第28話 驚きの領主館

 ユックリ歩いた為、緑鬼豚人村ゴブリンオークむらに到着したのは夕方でした。

 急な移住で、女達12人の住まいをどうするか相談中、蜥蜴人酋長の訪問を受けました。


「領主様!領主館が完成しましたじゃ!」

「領主館?」

「レンガの使用法聞きまして、直ぐに取り掛かり、やっと完成しました」

 同行の職人らしき蜥蜴人から説明を受けます。


「酋長、場所は?」

「蜥蜴人村から半日程の所で、以前から木材を伐採して居りまして、小さいが枯れる事の無い湖の畔ですじゃ」


 館の完成を報告だけでなく、直ぐに案内したい様子です。

 出来れば明日にして欲しいけど、しょうがない。

「サヨ!疲れてる所悪いけど、私を肩に乗せ走ってくれる?」

「アネエサ様、全然疲れてないよ!酋長の後を行けば良い?」

 サヨに頷いて「酋長!案内お願い!!」

「承知ですじゃ!!走ります!!」


 蜥蜴人の身体能力凄い!!

 尻尾でバランスを取り、矢のようにすっ飛んで行きます。

 でも、サヨは余裕で付いて行ってる。


 僅か20日程で完成したと言うレンガ造りの家、倉庫のような粗末な物を想像して居ました。


 暮れなずむ夕闇に浮き出たシルエットは、まるで湖畔に佇むお城のようでした。


「壁は竹を組んだ物を芯に、切りワラを練り込んだ粘土で覆っております、外壁は全て焼きレンガ造りです」


「凄く立派で綺麗·····あれっ?窓にガラスが?」

「おぅ!!気付かれましたか!!大トンボの翅を明かり取りの窓に入れて居ります!!」


 蜥蜴人の物造りに対する情熱は、凄いと言うか凄まじい物を感じました。


 大きな、私では開く事が困難な、重い重厚な両開きのドアを潜ります。


 中は外壁とは一変、木の香りが漂う木造建築でした。

「強度を考慮しまして、通し柱は丸太を使用、寝室居間には床にムシロを敷き更にその上に御座を敷いて居ります」


「サヨ!女達と親衛隊呼んで来て!!ここに住めるって!!」

「アネエサ様、行って来ます!!」

 本気のサヨなら5分程で、着くでしょう。


「あっ!畳の感触!!嬉しい!!!」

「タタミ?とは?」

「井草と言う草を、このように編んで、ワラを固めた上に縫い付けた物」


「領主様は、どこでお知りになられた?盗賊の洞窟に有りましたか?」

「私が、この世界に産まれる前住んで居た、タロウ達の言う神の国に有った物」


「!やはり!アネエサ様は、魔神様で在らせられた!!」

「酋長!勘違いしないで!!私はその時の記憶があるだけの、普通の赤子だよ」

「··········」

「聞いて無い、頭領!!」

「へ?あっしの事で?」

「そう、酋長がまたトリップしてる、代わりにお礼を!頭領!!素晴らしい領主館を建設して下さって、有り難う御座います!!早速住まわせて頂きます!!」

「も、勿体ないお言葉、有り難う御座います!!頑張った甲斐が有ります!!」

「忘れて居りました!!もう一ヶ所ご案内させて頂きます!」

 案内された所は、木で出来た、大きな浴槽がある浴室でした。

「わっ!!嬉しい!!お風呂に入れる!!!」

「領主様は、頻繁に水浴びされるとお聞きして、室内で水浴び出来るよう工夫しました」


 私は嬉しくて、頭領に抱き付きお礼を言いました。

「あっ·····そのぅ領主様、トウリョウと言うのは何ですか?」

「頭領と言うのは、職人を纏め最高の技術を身に付けた者の称号です」

「技術者の称号?ですか」

「感謝を込めて、頭領に名を授けます、今後「頭領ハチ」となのりなさい」

「わっわ!!!あっ有り難う御座います!!!「トウリョウハチ」有り難く授かります!!!」

(やっぱり、ステイタスが発生してる、あれっ?火水土の魔法使える?)

「頭領ハチ、ついでに魔法も授けます、座って!」


 魔法を授けると言う言葉は、私の領民にとっては凄い言霊が込められて居るようで、非常に素直な状態で魔法を覚えてくれました。

 もっとも、頭領だけあって知力が非常に高かった事も、幸いでした。

「まっ魔法が·····」

 頭領ハチは、嬉しさと感激で、泣き崩れて居ます。


 やっとトリップから覚めた酋長が、羨ましそうに見詰めてる。

「酋長!稲作、焼きレンガ、製鉄鍛治施設、領主館建設の功績に対し命名を持って称えます!!今後「ハジメ」と名乗りなさい」


 酋長も知力が非常に高い、火水風が使える。

「酋長、ハジメ!!貴方にも魔法を授けます」

「おうっ!!魔神様有り難う御座います!!!」

「だからぁ!魔神じゃ無いよ!!」

「おぅ!!失礼!領主様!と言う事にします」

 なんか、素直じゃ無いよ、素直で可愛い蜥蜴人って想像出来ないけど。


 酋長も座ってもらい、お腹の魔力を感じさせ操り、火水風がLV1になりました。

「魔神様から、魔法を直伝して頂いた!!有り難い!!!」

 酋長が小声で、なんか呟いてる。


「魔法は使う程にLVが上がって、LV3から攻撃魔法が使え出すよ!!」

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