第2話 美男美女の両親

 気がつくと産まれたての赤ん坊になっていた、という衝撃的な出来事から私の体感で数ヶ月経ち。


 最初はぼんやりとした光しか認識出来なかった私の目が、段々と周囲の色を認識できるようになり、形も認識できるようになっていった。


 そして、おそらく両親だろう人影が鮮明になっていくのと同時に、私は酷く驚いた。


 な、なんて美形……!!!


(推定)父は、明るい金髪に真っ青な瞳の美丈夫。切れ長の目に、鼻は高く、彫りが深い凛々しい顔立ち。


(推定)母は、薄茶色の髪に紫の瞳の美人。少したれ目がちな瞳に、スっと通った鼻梁、冷たささえ感じさせる程の美貌の持ち主。


 私は、この両親の顔を見る度、今世での勝ち組の予感を感じて上機嫌になる。両親も、顔を見せる度にきゃっきゃっと笑顔になる娘にメロメロに違いない、だっていつも美形が台無しなくらい笑み崩れているもの。


 さて、皆さんお気付きだろうか。私が今世という言葉を使ったことに。

 そう、私には前世(だと思われる)記憶が朧気にある。


 前世の私は、いわゆるぽっちゃりさんという体型で、いや、正直に言おう、あの体型はぽっちゃりを通り越して肥満だった。

 それに加えて、一重で腫れぼったい小さい目に、凹凸の少ない平坦な顔。その癖、肌は抜けるように白くつるんとしていたので、私のあだ名は白豚だった。


 だが!

 生まれ変わった今!

 もう白豚とは、呼ばせない!


 だぁ〜、と決意表明をするのと同時に、上げた腕を見る。ちぎりパンのようにぷくぷくした腕だ。

 ……大丈夫よね?赤ちゃんの腕とかあんまりマジマジ見たことなかったけど、これって標準体型よね?


 一抹の不安を胸に抱きながらも、赤ん坊のこの体は長時間起きていられないため、また私は眠りにつくのだった。





 ベビーベッドで寝る娘を見ながら、私は複雑な心境になる。


 娘が産まれた直後に、夫のヴィダと話していた不安が見事に的中してしまったのを、この4ヶ月で嫌という程知ってしまったからだ。


 我が娘は美しい。絶世の美女という言葉ですら足りないほどに。


 赤ん坊の今ですらこの美しさなのだ。成長した姿を想像することすら恐ろしい。


 この美貌だ、この子の人生は決して平坦な道のりではないだろう。それでも、母として願う。

 どうか、この子の人生に幸多からんことを。


 一緒に過ごせる時間は、あと残り僅かなのだから。

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