第35話 土曜日
土曜日の正午になった。
晴南達は二実の約束通りお泊まり会をする為に二実の車と三緒の車に分乗して山あいにあるとある場所に向かっていた。
そして二実と三緒の車は九木礼町の外れへとやって来た。
二実が大きな声で言った。
「みんな着いたわ!」
晴南達がクルマから降りてきた。
麻衣子が二実に尋ねた。
「二実さんここどこですか?」
二実が麻衣子に言った。
「ここは封木(ふうき)神社よ?」
晴南が二実に言った。
「ええっ!ここ封木(ふうき)神社なんですか?」
二実が晴南に言った。
「そうよ。もしかしてここに来たの初めて?」
晴南が二実に言った。
「いえ、来た事はあるんですけど、封木神社って荒れ果ててるイメージだったし、こんなに綺麗じゃなかったと思います。」
二実が晴南に言った。
「修復工事が終わったばっかりだからね。」
封木神社は九木礼町の中心部から離れた場所にあり、封木山(ふうきやま)の山裾にある神社で歴史のある神社だった。
最も最近まで管理する人間がいなかった為に荒れ果てていたが。
晴南が二実に尋ねた。
「ここでお泊まり会をやるんですか?」
二実が晴南に言った。
「そうよ。ここなら自由に使えるからね。」
麻衣子が二実に尋ねた。
「えっ?修復したばかりなんですよね?使っちゃって大丈夫なんですか?」
二実が麻衣子に言った。
「大丈夫よ!自由に使ってもらって。とある秘密があるからね。」
麻衣子が二実に聞き返した。
「とある秘密?」
三緒が二実に言った。
「二実?もったいぶらなくてもいいでしょ?」
三緒がみんなに言った。
「この神社さ、二実が引き継ぐ事になってるの。」
麻衣子が二実に尋ねた。
「そうなんですか?」
二実が三緒に言った。
「もう三緒?速攻でばらさないでよ?」
三緒が二実に言った。
「別に隠す必要もないでしょ?それよりみんなを案内してよ。」
二実が三緒に言った。
「分かってるわ。みんな着いてきて。」
その後、晴南達は神社の中の社務所の中に案内された。
封木神社の境内はかなり広く、そしてどの建物も修繕されて綺麗な建物になっていた。
南側正面入口の所に大きな鳥居があり、そこから北に向かって参道が設けられていた。
その北側に手水社(てみずしゃ)(参拝者が手を洗うための場所)と舞殿(まいどの)(神様のために曲を奏でるための場所)があり、更にその北側に拝殿(はいでん)(参拝者が神様を崇めるための場所)があり一番北側に本殿があった。
舞殿の西側に新しく建てられた第一社務所と第二社務所の二つがあった。
神社の西側は広い広場になっていた。
第一社務所は木造の平屋の建物でそれほど大きくはなかった。
一方の第二社務所は木造二階建ての大きな建物であった。
晴南達は第二社務所までやって来ると、玄関の入口の引き戸を開けた。
第二社務所の中は床と天井が木目調で壁は白く塗装されており、とても綺麗な内装だった。
そして建物の一階廊下を進んで行った。
一階の廊下の奥までやってくると二実が5号室の部屋の扉を開けた。
晴南達は5号室の中に入っていった。
5号室は和室の大部屋になっており、畳20畳ほどの広さがあった。
部屋の床には畳が敷かれており、壁は白く天井は木目調になっていた。
窓の手前には障子が取り付けられており、外光を遮れるようになっていた。
二実がみんなに言った。
「どう?ここが今日泊まってもらう部屋よ?」
麻衣子が二実に言った。
「結構広いですね?」
二実が麻衣子に言った。
「大部屋だからね。20畳あるから広さは充分だと思うよ?」
二実がみんなに尋ねた。
「どう?気に入ってくれた?」
晴南が二実に言った。
「はい!」
三緒が二実に尋ねた。
「ねえ二実?この社務所なんなの?なんか旅館みたいなんだけど?」
二実が三緒に言った。
「ああそれはね、ここを本物の旅館にしたいと思ってるからよ?」
三緒が驚いて二実に言った。
「えっ!??つまり神社を旅館にするつもりなの?」
二実が三緒に言った。
「あくまで神社がメインよ。旅館は付属品。それにゆくゆくはって話。この神社を任された以上は全力で取り込みたいから。」
三緒が二実に言った。
「時々思うだけどチャレンジャーよね二実って?」
二実が三緒に言った。
「そう?」
すると晴南がみんなに言った。
「ねえ、みんなでこの神社を見て回らない?」
美咲が晴南に言った。
「あっ、私も見て回りたい。」
そして麻衣子が二実に言った。
「二実さん?神社の中を見て回ってもいいですか?」
二実が麻衣子に言った。
「もちろんいいわよ。ただし本殿には入らないでね?」
麻衣子が二実に言った。
「分かりました。」
そして晴南達は5号室に荷物を置くと、部屋の外に出て行った。
三緒が二実に尋ねた。
「それでこの後はどうするつもりなの?」
二実が三緒に言った。
「ノープランよ?何も考えてないわ。」
三緒が二実に言った。
「ちょっとこのお泊まり会の責任者は二実でしょ?ちゃんとやらなきゃダメじゃない?」
二実が三緒に言った。
「あのね?気の向くままに食べて、気の向くままに遊んで気の向くままに寝るの?それがお泊まり会の醍醐味よ?自由きままに過ごすのがいいんじゃない!決められたスケジュールをこなす所のどこに楽しみがあるって言うの?」
三緒が二実に言った。
「いやそうかもしれないけど、段取りがあるでしょう?夕飯の準備はしとかないとまずいでしょ?」
二実が三緒に言った。
「あっ、確かに夕飯の準備はしといた方がいいか?」
三緒が二実に言った。
「当たり前でしょ?それで夕食は何がいいと思う?」
二実が三緒に言った。
「グルグルマートのノリ弁当でいいんじゃない?」
三緒が二実に言った。
「グルグルマートのノリ弁当って??そんな物にするつもりなの?」
二実が三緒に言った。
「三緒?聞き捨てならないわね。グルグルマートのノリ弁当が不味いって言いたいの?グルグルマートのノリ弁当はなかなか美味しいわよ?」
三緒が二実に言った。
「そうじゃなくて、自分達で作った方が食べた時に美味しいし、みんなでわいわい作れば楽しいでしょって事?」
二実が三緒に言った。
「ああ、なるほどね。それなら私じゃなくてみんなに聞いた方がいいんじゃないの?」
三緒が二実に言った。
「そうね。」
二実が三緒に言った。
「頑張って作ってね!私も影から応援してるから!」
三緒が二実に言った。
「ちょっと手伝わないつもり?」
二実が三緒に言った。
「知ってるでしょ?私料理苦手なの。私が手伝ったら、食材が無駄になっちゃうでしょ?私じゃみんなが困った時にフォローできないでしょ?」
三緒が二実に言った。
「だめよ?さっきも言ったけどこのお泊まり会の責任者は二実でしょう?責任者としてちゃんと仕事をしてもらうわよ!!」
二実が三緒に言った。
「もう、頭が固いわよ三緒?」
三緒が二実に言った。
「当たり前の事を言ってるだけでしょ?」
すると5号室に晴南が戻ってきた。
二実が晴南に尋ねた。
「あれ!晴南ちゃん?もう見終わったの?」
晴南が二実に言った。
「いえまだなんですけど?二実さんに一つ聞きたいん事があるんですけど?」
すると晴南が二実に近づいて耳打ちをした。
晴南の話を二実が頷きながら聞いていた。
二実が晴南に言った。
「確か倉庫の中にあったと思うわ?」
晴南が二実に言った。
「それじゃあ一つお願いがあるんですけど?」
晴南が再び二実に耳打ちをした。
二実も頷きながら答えた。
「うん、うん?オッケー!別にいいよ!それじゃあ早速行こっか?」
二実はそう言うと晴南の手を引っ張って部屋の外に出て行こうとした。
「三緒?ちょっと出かけてくるね?すぐに戻るから!」
二実はそう言うと晴南を連れて部屋の外に出て行った。
「ちょっと二実?」
三緒があっけにとられている間に二実と晴南は建物の外に出ると車に乗って出かけてしまった。
三緒がため息まじりに言った。
「もう気分屋なんだから?」
その後三緒は麻衣子達に夕飯の希望を聞こうと麻衣子達を探していた。
そして三緒が第一社務所の前にやって来ると、麻衣子達がやってきた。
麻衣子が三緒に尋ねた。
「あれ?二実さんはどこですか?」
三緒が麻衣子に言った。
「それがね?晴南ちゃんを連れてどこかに出かけちゃったのよ?」
麻衣子が三緒に言った。
「えっ?晴南も一緒に出かけたんですか?」
美咲が大きな声で言った。
「もう晴南ったら、自分から神社の中を見て回ろうって言ったくせにどこに行ってるのよ?」
三緒がみんなに言った。
「でもちょうど良かった、みんな?今日の夕飯何がいい?」
麻衣子達は希望のメニューを三緒に言った。
「手巻き寿司がいいです。」
「冷やし中華とかどうですか?」
「カレーがいいです。」
「アイスクリームがいいわ。」
すると七緒が三緒に言った。
「グルグルマートのノリ弁当がいい。」
三緒が七緒に言った。
「もう七緒?二実と同じ事言わないでよ? 」
七緒は訳が分からない様子で言った。
「えっ?」
三緒が七緒に言った。
「あっごめんこっちの話、いい七緒!みんなで一緒に作って食べた方が絶対に美味しいからお弁当や惣菜を買ってくるってのはダメよ?」
七緒が三緒に言った。
「えーそんなー?」
麻衣子がみんなに言った。
「ねえみんな?ここはカレーにしとかない?」
冬湖が麻衣子に言った。
「カレーですか?」
麻衣子が冬湖に言った。
「うん、カレーとサラダを作ってデザートをアイスクリームにしようかなって?カレーならみんな好きだと思うし。」
冬湖が麻衣子に言った。
「そうですね、私もカレーでいいと思います。」
亜美が麻衣子に言った。
「みんなでカレーを作りましょう。」
だが美咲が麻衣子の案に反対した。
「嫌よ!!カレーなんて!!」
麻衣子が美咲に尋ねた。
「ちょっと?なんで美咲が反対するのよ?」
美咲が麻衣子に言った。
「アイスクリームがいいって言ってるでしょ。」
麻衣子が美咲に言った。
「だからデザートをアイスクリームにするって言ってるじゃない?」
美咲が麻衣子に言った。
「違うわ!!夕飯はアイスクリームだけにしてって言ってるの?」
麻衣子が美咲に言った。
「何言ってるの美咲?アイスはデザートでしょ?主食として食べるもんじゃないでしょ!!」
美咲が麻衣子に言った。
「カレーもサラダも要らないわ、私は主食でバルゲンダッツのアイスクリームをお腹一杯食べたいの!」
麻衣子が美咲に言った。
「夕飯をアイスクリームだけにしたらお腹壊しちゃうでしょ?」
美咲が麻衣子に言った。
「大丈夫!それぐらいの苦難乗り越えられるから!」
麻衣子が美咲に言った。
「もう美咲!そんな事したらみんなお腹壊しちゃうでしょうが!!無茶な事言わないでよ!!デザートをアイスクリームするって提案してるんだからそれで妥協しなさい!!」
美咲が麻衣子に言った。
「夕飯何がいいって聞かれたから答えただけでしょ。」
麻衣子が美咲に言った。
「常識の範囲に決まってるでしょ!!」
すると心配そうな様子で亜美が麻衣子と美咲に言った。
「麻衣子さん、美咲さん、喧嘩しないでください。」
麻衣子が亜美に言った。
「私もこんな下らない事で喧嘩したくないわ。」
亜美が美咲に言った。
「美咲さん、喧嘩はダメです。」
美咲が亜美に言った。
「嫌よ?アイスクリームがいいんだから、妥協なんてしないわよ?」
亜美が涙目で美咲に言った。
「美咲さん。」
亜美の顔は今にも泣き出しそうになり、美咲が諦めた様子で言った。
「もう分かったわ!私が悪かったわ!お願いだから泣きそうな顔をしないで!!私もカレーでいいから麻衣子!」
麻衣子が美咲に言った。
「それじゃあカレーにするわね?」
すると冬湖が麻衣子に言った。
「あっ、でもまだ晴南さんの意見を聞いていませんよ?」
麻衣子が冬湖に言った。
「あっそうだね。晴南が帰ってきたら聞かなきゃね?」
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