第22話 冒険者
ここは異世界ドルイアにある迷宮都市セルバである。
この迷宮都市セルバにも魔王軍に魔の手が迫っていた。
この迷宮都市セルバの地下には巨大な地下迷宮が存在していた。
その地下迷宮には貴重な鉱物資源がたくさん眠っていた。
だが同時にたくさんの魔物も生息しており、鉱物資源を回収するには魔物と戦える事が重要であった。
この条件をクリアできるのは冒険者だけであった。
その為この地下迷宮を目当てにした冒険者達がこの町にやってきて住み着いていたのだった。
そして女神セルティアは迷宮都市セルバを管轄するブル司教にある指示を出していた。
魔王軍の侵攻を前にしてセルバにある中央礼拝堂にギルド長と冒険者達が集められていた。
ブル司教が冒険者達に言った。
「今、このドルイアは未曾有の危機にさらされている。承知の通り、魔王軍の侵攻だ。魔王軍の侵攻により要塞都市ガランを失ってしまった。そして今度はこのセルバに攻め込もうとしている。すでに魔王軍の魔の手はセルバのすぐ近くにまで迫っている。冒険者達、そしてギルドの方々、どうか力を貸して欲しい!」
すると迷宮都市セルバのギルド長がブル司教に尋ねた。
「ブル司教、それで具体的にはどうしろと?」
ブル司教がギルド長に言った。
「このセルバの町の防衛をトゥナス騎士団に任せるつもりだ。だが現在トゥナス騎士団は再建中だ。先の戦いでトゥナス騎士団はたくさんの手練れを失った。各地から新しく兵士を集めている所だが、正直な所、トゥナス騎士団だけでは心もとないのだ。そこで冒険者達の手を借りたいのだ。」
冒険者の一人がブル司教に尋ねた。
「つまり我々にトゥナス騎士団に加わって欲しいという事か?」
ブル司教がその冒険者に言った。
「ああ、その通りだ。」
すると冒険者の一人がブル司教に言った。
「ブル司教、悪いがその話は受けられない。」
ブル司教がその冒険者に尋ねた。
「なぜだ?」
すると別の冒険者がブル司教に言った。
「はっ?そんなもん聞くまでもねーだろうが?俺たちは冒険者だぞ!誰の指図も受けねんだよ!!」
ブル司教が冒険者達に言った。
「これは私の判断ではない。女神セルティア様からの御神託なのだ。」
冒険者の一人がブル司教に言った。
「はっ?それがなんだ??女神だろうとアゴで使われてたまるかよ!!」
ブル司教がその冒険者に言った。
「口のききかたに気をつけろ!!セルティア様はこのドルイアを司る女神様なのだぞ!!せっかくセルティア様からの御神託を授かったというのに無礼にもほどがあるぞ!」
するとブル司教の隣にいたこのセルバの町の町長がブル司教に言った。
「ブル司教、少し落ち着かれた方がいい。」
ギルド長がブル司教に言った。
「我々はトゥナス騎士団には絶対に加わらない。ただしその代わりにトゥナス騎士団と共にこのセルバの町の防衛に協力する事ならば可能です。もちろんそれに見合った報酬を支払ってもらいますが。」
ブル司教がギルド長に言った。
「貴様!!セルティア様の御信託を頂けるだけでも大変な栄誉だというのに、金を要求するとは何てふてぶてしさだ!」
町長がブル司教に言った。
「ブル司教、落ち着いてください。これでは交渉になりません。」
ブル司教は町長に言った。
「ああ、分かった。」
町長がギルド長に尋ねた。
「それでギルドとしてはいくら欲しいんだ?」
ギルド長が町長に言った。
「全額前金で600億セルティです。」
町長が驚いてギルド長に言った。
「600億セルティだと?!!本気で言ってるのか?」
ギルド長が町長に言った。
「もちろんです。」
ブル司教がギルド長に言った。
「トゥナス騎士団の兵士達に支払っている総額の報酬ですら10億セルティなんだぞ?冒険者とギルドの人数を合わせても二百人しかいないだろうが!!一人あたま三億セルティだぞ!そんなに払える訳ないだろうが!!」
冒険者の一人がブル司教に言った。
「他の連中の事なんざ知るか!!いいか俺たちは冒険者だ!!一人でも何十人分もの働きができるんだぞ!!」
ギルド長も冒険者に同調して言った。
「その通りです。ですからこれは決して高い金額ではありません。」
ブル司教が皆に言った。
「それはお前達にとってだろうが!我々の弱みにつけこんで大金をむしりとろうなど恥ずかしいと思わないのか!無償で参加しているの者達とてたくさんいるのだぞ!!」
冒険者の一人が言った。
「さっきから言ってるだろうが!!他の奴らなんざ知ったこっちゃねえんだよ!!」
別の冒険者が言った。
「そうだ!金だ!金!金をよこせ!!」
ギルド長がブル司教に言った。
「冒険者が報酬なしで働くなどありえません。もちろん我らギルドとてそれは同じです。見合った報酬を支払ってもらはねば!」
すると町長が皆に言った。
「そうは言っても冒険者にとってもギルドの方々にとってもこの町が無くなってしまうのは困るでしょう?我々は冒険者のあなた方に特権を認めてきました。税金を免除して地下迷宮への立ち入りを許可しているのもギルドと冒険者の方々だけです。冒険者の為に宿屋や酒場も整備させてもらいました。今回の防衛だけで構いませんので協力してもらえませんか?」
ブル司教が皆に言った。
「そうだ、お前達は大変優遇されているのだ。受けた恩はちゃんと返すべきだろう!」
冒険者の一人が言った。
「要するに俺らをタダ働きさせようって魂胆だろうが!その手に乗るか!!」
冒険者の一人が言った。
「そうだ、タダ働きなんて絶対にしないぞ!!たんまりと報酬を出せ!!」
ギルド長がブル司教に言った。
「600億セルティです!その金額が払えないのなら、冒険者は誰一人として戦いません!それと冒険者への依頼は全てギルドを通して行うという約束です。今回は大目に見ますがギルドを通さずに冒険者を集めて依頼するのは今後は止めてください。宜しいですな?!!」
冒険者達が声をあげた。
「そうだ!!俺達が満足できる報酬を出せ!!」
「報酬なしなら魔物一匹すら狩らないからな!!」
ギルド長が冒険者達に言った。
「さあ冒険者の皆さん話は終わりました。もう帰りましょう!」
冒険者達がゾロゾロと中央礼拝堂から去っていた。
残されたのはブル司教と町長だけだった。
ブル司教が大声をあげた。
「何と身勝手な連中だ!!世界の危機だというのに!」
町長がブル司教に言った。
「私も少々考えが甘かったようです。世界の危機ならば冒険者達もきっと手を貸してくれると思っていました。」
町長はブル司教に尋ねた。
「どうしますブル司教?」
ブル司教が町長に言った。
「やむを得ない、セルティア様に奏上しよう。」
ブル司教と町長はすぐに女神セルティアにお伺いをたてる事にした。
天写鏡の写し(神との会話ができる通信端末)が女神セルティアに仕える聖職者達には与えられていた。
ブル司教は町長と共に天写鏡の写しを使って女神セルティアにお伺いを立てたのだった。
「という訳なのです。」
女神セルティアが天写鏡越しにブル司教に言った。
「それは困りましたね。」
ブル司教が天写鏡越しにセルティアに言った。
「全くどうしようもない連中です。我々の弱みにつけこんで大金をむしりとろうとしているのですからな!」
町長が天写鏡越しにセルティアに尋ねた。
「セルティア様、如何致しますか?」
セルティアがブル司教に尋ねた。
「ブル司教、確認したいのですが、冒険者というのは、戦力としては当てにしていいのですよね?」
ブル司教がセルティアに言った。
「はい、彼らは常に魔物達と戦っており、戦い慣れております。戦力としては申し分ないです。ですが冒険者というのは自分勝手で気難しい連中です。」
セルティアはどうするかを考えて、すぐに結論を出した。
セルティアが二人に言った。
「分かりました。冒険者達の要求を受け入れましょう。」
ブル司教がセルティアに言った。
「恐れながら、セルティア様?本当に宜しいのですか?あんな連中に任せるのは危険と考えますが?」
セルティアがブル司教に言った。
「ええ、ブル司教の言いたい事は分かります。ですがこちらに他の選択肢はありません。もはや冒険者達に任せるしかないでしょう。」
ブル司教と町長がセルティアに言った。
「承知致しました。」
冒険者達の要求が通り、ギルドに600億セルティが支払われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます