9歳、幼なじみ全員集合!(前編)

9歳になったある日。


いつものように家族と一緒に夕食を食べていると、お父様がお茶会の話を切り出した。


「1週間後に私の友人と家族ぐるみのお茶会があるんだけど、アリアとエレも一緒に行かないかい?」


お茶会……つ、ついにきた!

婚約者になるだろう幼なじみに会う日が!!


私は9歳。

……まだ婚約者は決まらない年齢のはず。


以前セレスが『多忙な人たちばかりだから、半年に1回か、少ない時だと1年に1回くらいのペースで集まっているわ』って話していたっけ。


「アリアと同じ歳の子ばかりだから、楽しいと思うよ。エレと同じ歳の子は……いなかったかな? でも優しい子達ばかりだから、エレも仲良くなれると思うんだけど……」


えぇ、えぇ、お父様。よーく知っています。

同じ歳の子が7人、その内男の子が4人、女の子が3人という事も知ってます。

そして、その中の誰かが私の婚約者になるんですよ。

将来、私はフラれるみたいだけど……。


「昔からの親しい友人なんだ。アリアの記憶がなくなる前にも何度か会っているんだ。みんなには事情を話してあるから、覚えていない事は心配しなくて大丈夫だよ」


私がこの世界に転生してから……記憶がなくなってからは、お茶会に参加していないってセレスが言ってたな。


ここで私が「行きません!」ってお父様に言って、今後行われるお茶会も全て欠席したら、婚約者を決めるイベントは起こらないんだろうか?


……いや、私は所詮、脇役に近い扱いだ。そのまま何事もなくイベントは起こりそう。

それに“乙女ゲーム”が大好きな私としては、重要なイベントはこの目で見たいし、幼なじみの主要キャラ達にも会ってみたい!!


何より私が行かなかったら、優しい両親は、久しぶりに友人に会いたくても欠席するんだろうな。

……行かないという選択肢はないか。


「はい、行きます。お友達ができるのは嬉しいですし」


私が笑顔で答えると、エレもすぐに返事をした。


「僕もアリアと行きたいです!」


エレは少し人見知りなところがあるみたいだから、お茶会に行くのかな? って思ってたけど……。

一緒に行けるなら良かった。


私とエレの「行きたい」という返事にお父様は喜んでいる。

お母様も嬉しそうに微笑んでいる。


「2人だもの。すぐに仲良くなれるわ」




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お茶会の日。


お茶会が開催される場所は毎回違うようで、今回はセレスの家でお茶会を行うらしい。


今日は、セレスがずっと練習してきたクッキーを振る舞うって話していたな。

セレスの事だから、気合十分、準備万端だと思うけど(笑)


私たち家族の到着が一番遅かったようで、お茶会の会場である庭へ案内された。


「遅くなってごめん、ごめん」


お父様が申し訳なさそうにみんなが集まっている輪に合流した。

私たちもお父様について行き、軽く会釈をする。


周りを見渡すとセレスがいた。

私が小さくセレスに手を振ると、セレスも私に気がついたようで、笑顔で小さく手を振り返してくれた。


そんな中、ただ者ではないオーラを放った人がお父様に近づいてきた。

うわぁ。強そうなガッチリした体型の人だなぁ。


「待っていたぞ。久しぶりに全員揃ったな」


その人は“きょとん”としている私に気がついたようで、声を掛けてくれた。


「アリアも久しぶりだね。大変だったようだが、今日は参加してくれて嬉しいよ」


私が警戒しないように気を遣ってくれたのかな? 急に口調が優しくなった。


「エレは初めましてだね。みんな、改めて自己紹介をしよう」


エレにも私の時と同様、優しい口調だ。

さらに私たちの事を思って、自己紹介まで提案してくれるなんて!

ありがとうございます!!



──そして、自己紹介タイムとなった。


「私はこの国の王、サールだ。2人(アリアとエレ)の父とは、同じ年で小さい頃からの付き合いだよ」


真っ先に話し掛けてくれた人は、私が予想していた通り、この国の王様だった。

やっぱり他の人たちとは、威厳というか、漂う空気が違うな……この人がこの国の王様かぁ。

威厳はあるけど、見た目と違って気配りのできる優しい人っぽいな。


王様の横に立っている奥様。俗に言う、王妃様も紹介された。

気品がある整った顔立ちの人だな。


「知らない人が大勢いたら緊張すると思うけど、気を使わずに楽しんでね。こちらは息子のオーンよ。本当はオーンの他に下に2人いるのだけれど、本日は欠席しているの」


王妃様は、話し方も気品があるな。


王様と王妃様がステキなこの国は、いい国なのかもしれない。

先ほど紹介された“オーン”という男の子が私の前までやって来た。


「久しぶりって言っても分からないと思うけど、元気そうで安心したよ。アリア」


おおっと。この人がセレスの好きな人か……。

物腰の柔らかい口調で話し掛けてくれたのは、第一王子のオーン。


ブロンドのサラサラヘア……整った顔はお母さん似ね。

セレスが「すでに《光の魔法》が使えて、何をしても完璧なのよ」と言ってたな。


……セレスから散々話を聞いてたせいか、初対面という気がしない。

確かにセレスが言っていただけあって、見た目だけで判断すると完璧な人に見える。

もし「あなたの王子のイメージは?」と聞かれて、思い浮かぶイメージ通りの人だな。



続いて紹介された家族は、赤髪の明るい元気な家族だった。


「《風の魔法》を使うカウロだ。よろしくな! 横にいるのは妻のアネモイ。そして、息子のエウロだ。アリアとは久しぶりに会ったが、大きくなったな! そして、エレ! 話には聞いていたぞ! 2人とも今日は楽しむんだぞ!!」


気さくにカウロさんが話した後、紹介されたアネモイさんも笑顔で話し始める。


「アネモイよ。よろしくね! エウロには年の離れた兄がいるんだけど、今日は仕事で欠席なのよー。久しぶりに全員揃ったのに……残念よね」


見た感じ……2人はお父様より……年上ね。

明るくて話しやすそうな家族だな。


「紹介されたエウロだ。アリア、エレよろしくな!」


この両親の子供だと分かるくらい、気さくで明るい!

男らしい、さわやかイケメンといった感じ。


“乙女ゲーム”といえば、全員キャラが異なるはずだから、エウロは明るいお元気キャラなのかな?

──いい友人になれそう!!



続いて紹介された家族は、ちょっぴり真面目そうな雰囲気の家族。


「ティスと申します。《知恵・知識》の魔法を使います。リオーン(アリアの父)とは職場が一緒で、かれこれ、15年以上の付き合いになります。こちらは妻のメーテです。よろしくお願いしますね」


妻と呼ばれたメーテさんは、微笑みながら会釈をしてくれた。

ティスさんは真面目で知的な感じ。メーテさんは穏やかな感じの人だな。


「息子のミネルです」


機嫌悪そうに挨拶をしてくれたのが、ティスさんの息子ミネル。


《知恵の魔法》というだけあって、知的な顔立ちのイケメン。

お父さんとそっくりな顔だけど、態度は全然似ていないなぁ。

いつもこんなに機嫌が悪そうなのかな?

ミネルは“乙女ゲーム”でいえば、知的キャラね。

……仲良くなれるか不安。



──男性キャラ最後の家族。


「アリアさん。エレくん。私は《火の魔法》を使うテウスといいます。私もリオーンさん(アリアの父)とは職場が一緒で仲良くしてもらっています。こちらが奥さんのホーラと息子のカウイです。アリアさんとは同じ年なので、仲良くしてあげてくださいね」


テウスさんはとっても丁寧な口調で挨拶をしてくれた。

第一印象は優しいというか、弱々しい感じの人。

勝手なイメージだけど、とても《火の魔法》を使う人には見えない。


「ふふ、よろしくね。アリアさん。エレくん」


奥さんのホーラさんは……妖艶ようえんというか、なんともいえない色気のある人だな。女の私でも照れてしまう。

ホーラさんの横でペコっとお辞儀をしたのが……カウイ?


年齢の割に体つきも小さく、ツンって突っついたら、よろけて倒れそうなくらい弱々しい感じ。

グレーアッシュという髪の色がまた弱々しさを際立たせているような……?

雰囲気はお父さんに似てるけど、顔は……どちらに似ているか分からないな??


「あら? カウイ。ちゃんと挨拶をしないとダメよ」


ホーラさんが色気のある声でカウイに言うと、ようやく口を開けた。


「カ、カ、カウイです」


名前だけ言って、再びペコっとお辞儀をした。


うーん。他の3人と比べて明らかに容姿、話し方が違う。

将来の姿を知らないから何とも言えないけど……。


まっ、まさか! 私と同じ平凡キャラなのでは!?

私のようにヒロイン候補の中にも平凡キャラがいるのだから、攻略対象の方にも平凡キャラがいてもおかしくない!!

そう思うと急に親しみがわいてくる。

同士ね、カウイ。仲良くなりたいな。



──次は女性陣!


待ってました! と言わんばかりにセレスが足早にやってきた。


「アリアは初めて会うわね。父の“ガイ”と母の“クローラ”よ。お父様、お母様。こちら、ゆ、友人のアリアと……小生意気な弟エレよ」


エレの方をチラッと見ると“何を言ってるんだ”という目をしている。

エレのどこが小生意気なのか全く分からないけど、こんな紹介の仕方をするって事は2人が仲良くなったって証拠だよね!

一時、気まずい時期があったから良かった。良かった。


私もちゃんと挨拶しなきゃ!!


「アリアと申します。以前からセレスとは仲良くしてもらっていて、私にとっては大切な友人です。今日はお招きいただき、ありがとうございます」


……ん? なぜかセレスが照れてる。

どうしたんだろう?


「いつも娘と仲良くしてくれてありがとう」


ガイさんがお礼を言った後、私に近づきセレスには聞こえないくらい小さい声で教えてくれた。


「娘がアリアの家に行く日は、とても楽しみにしているみたいでね。夜中眠れないみたいだよ。本当に仲良くしてくれてありがとう」


セレスの性格上「そんな事ないわよ! お父様!!」とか言うから、こそっと教えてくれたのかな(笑)

それにしても、ガイさんはセレスと違って落ち着いた人だな。


「本当にありがとう。感謝してもしきれないほど、2人には感謝しているわ」


クローラさんも丁寧にお礼を言ってくれた。クローラさんも落ち着いた人だな。

…………セレスの性格は誰に似たんだろう??



セレスの家族に挨拶をすませると“癒しのオーラ”を漂わせる家族がやってきた。


これは確認しなくても分かる。マイヤの家族だ!

セレスと初めて会った時も感じたけど、やっぱりヒロインは飛びぬけてオーラが違う!


何より、めちゃくちゃ可愛い!!


「私は《癒しの魔法》を使うパンナ。そして妻のケイアだよ。アリア、エレよろしくね。マイヤは自分で自己紹介するのかな?」


少しぽっちゃりの癒し系パンナさん。

少しキツ目な顔立ちのケイアさんに挨拶をすませ、マイヤを見る。


「久しぶりで緊張するわ。前から知っているから、初めましても変だけど……マイヤです。アリアちゃん。エレくんよろしくね」


おおっと。なんて可愛らしい挨拶。エレとはまた違った天使の笑顔!

“ゆるふあヘア”が癒し系をパワーアップさせている!!

マイヤはお父さん似かな?

パンナさんが痩せたらマイヤに似ている気がする。


マイヤ……セレスが勝手に言ってるライバルか。

マイヤはセレスの事をライバルと思ってなさそう(笑)



ついに最後の幼なじみ!!


おおっと。これまた確認しなくても分かる。

ルナの家族だ。

うーん。やはりこちらも飛びぬけてオーラが違う!

ルナの家族はみんなモデル並みにスタイルがいいし、立ち振る舞いも美しい!!


「《緑の魔法》を使うアルセイだ」

「妻のリュアよ」


ルナの両親はどちらも必要最小限の挨拶で終わった。

どちらもクールな人なのね…………。


「娘のルナよ」


ルナもまた必要最小限の挨拶で終わった。

黒髪のストレートヘアもクールビューティーでかつ清楚感を漂わせている。


そしてルナもセレスが勝手に言ってるライバル。

ルナもセレスの事をライバルと思ってなさそう(笑)



自己紹介も終わり、平和なお茶会が開催されると思っていた。

この時までは…………。

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