第25話 銀髪の青年


時間は地震が起き始めた最初の頃に遡る。



「何だ!?地震か!?」

銀髪の青年、アルフレイドが揺れる床に対してバランスを保ち乍ら叫ぶ。

「ゆ、揺れが酷いの!こんなに揺れる事は此れまで無かったんじゃよ!?」

身長が低く、身体つきの良いドワーフであるデューテは鍛冶仕事で鍛えている所為か、激しい揺れに対して殆どよろめく事無く立ち止まっていた。

「此奴等の此の状態と何か関係が有るのか!?」

激しく成り続ける揺れに立って居られなくなったアルフレイドは片膝を付きしゃがみ込んでしまい、腰に差している二本の武器に手を添えてディーテに尋ねるが、そもそも何故そんな疑問が彼の中に生まれたのか、それは想像から来る理屈も何も無い只の感であった、しかもその感は大外れなのである。

「ほっほっ、さっきも言ったがのう、儂は其れを作っただけじゃ、じゃが、此の揺れは流石に不味いかも知れんのう。」

「何が不味いんだ!?」

只事ではない此の状況にアルフレイドはディーテの言葉に間髪入れずに答えを急かす。

「ミスリル鉱山が崩れて埋もれるやも知れんのじゃよ。」

「ミスリル鉱山だと?確かにそりゃ、アンタ等に取っちゃ大変な事かも知れないが…。」

アルフレイドが続けて何かを言おうとしたのをデューテが遮って話を続ける

「ラスティールの保管場所なんじゃよ、ミスリル鉱山は。」

「な!?何だって!?」

立ち上がろうとするが揺れに耐える事が出来ずに倒れてしまった。

「ほっほっ、何処に行くつもりじゃ?」

倒れたアルフレイドを問質すデューテ。

「ラスティールを回収しに行くに決まってんだろ!元々其のつもりで来たんだ!」

「ほっほっ、言うと思ったわい、じゃが今行かす訳にはいかんよ。」

デューテの其の言葉にアルフレイドは表情を一遍させる。

「何…だと?………邪魔をするつもりか?」

突如誰しもが解る程の殺気を漂わせ始めるアルフレイドに。

「ほっほっ、落ち着かんか馬鹿者が。」

其れまで優しそうな老人だったデューテが細く鋭い目を光らせ、殺気ほ放つ。


ゾクッ!


アルフレイドは背筋に悪寒が走る感覚を覚える、只者じゃ無いとは思っていたが、まさかこれ程とは、一流の鍛冶師では有るのだろうが、此の爺さん、間違いなく戦士だ。

「今はと言ったんじゃ、揺れが収まるまで待つのじゃよ。」

元の表情に戻っていた。

「…解ったよ、待てばいいんだな?」

デューテの言葉に素直に従うアルフレイド。

「ほ?中々聞き分けがいいじゃないの?」

「ハッ、こちとらドワーフに育てられたんだ、アンタ等に逆らっても力ずくで抑え込まれるのは目に見えてるし、脳ミソがアダマンタイトで出来てんじゃないかって位頑固な事も知ってるからな。」

(…ウェルクの奴、どんな育て方したんじゃ?)


揺れが収まるまでに鉱山内の案内人を手配し、其の案内人がアルフレイドの元へやって来る頃には揺れも収まっていた。

「アルフレイドじゃったかの?ラスティールはミスリルの巨大な原石の中に埋もれておる、回収するには掘り出すしかないのじゃが、鉱山内の状況が解らぬ以上、決して深追いはしない事じゃ、先程の地震の原因が解らん今、二次、三次の揺れが発生する可能性もあるからの、崩落して埋もれてしまえば生きて出る事も叶わんかもしれんからのう、自分の命を最優先にする事じゃ、ああ、ついでに、先に鉱山に入って行ったうちの弟子と冒険者4人、少女が一人、途中で会えば直ぐに戻る様伝えておいてくれるかの?」

淡々と現状把握出来ている情報を語り終えると、アルフレイドは顎を引き頷いた。

「了解した、安心しな、無理をするつもりは無いさ、此処で手に入れたとしても、ラスティールはまだ1本残ってるんだ。」

「ほっほっ、最後の1本の行方は解っとるのかね?」

デューテの問いに大きく首を横に振るアルフレイド。

「いいや、解らないから先にこっちに来たんだ、じゃあ行って来る。」

アルフレイドは踵を返し、鉱山内へと其の姿を消した。


鉱山の入り口に一人ぽつんと佇むデューテは、物思いに耽っていた。

(…事態はかなり急速に動き始めておる様じゃの、…ラスティールを取りに来た、か、…アレは4本の武器から成る1本の武器じゃ、只し、使い手を選びすぎる嫌いがある、4種類の武器を巧みに使い熟す技術と膨大な経験が必要じゃ、ラスティールを使い熟せれば、或いは霊装と肩を並べる事の出来る武具となり得るやも知れぬが、神々の作り上げた武具に近しい存在を作り上げよう等とは、正気の沙汰とは思えんわい。)

ぶつぶつと愚痴を零し乍ら、デューテは自身の作業場へと帰って行った。


鉱山内に入って少し進んだ場所にトロッコ置き場がある、案内人のドワーフは早速其のトロッコを本線のレールの上まで運ぶ作業を始めた。

「手伝う、か?」

アルフレイドは片言のソルアーノ語でドワーフに尋ねると、ドワーフは振り返って。

『気にせんでいいぞい、儂等は此の作業を毎日の様に行っとるぞい。』

なんと、アルフレイドの解る言葉で返って来た。

『!?…アンタもラジアール語が解るのか?』

『少しだけだぞい、ほれ、準備が出来たぞい、早く乗るぞい。』

自国の言葉を話せるドワーフが此の国に二人も居た事に驚くアルフレイドだったが、事態は其の事を聞いて居る程の時間を用意してくれてはいないだろうと思考を止めて、言われた通りトロッコに乗り込むのだった。


トロッコには簡易の動力が設置されており、自動で走る様に成っている、車輪の回る音と金属音が擦れる音、レールの繋ぎ目の上を通る時に鳴るガタン、ゴトン、と云う音が鉱山内に響き渡る、トロッコに揺られていると急に速度を落とし始めた。

『…?着いたのか?』

『いや?トロッコの走る音がするんだぞい。』

ドワーフの言う様に小さいが自分達の乗っているトロッコが走る音と同じ音が前方から聞こえて来た、向こうも此方に気付いたのか、速度を落としている様だ、ブレーキを掛ける時の耳障りな金属音が聞こえ、やがてブレーキ音は止まり、ゆっくりとだが互いが近付いているのが解る。

「おー?兄弟ー!どうしたー!?」

トロッコが視認出来る所まで来た時、何か、此の緊張状態にそぐわない間の抜けた声が木霊した。

「おう!兄弟!無事かぞい!?」

ドワーフがソルアーノ語で何か話している、姿を見せたのは一人のドワーフを4人の冒険者風の男女だった。

(コイツ等がディーテの言っていた奴等か?一人足りない様だが?)

「ソイツは誰だー?兄弟―?」

トロッコを下りて来たドワーフが銀色の髪をした男を見て同じドワーフの兄弟弟子、と言えば良いのだろうか?何か話している。

「親方の客だ、ラスティールを取りに来たらしい。」

「何―!?じゃー!じゃあラスティールの継承者なのかー!?」

何を話して居るのか解らないが、ラスティールと云う単語だけは分かった。

「銀色の髪なんて珍しいな、少なくともソルアーノの周辺国じゃ見た事が無い、それに。」

トロッコから降りて来た剣士風の男が。

「アンタ、デュアルウェポンか?」

男がアルフレイドの腰に差してある武器の見て聞いて来たが。

『…?何て言ったんだ?』

アルフレイドは案内人のドワーフの方を向き、尋ねている。

「何?聞いた事が無い発音の言葉だな?」

「…ラジアール語だわ。」

魔術師風の女性が一言何かを呟いたのに対して冒険者達が驚いた表情で女性と話出した。

「ラジアール語、シュレイツから来たってのか?態々ソルアーノまで?」

「そう成るわね。」


ドワーフと何かを話している銀髪の青年は、何か納得した様に頷き。

『違う、と伝えてくれ、まだアームズだとも。』

ドワーフは分かったと言って冒険者達に通訳をした。

「そうか、俺と同じか、態々通訳までさせて、申し訳無い。」

「て云うか、其れ所じゃ無いだろう!今は!」

「そうだぜ、早くメルラーナを助けに行かないと!!」

冒険者達には何やら焦りの色が伺える、事情を簡潔に通訳して貰い、アルフレイドは。

『デューテから頼まれた事でも有るしな、其のメルラーナと云う娘は俺に任せて置いてくれないか?アンタ達は戻る様に伝えてくれと言われたんだ。』


「…!?…しかし!あのモンスター、只のトロルじゃ無かった!何か、黒い湯気の様な、靄の様な得体の知れない何かが身体を覆っていたんだ。」

『黒い…湯気か靄の様なもの?』

銀髪の青年は鋭い目を大きく見開いて驚いている様子だった。

「?」

『チッ、欠片のモンスターか、こんな時に。』

舌打ちをしたアルフレイドの態度に、冒険者達は此の銀髪の青年が何かしらの事情を把握しているものと認知し。

「何か知って居るのか?あのモンスターの事を。」

『モンスターの事は知らねぇよ、其れよりもやはりアンタ等は戻れ、どうやら完全に俺の仕事に成った様だ。』

「仕事?其れを云うなら俺達には冒険者の矜持って物が有る、簡単に引き下がる訳には行かないんだよ。」

納得していない冒険者達を無理矢理引き返す様に仕向け様とするが、今日初めて会った見知らぬ男の言葉に耳を貸す筈も無く、しかし。

「仕方ないぞー、親方の命令だー、オイラ達は引き返そうー。」

思わぬ所からアルフレイドに助け舟が出された。

「バルゴさん!?」

「親方の命令は絶対だー、逆らう訳には行かないんだー、言う通りにしてくれー。」

「しかしっ!」

『時間が惜しい、すまないが彼等の説得を任せてもいいか?』

アルフレイドはドワーフを通してバルゴに頼み込む、バルゴは任せろと言わんばかりに大きく頷き、冒険者達に向き合った、バルゴに説得され、漸く折れた冒険者達は、渋々其の場を後にした。


アルフレイド達はバルゴに達から離れ、先を急ぐ為、ミスリル鉱山への別のルートへと進む事と成った。

(きょうじ?って何の事だか解らないけど、彼等の強い意思を想いは伝わったぜ、後の事は任せて置いてくれ。)

暫くトロッコを走らせていると、前方で何か叫び声の様な、悲鳴の様な雄叫びが聞こえて来た。

『…!?近いのか!?』

アルフレイドはトロッコを操縦しているドワーフに尋ねるが。

『いや、此の先は幾つかある鉄鉱石が取れる採掘場の一つだぞい、ミスリル鉱山まではまだ距離があるぞい、兄弟が遭遇したのとはどうやら別グループのオークの様だぞい。』

『全く!時間が惜しいって時に!』

『突っ込んで脱線してしまったら元も子もないぞい!一旦速度を落とすぞい!?』

ドワーフは言うが早いがブレーキを掛け始める、キキーッ、と金属が擦れる音が響き渡るが、オーク達の騒音で掻き消された。

『何だ?まるで何かに怯えている様な?』

其の騒音は近付いて来る程、悲惨な声に聞こえて来る様だった、更に声とは別に戦闘音も聞こえて来る、アルフレイドは両脇に差してある二本の武器をいつでも抜ける様に備えた。

『もう直ぐ開けるぞい、此の騒動は其処で起こって居るんだと思うぞい。』

ドワーフの言った通り、直ぐに開けた場所に出た、中は薄暗く、先がどうなっているのか良く見えない、だが先程から聞こえる騒音は間違い無く此処から聞こえる、トロッコを止めてドワーフは内部の照明を付けると言ってトロッコから離れて行った、少しすると一斉に灯りが灯される、其処は広い空洞で中には掘削する為の道具があちこちに散らばって転がっていた、そんな中で大勢のオークと其の屍骸も又、至る所に散らばっている、アルフレイド達の目に飛び込んできた光景は。

『オーク同士が争っている?反乱でも起きたのかぞい?』

オークが同族の殺し合いをしていたのだ、但し、勢力同士のぶつかり合いでは無く。

『…いや、そうじゃ無い、此奴は欠片の仕業だ。』

オーク達が戦っていた対象は、一匹の黒いオークだった、いやオークの身体から何か黒い物が出ていたのだ。

『欠片?何だ?ソレは、其れにあのオーク、普通じゃ無いぞい?』

状況を理解出来て居ないドワーフを横目にアルフレイドは長方形の鞘に収まっている武器を抜いた、抜くと同時に、ソレを斜め下、少し上段に振り切る様に腕を動かすと、折り畳まれていたはずのソレはまるで生きて居るかの様に自動的に組み上がって行く、完成したソレは、全長が2メートル程有った、最初は槍と思ったが、刃先が先端だけでは無く全体の半分程の長さで覆っている、斧でも無さそうだ、しかしドワーフにはソレが何か、直ぐに理解した、そう、ミスリルの大原石に埋まっているアレと同じ、異様な姿をした武器だったからだ。

『若いの、そいつぁ、まさか、ラスティールなのかぞい?』

『下がってな、アイツを仕留めりゃ此処の騒ぎは収まる筈だ。』


アルフレイドは抜いた長物の武器を構え乍ら走り抜ける。

『其処で狼狽えてるオーク共!邪魔だ!どきやがれ!』

オーク達はアルフレイドを見ると、言っている事を理解したのか道を空ける。

『巻き込まれたくなけりゃ引けっ!』

開けた道を走り抜ける際にオーク達に向かって叫ぶと、オーク達は頷き合い、散り散りに撤退を開始したのだった。

(若いの、オークと会話したのかぞい?一体何者だぞい?)


………

……


黒い霧を纏うオークを撃破し、ミスリル鉱山へと急いだ。

『もう直ぐだぞい!』

狭い通路をトロッコで駆け抜ける、ドワーフの言葉通り路は開け、広い空間に出た、入って直ぐ目に飛び込んで来た光景は無数のオークの屍骸、その次に巨大なミスリルの原石だった。

『少女は何処だ!?』

ふとミスリルの大原石の直ぐ脇に少女が盾を構えて何かを防いでいる姿を捉えた、そして少女の前には巨大な影が見える。

『居ったぞい!まだ無事の様だが、アレはヤバいぞい!助けに行かんと!!』

ドワーフの目にも映った様で、生きて居た事に胸を撫で下ろした反面、少女が小さいからだろう目の前に居るモンスターがあまりに巨大に見えた、しかもそのモンスターはゆっくりと少女に向かって進行を続けている、が、様子がおかしい。

『な、何だ?何が起きてる?』

巨大なモンスターの身体が少女に近づくにつれ、消えている様に見える、理解を越えた現象を目の当たりにした二人は、少女の救出と云う事を忘れ、其の場に立ち尽くしてしまった。

『消えた?消滅した…のか?』

不意に、少女は崩れる様に膝を落とし倒れ始める。

『!?』

其れを見たアルフレイドは咄嗟に少女に向かって走り出し、地面に倒れ込む前に抱き抱えた。

『ふぃー、危ねぇ、危ねぇ。』

『若いの!やりおるぞい!』

アルフレイドの素早い行動にドワーフは一人歓声を上げる、少女をそっと地面に寝かし付けると、今度は小さな機械を取り出し、其れを起動させ、辺りを見渡し始めた。

『若いのよ、其れは何だぞい?』

見た事の無い機械に瞳を輝かせるドワーフ、鍛冶師の血が騒いだのだろうか。

『悪いけど俺は頭悪いからな、説明出来ねぇよ。』

説明を求められたのを振り払い、辺りを見渡していると。

『…あれは。』

ミスリルの大原石に目が止まる、大原石の中央付近に長い棒状の何かが見えた。

『…そうか、あれがゴルバディオス…か。』

其の聞き為れない単語を発したアルフレイドにドワーフが。

『違うぞ?あれがラスティールだぞい。』

『ん?…いや、そうじゃなくて…。』


ピー!


突然アルフレイドが持っていた機械から音が成り始める、機械の画面を覗くと、其処には【Category3】と表示されていた。

『やはり、…欠片の反応有り…か、おいおい、結構デカいじゃねぇか、此れを一人で倒したのか?此の娘が?………マジかよ、俺が15の頃じゃ到底出来なかったぜ、そんな事。』




少女を無事デューテの所まで送り届けたアルフレイドは、早々にその場を後にし、姿を消した。


………

……


ガコン、プシューッ!


圧縮された空気が抜ける音と主に、鉄で出来た扉が真横にスライドして開く。

『やぁ、アルフ、お疲れさん。』

中からアルフレイドを労う言葉が投げ掛けられる、中に入ると其処は一面が奇怪だらけで十数個のモニターが有り、2~3個のモニターに一人ずつ、計6人の人間?が座っており、中央前方、メイン操縦席と思われる機材に囲まれた席に一人、操縦桿を握っている、部屋と云うより大きな船の操舵室、といった感じだ、そして其の操舵室の中央は、他より一段高く成っており、他より大きい椅子が置かれていた、先程の声の主は其処に座っている様だ。

『対して疲れて無いけどな、【Category1】のモンスターを一匹狩ったくらいだ。』

『まぁまぁ、謙遜しなくてもいいって、一匹は減った訳だしね。』

声の主は椅子から立ち上がってアルフレイドと向かい合う、其処には長い金色の髪をした青年が立って居た。

青い瞳に左右対称の整った美しい顔立ちは、美青年と呼んでもおかしくは無いだろう、身長は170センチ有るか無いか位で体系は細身でガリガリとは言わないが、アルフレイドと比べると、所謂ひょろっひょろの身体で、一発殴ったら倒れそうな見た目だった、鍛えている感じは無い、耳は長く、先端が尖っている、森の妖精や森の賢者等と呼ばれているエルフと特徴が同じである。

が、其のエルフとは全くと言っていいほど似つかわしく無い服装で、紺色のロングコートに黒い革製のベルト、ベルトの両脇にはガンホルダーと其れに納められた拳銃が2丁、更に其の後ろには拳銃に装着するアタッチメントだろうか、形の違う何かが両腰に3本ずつ納められていた、中には1メートル程の長い物まで在る。


『それで?どうだい?彼女の会った感想は?』

金髪の青年は満面の笑みでニコニコ嗤い乍らアルフレイドに尋ねて来る。

『感想…ね、そうだな、実際に戦っている所を見た訳じゃ無いから此れは俺の偏見だけど、即戦力には成るだろうぜ、ジルのオッサンの血を引いてるからかな?強いぜ、あの娘。』

『…はぁ。』

金髪の青年は其の言葉を聞いてあからさまに大きく溜息を付いた。

『な、なんだよ?』

『違う違う、そう云う事を聞いてるんじゃあ無いんだよ、ジルが自慢してた通りの美少女だったのかい?可愛かった?ドキッとしたかい?』

青い瞳を輝かせてアルフレイドを問い詰める。

『あのな、…まあ、可愛かったと思うぜ、美少女って言われても不思議じゃない…。』

『へぇ~。』

金髪の青年はニヤニヤし出して意味ありげな笑みを浮かべる。

『何だよ?てかお前!前に会って来たんだろうが!俺等に黙って勝手に!』

アルフレイドの言葉に操舵室に居た全員が降る帰り金髪の青年に冷たい目線を送っていた。

『………ナ、ナニヲイッテルノカナ?アッテナイヨ?』

突然片言で喋りだした金髪の青年に更に冷たく成った視線が贈られる。

『…なぁ皆、こんな奴が艦長でいいのか?本当に?』

親指を立てて金髪の青年に向かって差し乍ら、操舵室内に居る船員に向かって語り掛けた。

『皆まで言わないでくれアルフ、仕方が無いんだ、其の人以上に此の艦を任せられる人物が居ないんだよ。』

船員の一人が頭を抱えて首を振り乍ら溜息を付いて現状を語る。

『そんな事は置いておいて!アルフ!惚れたかい?惚れたんだろう?あんなに可愛いんだ、惚れてもいいんだよ?』

『惚れてねぇし!てかやっぱ会ってんじゃねぇかよ!』


『艦長、電信です!』

通信士の一人が金髪の青年に対応を求めて来た。

『え?誰から?今忙しいんだけど?主にアルフを揶揄うのに。』

『てめぇ。』

『そ、其れが、陛下からです!』


『………はい?』

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