エピローグ ふたたび鉢の木


「……それで、その孟珙もうきょうどのはその後、どうされたのですか?」

 鉢の木をくべた囲炉裏の火がその時、消えた。

 あたりは寒さに包まれた。

 家の主人、佐野源左衛門尉げんざえもんのじょう常世は、旅僧に、最後の問いを問うた。


 旅僧――北条時頼はこたえた。

襄陽じょうようこそ唐土もろこし。そこを軸に、南宋を長きに渡って支え続けたそうな」

「そうですか……」

 常世は遅くまで話していただいて申し訳ないと言って、布団を敷いて、時頼に勧めた。

「これはかたじけない」

 時頼は常世に合掌してから、布団に入った。



 ……寒さに、目が冴える。

 ふと物音を感じた時頼は、薄目を開けてあたりを見回す。

 そこには、鎧の手入れをしている常世の姿があった。

 どうやら、先ほどの孟珙の話に、思うところがあったらしい。

「……やがて、蒙古はこの国に襲来するやもしれぬ。その時、孟珙のように戦える武士はいかほどなのか……試す必要があるか……」

 そして時頼は語り疲れた身を休めるため、再び眠りにつくのだった。



 

 ……やがて鎌倉に戻った時頼は、武士たちに招集をかける。


「いざ鎌倉」


 そのかけ声の元、一番に駆けつけた男こそが、この佐野源左衛門尉常世だったと云う――

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攻城 ~南宋の孟珙、蒙古より襄陽を奪還す~ 四谷軒 @gyro

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