第84話 姉の受難 11

 ゴールデンウイーク前、私は自室で1人考えていた。

 何を考えているかというと、最近の春樹の行動についてである。



「あの子、最近おかしいわね」



 いきなりゴールデンウイークの私の予定をしつこく聞いてきたり、親が家をいない日を確認していたりして明らかに怪しい。



「1日だけ玲奈と遊びに行く予定を伝えたけど、何かあるのかしら?」



 でも春樹に直接聞いたところで、あの子が素直に答えるとは思えない。

 玲奈に探りを入れさせても安易に話すとは思えないし、どうやって情報を仕入れよう。



「あら? 電話ね」



 電話の主を見ると。春樹と親しくしている守君からである。

 あの子から私に電話をする時は何かよっぽどの事がある時に限る。

 つまり今よっぽどの事が起きてるって事だろう



「もしもし」


『もしもし、美鈴さん。お久しぶりです』


「最近週に1回は連絡している気がするから、あんまり久しぶりには感じないわね」


『確かにそうですね』



 そうなのだ。最近気づいたことだが、守君とは頻繁に連絡を取り合っている。

 春樹に女を紹介したことについての話とか、つい最近だとこの子達の教室に行って守君と話した経緯がある。



「それで今日は一体どんな用事かしら?」


『実は今度春樹の家に行くので、美鈴さんにも挨拶をしておこうと思いまして?」


「守君が私の家に? そんな話、全然聞いてないけど?」


『やっぱり春樹のやつ、美鈴さんに話していないんですね』


「その話、詳しく聞かせて頂戴」



 それから守君からことの経緯を聞く。

 その話をまとめると、どうやら家で守君や紗耶香ちゃん達と勉強会を開くらしい。



「なるほどなるほどなるほど。大体の経緯はわかったわ」


『ならよかったです』


「とりあえずあの子には1度地獄に落ちてもらうしかないようね」


『ものすごく物騒な事を言っていますけど、大丈夫ですか?』



 この事を黙っていた春樹にはお仕置きが必要なことがわかった。

 私に黙って玲奈以外の女を連れ込もうとしていたことを後悔させてやらないと行けない。



「情報ありがとう。それで守君はどうしてこの情報を私にリークしたの?」


『ほら、美鈴さんが家でリラックスしている時に僕達が鉢合わせたらまずいじゃないですか』


「確かにそうね」


『だから美鈴さんに一言声をかけようと思って。念の為』


「貴方の言い分はわかったわ。気を使ってくれてありがとう」



 この子に家にいる時の私の事を知られていたことは癪だけど、これで最近春樹が挙動不審な理由がわかった。

 春樹の動向がわからない中、守君は逐一情報をくれるのでありがたい存在である。



「一つ聞いてもいいかしら?」


『何ですか?』


「実はその日私は玲奈と出かけることになってるのよ」


『美鈴さんと会えなくて僕は残念です』


「でももし何らかの問題が生じて、急用で家に戻ってくることがあってもいいのよね?」


『もちろんですよ。それは仕方がないことじゃないですか』



 この子、きっと私が何をしようとしているかわかっている。

 わかった上でこのように返答しているんだ。



「ありがとう、連絡をくれて」


『いえいえ。では当日楽しみにしていますね』


「えぇ、楽しみにしていて頂戴」



 そう言ってスマホの通話を切る。

 そして私は再びスマホの操作を始めた。



「春樹、見てらっしゃい」



 私のことを出し抜くなんて、100年早いのよ。

 今に見てなさい。当日地獄を見せてあげるから。



『もしもし?』


「あっ、玲奈。夜遅くごめんね。今度のゴールデンウイークの日に行く買い物なんだけど‥‥‥」



 それから私は玲奈と電話して、予定を変更する。

 当日春樹を驚かすために、着々と準備を進めていくのだった。



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