第38話 行方不明
三人はすぐに食堂で寝ていた長孝達を起こした。
「長孝、起きてくれ!」
「冬湖ちゃん、起きて!」
そして四人が起こされた。
寝ぼけた様子の長孝が晃太に尋ねた。
「あっ、黒宮先輩なんっすか?」
晃太が長孝に言った。
「長孝、起こしてすまない。麻衣子達がどこにいるか知らないか?」
長孝が晃太に言った。
「えっ?堀川先輩ならそこにいるっす?あれ?」
寝ぼけた様子の長孝が食堂の中を見渡した。
何度も食堂の中を見渡した後で晃太に言った。
「あれ?堀川先輩いないっすね?」
晃太が長孝に尋ねた。
「長孝?俺達が食器を取りに行ってる間に何があった?」
長孝が晃太に言った。
「先輩達が出ていった後、急に疲れて立ってるのが辛くなったんす。それで堀川先輩の許可を貰ってこの席に座ったんです。それから後は覚えてません。」
三緒が冬湖に尋ねた。
「冬湖ちゃん、何があったのか教えてくれない?」
冬湖が三緒に言った。
「羽部君が席に座ったらすぐに眠って、その後急に私も疲れてしまったんです。それを麻衣子さんに言ったら座ってていいよって言ってくれましたので、私も休ませてもらいました。それで今起きた所です。」
三緒が亜美に尋ねた。
「亜美ちゃんも教えてくれる?」
亜美が三緒に言った。
「はい、長孝さんと冬湖さんが眠った後で、私も急に疲れちゃったんです。それで麻衣子さんに言って食堂の席に座って休ませてもらいました。私もそのまま眠ってしまったみたいです。」
三緒が亜美に言った。
「となると亜美ちゃんが最後に席に座ったのね。何か気づいた事とかないかな?」
亜美が三緒に言った。
「すいません、座った後の事は何も覚えていません。」
最後に三緒が七緒に尋ねた。
「ちょっと七緒?何があったの?」
七緒が三緒に言った。
「えっ?何が?ずっと寝てたから分かんない?」
七緒はずっと寝ていた様子で何も覚えていなかった。
冬湖が三緒に尋ねた。
「あの三緒さん?何かあったんですか?」
晃太がみんなに言った。
「さっきから麻衣子と由香と美咲が見当たらないんだ。」
四人とも驚いた様子で言った。
「えっー!!」
冬湖が心配した様子で晃太に尋ねた。
「麻衣子さん達はどこに行ったんですか?」
晃太がみんなに言った。
「分からない。だからみんなを起こしたんだ。」
長孝が晃太に言った。
「神社の中を見て回ってるんじゃないっすか?」
晃太が長孝に言った。
「その可能性も十分にある。ただ俺達が戻ってきた時、まだカレーやサラダはできていなかった。料理が作りかけで放置されていたんだ。麻衣子や由香が調理中の料理をほっぽり出すのはおかしくないか?」
冬湖が晃太に言った。
「確かに麻衣子さんがそんな事するとは思えませんね。」
晃太がみんなに言った。
「ちょっと大げさかもしれないが、みんな麻衣子達を探してくれないか?まずは神社の中を探して欲しい。」
みんなが頷いた後で、長孝と冬湖と亜美と七緒がすぐに食堂から出ていった。
食堂を出ていこうとする三緒を、晃太が呼び止めた。
「三緒さん、ちょっといいですか?」
三緒が振り返って言った。
「晃太君?どうかした?」
すると優斗も食堂に残っていた。
優斗が三緒に言った。
「三緒さん、二実さんに連絡した方がいいと思います。」
三緒が優斗に言った。
「そうね、確かに二実にも知らせないと。」
優斗が三緒に言った。
「いえ、二実さんには今回の事を確認しておいたいいと思うんです。」
三緒が優斗に言った。
「確認ってどういう事??まさか!!」
優斗が三緒に言った。
「二実さんや晴南ならやりかねないって意味です。」
晃太が三緒に言った。
「あくまで可能性の一つです。」
すぐに三緒はポケットからスマホを取り出すと二実に電話を掛けた。
優斗が三緒に言った。
「三緒さん、聞こえるようにスピーカーモードにしてもらえませんか?」
三緒が優斗に言った。
「ええ、いいわ。」
三緒が晃太と優斗に聞こえるように、スピーカーモードに変更した。
そして数コールの後で二実が電話に出た。
「はあーい、三緒?どうかした?」
三緒が二実に尋ねた。
「ねえ?そこに晴南ちゃん達いる?」
二実が三緒に言った。
「うん、いるよここに?」
三緒が二実に言った。
「なら晴南ちゃん達にも聞こえるようにスピーカーモードにしてくれない?」
二実が三緒に言った。
「えっ?分かった。」
そして二実のスマホもスピーカーモードに変更されたようだった。
それを確認すると三緒が二実に言った。
「二実、ずいぶん手の込んだ悪戯をしてくれたわね?」
二実が三緒に尋ねた。
「はあ?何言ってるの?」
三緒が二実に言った。
「悪戯よ?またわるふざけをしてるんでしょ?」
二実が三緒に尋ねた。
「だから悪戯って何よ?」
優斗が晴南に尋ねた。
「晴南が犯人じゃないよね?」
晴南が晃太に言った。
「ちょっと優斗?!!何よその言い方?私が何かやましい事をしたみたいな言い方じゃないの?」
三緒が二実に言った。
「それじゃ、やっぱり二実の悪戯じゃない?早く出て来なさいよ!!この近くにいるんでしょ?」
二実が三緒に言った。
「何を言ってるの三緒?そもそもこの近くってどこの事?」
三緒が二実に言った。
「封木神社に決まってるでしょ?」
二実が三緒に言った。
「あのさあ、いる訳ないでしょ?今私達は明井田のホームセンターにいるんだよ?明井田のホームセンターに行けって言ったのは三緒でしょうが!!」
三緒が二実に言った。
「それ本当??嘘だったら許さないよ!!」
三緒が二実に言った。
「もう何なの三緒??さっきから??」
すると優斗が二実に言った。
「二実さん?」
二実が優斗に言った。
「えっと、優斗君で良かったかな?」
優斗が二実に言った。
「はい、優斗です。二実さん、ホームセンターの店内に入って貰えませんか?」
晴南が優斗に言った。
「ちょっと何なの優斗?」
優斗が二実に言った。
「お願いします。」
二実が優斗に言った。
「分かった。」
しばらくコンクリートの上を移動している音が聞こえた。
その後でホームセンターの店内の雑音が聞こえてきた。
そして店内放送が聞こえてきた。
「トインズグループが午後5時をお知らせします。」
そのアナウンスの後、プッ、プッ、プッ、ポーンという音が流れてきた。
二実が優斗に言った。
「優斗君、もういいかな?店の中だと声が聞きにくいから外にでていい?」
優斗が二実に言った。
「はい、二実さん、もう大丈夫です。」
優斗と晃太は深刻そうな顔をしていた。
今度は二実が聞いてきた。
「それで一体何があったの?」
すると優斗が二実に言った。
「二実さん、すぐに戻って来てください!麻衣子達がいなくなりました!」
二実が慌てて聞き返した。
「えっ?いなくなった?どういう事?」
三緒はこれまでの経過をすべて二実に話した。
二実が三緒に言った。
「分かった!!すぐに戻るから!!三緒達は神社の中を探してみて!みんなすぐに戻るよ!!車に乗って!!」
「はい!」
そして電話が切れた。
その後晃太と優斗と三緒は長孝、冬湖、亜美、七緒の七人でまず第二社務所の中をくまなく探したが誰もいなかった。
次に第一社務所の中を調べたがやはり誰もいなかった。
次に神社の敷地内を手分けして調べてた。
神社の敷地内を何度も探したがやはり麻衣子達を見つける事が出来なかった。
そこで捜索範囲を少し広くする事にした。
するとすぐに手がかりを見つける事ができた。
亜美が手がかりを見つけてみんなを呼んでいた。
亜美がみんなを連れてきた場所は封木神社の裏側にある封木山の山頂に向かう山道で神社の敷地から少し登った所だった。
亜美がみんなに言った。
「みんな来てください!!ここです。」
晃太が亜美が指差した場所を見つめた。
「ハンカチだな。」
亜美が指差した所には紫色のハンカチが落ちていた。
冬湖がみんなに言った。
「それ、由香さんが持ってたハンカチです。」
晃太がそのハンカチを拾った。
すると所どころに足跡が残っている事に気がついた。
晃太がみんなに言った。
「できたばかりの足跡がある。上に向かって歩いていったみたいだな。人数は恐らく三人。」
冬湖が晃太に尋ねた。
「それ麻衣子さん達の足跡なんですか?」
晃太が冬湖に言った。
「足跡の大きさがそんな大きくない。三種類の足跡がある。足跡が大きいのでも24センチぐらいだ。靴のサイズから考えると男の可能性は低い。たぶん女子三人が山の上に向かって歩いて行ったんだろう。」
冬湖が晃太に尋ねた。
「という事は麻衣子さん達は封木山の山道を登っていったんですか?」
晃太が冬湖に言った。
「この足跡を見る限りはそう考えるのが自然だな。」
長孝が晃太に言った。
「すぐに後を追いかけましょうっす!」
晃太がみんなに言った。
「もうかなり暗くなってきた。夜の山道は危険だ。二実さんが戻ってくるまで待機してよう。」
三緒がみんなに言った。
「そうね、晃太君の言うとおり今は二実達が戻ってくるまで待ちましょう。」
みんなが頷き第二社務所の中に戻っていった。
優斗と晃太はすぐには戻らずに考え込んでいた。
晃太が優斗に言った。
「訳が分からないな。」
優斗が晃太に言った。
「本当だね。」
晃太が優斗に言った。
「俺達は第二社務所の倉庫で食器を探していた。あの時俺はロビーにいて、置いてある荷物の山の中を探していた。あの時誰も廊下を通らなかった。二階への階段も玄関もロビーのカウンターから見える位置にある。そして外への出入口はあの一ヶ所だけだ。」
優斗が晃太に言った。
「食器を探してたから誰かが通ったのを見逃した可能性はないかな?」
晃太が優斗に言った。
「いくら荷物の中を漁ってたとはいえ、誰かが通れば絶対に気がつく。」
優斗が晃太に言った。
「そうだよね。」
晃太が優斗に言った。
「食堂はその廊下の奥にある。麻衣子達の部屋は更にその奥だ。第二社務所の出入口はロビーの前の一ヶ所だけ。そして食堂に戻ってからはずっと出入口の扉を開けっ放しにしていたよな?」
優斗が晃太に言った。
「うん、それは僕も見てた。三緒さん以外誰も通らなかったよね。」
晃太が優斗に言った。
「そうすると麻衣子達はどうやって外に出たのかって話になる。」
優斗はしばらく黙った後で晃太に言った。
「麻衣子達は窓から外に出たとしか考えられないよね。」
晃太が優斗に言った。
「ああ、俺は二実さん達がこっそり戻ってきて、俺達を驚かす為に麻衣子達を窓から連れて行った可能性を疑ってたんだが。」
優斗が晃太に言った。
「うん、僕もそう考えてた。でもそれは違うって分かった。」
優斗が晃太に言った。
「トインズホームの時報が流れてた。二実さん達は間違いなく電話した時に明井田にいたって事だよね。明井田のトインズだとここから一時間以上はかかるよね。」
晃太が優斗に言った。
「ああ。俺達が食堂を離れたのが午後4時20分頃、そこから麻衣子達を連れ出して午後5時に明井田の店内に到着するなんて不可能だ。」
優斗が晃太に言った。
「店内に入ってくれって頼んだのは僕だから。事前に時報の音声を準備するのは不可能だと思うよ。つまり二実さんと晴南は今回の失踪には無関係って事だよね。」
優斗が晃太に言った。
「誘拐って可能性はないかな?窓から不審者が入ってきて麻衣子達を拐っていったとか?」
晃太が優斗に言った。
「多分それはないだろう。もし不審者が窓から入ってきたなら、大声で俺達を呼ぶはずだ。だが俺達はあの時大声や大きな物音は聞いていない。それに冬湖達が隣で寝てるんだ。起きている人間より寝ている人間を拐う方が簡単じゃないか?」
優斗が晃太に言った。
「うん、そうだよね?だけどそうなると。」
晃太が優斗に言った。
「ああ、麻衣子達は料理を作っていたのをほっぽり出して、三人で自分の荷物も持たずに窓から外に出て封木山を登っていった事になる。」
優斗が晃太に言った。
「訳が分からないね。」
晃太が優斗に言った。
「とにかく俺達も一旦休もう。ここで考えてても仕方がない。」
優斗が言った。
「そうだね。」
晃太達も第二社務所の中に入っていった。
まだ日暮れ前だとゆうのに、周りは薄暗くなっていた。
そこにピカッと一瞬だけ空が明るくなった。
そして間髪おかずに大きな轟音が轟いた。
ゴロゴロ!!ゴロゴロ!!
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