ばかもん。あたしゃあ、現役ぴちぴちの十七歳じゃ。〝Teen-ager〟じゃ」


「そっか。うん。永遠のうんたらかんたらってヤツはわかったから。ほら、逃げちゃう」


「そりゃマズいの。何処じゃ? やっこさん何処へ行きよった!?」


「えーと、あそこ。10字の方向、3つ先の角を曲がろうとしてる」


「でかした!! エミルク坊はほんにええ子じゃのうっ」


「うん」


「──ンの乙女の敵がッ、火竜ファイアドレイクのレグネーヴァから逃げ果せると思うたかッッ。観念せい!!!」


 ばあはそう気炎を吐いて、愛銃ならぬ愛砲である真っ赤な奇環砲をガシャンと砲撃姿勢を取る。無骨で、とても重そうな〝お化け銃〟を小脇に抱えてゆるぎもしない立ち姿。


 物持ちがいいから、色落ちし草臥れた前掛けに真っ白な引っつめ髪。


 僕の大好きな婆のいつもの姿で、今このときには、



 格好の良い、正義の味方。




「────………」




「悪いもん退治は終いじゃ。帰るぞ、エミルク!!」




 僕のヒーロー。



「うん。ねえ婆、今日の晩ごはんってなに?」


「そうじゃねえ……」


「僕ね─────!!」




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