第988話 冬休みイベントで行く旅行先を決めよう!
無事、〈学園出世大戦〉が終わった翌日。
昨日の今日なのでまだ学生はバタバタしているし、浮かれた雰囲気がすごい出ている。屋台とか出ててまだまだお祭り騒ぎは継続中だ。
12月25日。
前世ならクリスマスだが〈ダン活〉の世界にはクリスマスは無い。
ただ今年はそこら中が盛り上がっていた。
俺も会議のあとそのままシエラとリーナと外に出てお祭りを楽しんでいる。お祭りは大好きだ!
何しろランクが上昇した学生がかなり出たからな。
負けて悔しむ学生もいれば、勝ったのだろう浮かれてこの寒い中薄着で弾けている男子もいる。え? あの男子は負け組? そうか……強く生きろよ。
どうやらちょっぱやの試合進行により、昨日の夜には全てのギルドバトルが終わったらしい。
早い。
本当なら今日にでもCランク戦やBランク戦の決勝戦を行なう予定だったらしいのだが、Sランク戦とAランク戦が思わぬ即終了で第一アリーナと第二アリーナを使って予選が行なわれたらしい。Dランク50ギルドで争ったギルドバトルは圧巻だったそうだ。
そして夜には決勝戦が間に合ったと。
冬休みなので帰省する学生も多く、なるべく早い日程で終わらせたかったようだ。
俺たち、むっちゃギルドで打ち上げしていたな。そして打ち上げしている間に終わったのか。ちょっと決勝戦は見たかったな。
〈学園出世大戦〉ではAランクギルドから2ギルド、Bランクギルドから7ギルド、Cランクギルドから17ギルド、そしてDランクギルドから117ギルドがランク戦に勝ち、昇格している。
おかげで今はそこら中で勧誘合戦まで勃発しているようだった。
中には俺たちの方をチラチラ見てくる人たちもいる。
隣のハンナがそれを見て俺に言う。
「あれはスカウトしてほしいんだと思うよ?」
「いや、あんな控えめな態度じゃダメだろう。もっと売り込まないと」
「それができないのよね」
「見張りも多いですから」
見張り? はて、なんのことだろう? 気にしてはいけない気がする。
露店巡りの最中にハンナとバッタリ会ったので合流。あのチラチラこっちを見ながら俺たちの視界になんとか入ろうとしてくる人たちのことをハンナが教えてくれた。
中には黒ずくめのコスプレをしている人もいるな。気合いが入っている。
「〈エデン〉も大きくなったからね、売り込みにも勇気が要るんじゃないかな?」
「なるほど。とはいえ今は誰も入れる気はないけどな」
Aランクギルドとなって人数上限は40人に増えたが、〈エデン〉の方針の一つとして次の入学式まで加入は無しにした。
新しく真っ白な状態の新入生を捕まえて良い感じの
もう一つの理由として、今新しい人を加入させると〈上級転職チケット〉ももれなくプレゼントしなくてはいけなくなる。
12枚もあるこのチケットだが、すでに使い道は決めているので新規加入は待ってもらいたい。
「う~ん、これ美味しいよ! ゼフィルス君もどうかな?」
「おう、あーん」
「はい」
「ほふほふ、うん、こりゃ美味い!」
「でしょう!」
ハンナに春巻きっぽい屋台料理を分けてもらったのだが、これ料理アイテムだな? マジ美味いぞ! 中身はシャキシャキのモヤシにベーコン、チーズ巻で噛むとじゅわっと旨みが口の中に溢れるんだ。外側にちょろっと付けられたタレがたまらない。
そんな感想をハンナと語りながらもぐもぐしていると、何やら視線が突き刺さった。
「ゼフィルスはずいぶんハンナと仲良しなのね。あんなに自然にあーんで食べさせるなんて」
「やっぱり最大の障害はハンナさんですか。いえ分かっていましたが」
「ひゃあ! そ、そんなこれは、つい――」
「つい、であーんをする仲なのね?」
「なんだか手慣れていたように見えましたわ。ゼフィルスさんも迷いが無かったみたいですし」
「き、気のせいですよ~」
「そ、そうだぞ。ほら、シエラたちもどうだ? あーん」
「え? いえ、でも」
「ほら、シエラ遠慮するな、あーん」
「あ、あーん」
小さく口を開けたシエラにやさしく春巻きっぽいものを食べさせる。
春巻きっぽいものはハンナが四つ買っておいてくれたものだ。心配は無い。
さすがハンナだ。俺はハンナに深く感謝したくなった。
「さ、次はリーナだな。あーん」
「わ、わたくしもいただいて宜しいんですの! あ、あーん」
よろしいよろしい。
手慣れているもなにも昨日も3人にはあーんしたんだ俺は。今回はクレープの時のように俺の分が無くなることはない。存分に食べてくれていいぞ。
「うん。美味しいわね」
「これは美味ですわ!」
「な! これ無茶苦茶美味いよな!」
「喜んでもらえてよかったですよ~ここはオススメだったんです」
そんな感じに4人で屋台を巡っていると時間はあっという間に過ぎていき、午後。
ギルドハウスに集合する時間になった。ギルドメンバー全員集合だ。
昨日の宴会に今日のお祭りだ。お祭りを回りたい者も多かっただろう。
そんな感じで午前中は自由時間にしていたが、午後は全員集合してもらっていた。
色々と相談とか会議が必要だからだ。
「注目~」
俺が新しい壇上に立って言うと、ざわざわしていた全員が静かになり、俺に注目してくれた。ありがたい。話が早くて助かるぜ。
「みんな忙しいところ、お祭りの途中で集まってくれてありがとうな。今日は〈エデン〉の今後の方針や、冬休みの相談もしたくて集まってもらった」
そう、今は授業の無い冬休みだ。これが3週間続く。
期間は夏休みの半分しかないが、帰省する人もいるので全員の予定とか共有しておかなければいけないのだ。なぜなら、
「それで以前の夏休みでイベントをしたように、冬休みもやるぞイベント!」
「「「「おおお~!!」」」」
今回も冬休みイベントを開催するからだ。
何しろせっかくの長期休暇である。
遊ばなきゃ損だぜ!
「ということで今回もエクストラダンジョンに行きたいと思う! どこに行きたい?」
ちなみに夏休みに行ったエクストラダンジョンは〈食ダン〉と〈海ダン〉だった。
バカンスにぴったりなダンジョンだったな。
「〈海ダン〉は寒いだけでしょう。やめておいた方がいいわ」
「やっぱり〈食ダン〉かな? でも在庫はまだあるんだよね」
すぐに意見が出る。シエラとハンナからだ。〈海ダン〉はゴーストシップとか出るからな。シエラはそれっぽい理由で首を振った。いや、実際寒いと思うけどな。
ハンナからは〈食ダン〉希望だ。〈食ダン〉はモンスター弱いが食材が無茶苦茶美味い。
悪くはない。ただ前回行ったときにこれでもかと収穫したのでまだまだまだまだ残っている。食材を手に入れるために行くのであれば悩ましいところだ。
「なら、やっぱり〈秘境ダン〉じゃないかしら?」
「あそこは難易度が高いですが」
「いいじゃない。それに見合うだけの場所よ。温泉も気持ちいいらしいし、一度行ってみたかったのよ!」
「いいわね。私は賛成するわ」
「私もです!」
ラナが提案したのはエクストラダンジョンの一つ、〈秘境の温泉ダンジョン〉。通称〈秘境ダン〉。
見渡す限り雪に包まれ、その中の各所に秘湯と呼ばれる温泉のあるダンジョンで、環境デバフやモンスターも強く、とても難易度が高いことで有名だ。
ただ、それでも温泉に行きたい人は多く、この時期になるとかなりの入ダン者がいて秘湯巡りをするらしい。
ビックリすることにこのダンジョン、学園が観光地として力を入れているところで、1階層にはスキー施設まであるのだ。
〈食ダン〉でも丸太柵などの人工物が作られていたり、〈道場〉ではダンジョンの中に受付があったりしたが、ここも同じだな。
ただ、2層以降は人の手が入っていないフリーダム階層だ。
秘境と名の付く名所が山ほどあるダンジョンだが、夏休みのときは俺たちもまだ下級職で行けなかった。
しかし、今なら行けるだろう。
「なら、今回の旅行先が〈秘境ダン〉で良いと思う人は挙手を!」
「「「「「はい!!」」」」」
いいね。満場一致で可決した。温泉大人気だ!
「そういうと思ってな、今日はこれを用意した」
「あ!」
誰かの声が上がる。俺が取りだして見せたものは〈上級転職チケット〉、下級職メンバー全員分。
〈秘境ダン〉に行くことは大体予想が付いていた。むしろ誘導する気でいた。
だって温泉だし。この時期に入る温泉はとても気持ちが良いらしいのだ。俺も行ってみたいと思っていた。なら、行くしかないだろう。
「万全を期すために、全員上級職になっておこうか」
あ、秘湯は混浴なので水着は忘れないように。
◇
一方その頃〈ギルバドヨッシャー〉。
「ぎ、ギルド長! ギルド長! 大変! 大変なんです!」
「落ち着きたまえメイコ君。そんなに慌ててはできることもできなくなってしまうものだ。それで、どうしたのかね?」
「〈エデン〉から返事が来ました!」
「「「「「ガタガタガタッ!!!!」」」」」
「お断りの返事でした!!」
「「「「「―――ぇええええええ!?!?!?」」」」」
「どういうことだ!? ゼフィルス氏ーーーーー!!」
結局これから帰省ラッシュが始まるので、それが終わってから改めて話し合おうということに決まった。
―――――――――――――
後書き失礼いたします!
昨日発表がありましたが、〈ダン活〉小説6巻の発売日が決まりました!
TOブックスオンラインストアや、ブックウォーカーでもすでに予約を開始しております!
発売日や特典など詳しくは近況ノートをご確認ください。↓
https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16817330657831447307
書籍版〈ダン活〉もよろしくお願いいたします!
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