『兄と友』
十分にスナップを効かせたサイドスローで投げられた花束は狙い通りに墓石に当たる。こめられた悲憤とは裏腹に、くしゃりと軽い音を立ててた。
「精々喜べよ、おめえの大事な大事なカイトが摘んだ弔花だ」片頬を歪めて言う。
「
わかるか?
顔くっしゃくしゃにしてレイ兄ぃレイ兄ぃって笑ってたアイツは、もうおめえの弟のカイトじゃ居られねえのさ。
カイトはな、〝
危ねえトコだったよ。
十も離れた弟残して逝っちまうような大馬鹿野郎が、何処の誰に聴いても勇者さま万歳だの、世界を救った大英雄だのと。
まったく大したもんだよ。気ィ抜いたら笑っちまいそうでよ、必死に
きつく噛み締めた
「なんてザマだよ。なあ」
らしくないと思う程に今日は舌が回る。怒りも過ぎれば、饒舌になるってのはおめえの言ったとおりだったな。
「レイ。
おめえを今すぐ棺から引き
知ってるかよ? おめえが家を出てから、アイツは一回も泣いてねえ。空の上から強くなったなって褒めるか? 泣き虫カイトだぞ? 胸貸して背中叩いてやんのは
何度でも言ってやる。
カイトはな、もうカイトのままじゃ生きられねえんだ。
〝身命を
ワケわかんねえ理屈で
聴いてんのかよ、なァ─────ッ!!!」
風も、草木も、虫も、空も、花も。眠る
「─────」
溢れ荒ぶるマナが、花束が崩れた拍子に散った花弁を舞い上げる。
高く。応えのない
「───翼果よ、運べ。花信よ、届け。
小さな花の嵐のただなかで立ち尽くす勇者の
「
どれだけ掛かろうが、必ず虹を掛ける。虹が掛かったら、カイトを連れて会いに行く。
だから、レイ。絶対
.
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