第33話 リフト

次の日の午後4時半過ぎ、緑が生い茂っている山の中に二人の少女の姿があった。


少女達はスキー用のリフトに乗って山の上へと向かっていた。


その少女の一人である美咲が隣に座っている麻衣子に尋ねた。


「ねえ、私達何してるのかしら?」


麻衣子が美咲に言った。


「いや、見れば分かるでしょ?リフトに乗ってるわ。それよりそろそろ山頂よ?降りる準備をしといてよ。」


美咲と麻衣子がリフトから降りて九木礼山(くきれいざん)の山頂に降り立った。


九木礼山(くきれいざん)の山頂はかなり広い場所であった。


6月という事もあり山の斜面はほとんどの場所が緑で覆われており、頂上部分もかなりの部分が緑で覆われていた。


九木礼山の頂上にはいくつかの建物が存在した。


山頂レストランとリフトの乗降駅そして鉄塔とスキーコースの大きな案内板が設けられていた。


スキーシーズンにはここから各コースに滑れるようになっていた。


山頂からは九木礼の町並みを一望する事ができた。


晴南と由香と冬湖と亜美がすでに頂上にやって来ていた。


麻衣子と美咲も晴南達の所にやって来た。


晴南が麻衣子に尋ねた。


「二実さんは?」


麻衣子が晴南に言った。


「ちょっと遅れるから頂上で少し待っててって言ってた。」


晴南達は二実が来るまで山頂から見える絶景を楽しむ事にした。


亜美が麻衣子に尋ねた。


「麻衣子さん、九木礼中学はどこですか?」


麻衣子が景色を見渡した後で指を指しながら亜美に言った。


「えーと、中学はあの白っぽい建物ね?」


亜美が麻衣子に言った。


「わあ!あれですか?すごく小さいんですね。」


晴南が麻衣子に言った。


「麻衣子!見て!!見て!!さっきまでいた九木礼温泉の建物があんなに小さくなってるわ!」


麻衣子が晴南に言った。


「ちゃんと見えてるから!」


冬湖が由香に言った。


「今日はお天気もいいですし、絶好の登山日和になって良かったですね?」


由香が小さな声で冬湖に言った。


「は、はい。本当に良かったです。」


晴南がみんなに言った。


「いやー、夏に九木礼山に来るのも悪くないわね!スキーではよく来るけど。」


亜美が晴南に言った。


「夕焼けをここから見たら綺麗そうですね?」


晴南が亜美に言った。


「ああ、それいいわね?せっかくだから夕焼けを見てかない?」


麻衣子が晴南に言った。


「ダメダメ、今日はそんな時間はないでしょ?」


晴南が麻衣子に言った。


「えー、見てから帰りましょうよ?」


麻衣子が晴南に言った。


「ダメだって!夕焼け見て帰ったら、家に帰るの夜になっちゃうでしょ?」


晴南が麻衣子に言った。


「麻衣子?そこを何とか?」


麻衣子が晴南に言った。


「ダメよ!!夜帰りなんかしたら鳥岩先生のカミナリが落ちるわよ?それでもいいの?」


すると晴南が首を振りながら麻衣子に言った。


「それはいや!」


麻衣子が晴南に言った。


「でしょ?またの機会にした方がいいよ。」


晴南が麻衣子に言った。


「しょうがないわね?今回は諦めるわ。」


すると美咲が晴南に言った。


「ねえ?ちょっと晴南?」


晴南が美咲に尋ねた。


「何?美咲?」


美咲が晴南に尋ねた。


「ねえ晴南はこれでいいの?」


晴南が美咲に言った。


「仕方ないわ、鳥岩先生に怒られるのも嫌だし、今回は諦めるわ。」


美咲が晴南に言った。


「夕焼けの事じゃないわ!そうじゃなくて、今日の目的の方よ?」


晴南が美咲に聞き返した。


「目的?」


美咲が晴南に尋ねた。


「私たちは今日ここに何をしに来たのよ?」


晴南が美咲に言った。


「みんなで山登りをしにきたんでしょ?」


美咲が晴南に言った。


「もう何を言ってるのよ!!プリクラを撮りに来たんでしょう!!」


晴南が美咲に言った。


「ああ!そうだったわね。でもそれがどうかした?」


美咲が晴南に言った。


「どうかしたって?晴南は何も感じないの!!いい、私は明井田までプリクラを撮りに行こうって提案したのよ?!」


美咲が話を続けた。


「なんでプリクラを撮りに行こうって話をしたら、九木礼山に登山する事になるのよ??!なんでリフトに乗らなきゃならないわけ?!!」


晴南が美咲に尋ねた。


「えっ?美咲?もしかして歩いて山頂まで登ってきたかったの?」


美咲が大声で晴南に言った。


「そういう事を言いたいんじゃないの!!普通プリクラ撮りに行くのに登山なんかしないでしょって話よ?」


晴南が美咲に言った。


「しょうがないじゃない?九木礼町でプリクラの機械があるのは山頂レストランミールのゲームコーナーだけなんだから。」


美咲が晴南に言った。


「私は普通にプリクラを撮りたかったのよ!!それにさっきのカラオケも変な感じだったし。」


晴南が美咲に言った。


「ええっ?変だった?ちゃんと九木礼温泉でカラオケ歌ってたでしょ?」


美咲が晴南に言った。


「あのねえ!!私は浴衣着ながら旅館の大広間でカラオケしたかった訳じゃないの!!!」


晴南が美咲に言った。


「でもあんな広い場所を貸し切りで歌えたのよ?豪華じゃない。」


美咲が晴南に言った。


「シーズンオフでお客がいなかっただけでしょう!!」


晴南が美咲に言った。


「いつも同じ所で歌ってても飽きるでしょ?たまには違う雰囲気の場所で歌うのも新鮮味があって面白いじゃない?」


美咲が晴南に言った。


「私はそんな面白さ求めてないの!!普通にカラオケ行きたかっただけなの!!普通にプリクラを撮りたかっただけなの!」


晴南達は授業が終わると部活動をせずにそのまま下校した。


そして二実と合流すると、二実の車で九木礼山(くきれいざん)へと向かった。


九木礼山(くきれいざん)にはスキー場がありその近くには九木礼温泉(くきれいおんせん)という温泉旅館もあった。


二実は晴南達との約束を果たすために晴南達を九木礼山へと連れて来たのだった。


まず九木礼温泉でカラオケをしてその後で山頂にあるレストランのミールにいってプリクラを撮る予定であった。


亜美が美咲に言った。


「美咲さん、喧嘩は止めてください。」


麻衣子が美咲に言った。


「そうよ美咲?今日のプラン変更には美咲も賛成してたじゃない?」


美咲が麻衣子に言った。


「ここまでヘンテコなプランだとは思わなかったのよ!」


麻衣子が美咲に言った。


「だとしてもそれを晴南に言っても仕方ないでしょ?この提案をしたのは晴南じゃないんだし?文句があるなら発案者の二実さんに言いなよ?」


美咲が麻衣子に言った。


「ええ、そうね、じゃあそうさせてもらうわ!」


すると二実と三緒と七緒がリフトに乗って山頂にやって来た。


三人は晴南達を見つけると晴南の所にやって来た。


三緒は七緒と一緒に洋菓子専門店ベルガまで車で買い出しに出かけていたのだった。


二実がみんなに言った。


「みんなー、遅くなってごめんね?」


晴南が二実に言った。


「いえ、全然大丈夫です。」


二実が晴南に尋ねた。


「どう?楽しんでる?」


晴南が二実に言った。


「はい!楽しんでます!」


すると三緒がみんなに言った。


「みんなお待たせ!ベルガでチーズケーキを買ってきたわ?」


三緒はそう言うとぶら下げてきた布袋をみんなに見せた。


二実もみんなに言った。


「あっ、そうそう、私もベリエのマドレーヌを持ってきてるの?良かったら一緒に食べてね!」


二実もそう言うと持ってきた袋をみんなに見せた。


すると美咲が二実に言った。


「二実さん?一つ言いたい事があるんですけど?」


二実が美咲に尋ねた。


「えっ?何?美咲ちゃん?」


美咲が二実に言った。


「二実さん?今日はありがとうございました。」


二実が美咲に言った。


「えっ?いえいえどう致しまして。良かった!美咲ちゃんが喜んでくれて。美咲ちゃん不機嫌そうだったから、どうしようかなって思ってたんだ。」


二実がみんなに言った。


「それじゃあ鍵は預かってるから、このままレストランに入りましょうか?」


これを聞いた他のメンバーが頷いた。


二実はレストランの正面出入口のドアの鍵を開けて、正面入口から山頂レストランの中に入っていった。


他のメンバーも続々と中に入って行った。


するとレストランに入ろうとした美咲に後ろから麻衣子が声をかけてきた。


「二実さんにビシッっと言うんじゃなかったの?」


美咲が麻衣子に言った。


「ベリエのマドレーヌを持ってきてくれた二実さんにそんな事言う訳ないでしょ?」


麻衣子が美咲に言った。


「もう現金なんだから。」


美咲が麻衣子に言った。


「それより早く中に入りましょ?」


麻衣子が美咲に言った。


「そうね。」


美咲と麻衣子も山頂レストランミールの中に入っていった。

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