Case 2-3.Interruption of conviction
気が付けば俺は、部室の床に正座していた。いや、させられていた。
「さあ~て~?」
眼前で腕組みしながら仁王立ちする
「乙女の着替えを覗いたこの変態、どうしてくれようかなー」
「ちょっと待てって。そもそもなんでここで着替えてたんだよ」
いつからここは女子更衣室になったというのだ。
「ああ、それはね」
部長はいつもの癖でストールをいじりながら、
「あれを運ぶのを手伝ってもらうために、体操服に着替えていたのよ」
指さした先――部室の隅には、昨日までなかった小さめの白い箱。冷蔵庫だった。
「なんですか、あれ」
「用務員室のものを取り換えるらしくてね。処分する予定だったのをもらったのよ」
「いや、それをなんでこの部屋に置く必要が」
「それはもちろん、来るべき夏に備えて冷たいものを常備しておく必要があるからよ」
はい?
「この間までは梅雨で涼しかったからいらなかったけれど、これからどんどん暑くなるじゃない? 依頼人に出す飲み物も冷たくしないと」
自慢のおもちゃでも見せびらかすみたいに、己の理論を自慢げに話した。
ほんと、この人は『諦め屋』のことに対しては行動力がすごいな。これを少しでも天文部本来の活動にも向けてくれればいいのに。そうすれば七海先生に変に心配されることもないだろうに。心底そう思った。
「大体、君が私のメッセージどおりにしてくれていたら、こんなことにはならなかったのよ?」
「そうだよ! ハルが悪いんだから!」
夕月が再び
「乙女を恥ずかしがらせた罪、どうやって償ってもらおうかな~?」
「待て、まずは弁護人をつけさせてくれ」
怪しく目を光らせる夕月。後ろで部長はくすくす笑っているだけだ。完全に面白がってるなこの人。
「……あのー」
「ここでは私がほーりつだよ! ハルに弁明の権利はなし!」
「ひどすぎるだろそれ!」
声高に主張したい。被告人にも人権を!
「あのー!」
「え」
「あ」
と、声量の大きさの中に幾ばくかの心苦しさがこもった声に引き寄せられ、俺たちは一斉に入口の方を振り向いた。
「え……っと」
開いたドアに立つのは、猫背気味の男子生徒。さっきの大きな声の主は彼のはずなのに、次に何を言うべきか逡巡している様子だ。
が、彼はこちらに強張った顔を向けて、言った。
「お取込み中すみません。ここって『諦め屋』で合ってます、よね……?」
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