第946話〈ミーティア〉VS〈千剣フラカル〉Sランク戦決着
続いて脱落ギルドとなったのは〈ミーティア〉だった。
試合開始43分のこと、再び大きく試合が動き出す。
「おおおっと〈ミーティア〉が〈千剣フラカル〉に仕掛けたーーー!!」
「相変わらず見事な同時攻撃です。〈ミーティア〉が城落としに優れると言われている所以ですね」
キャスとスティーブンの実況が会場に響き、再び大きく盛り上がる。
そう、〈ミーティア〉が〈千剣フラカル〉の拠点に仕掛けたのだ。
〈ミーティア〉といえば魔法使い集団で構成されたギルドだ。
その実力は凄まじく、殲滅という分野であればAランクでもトップに来る技量を持ち、同じ魔法を揃えて放つ一斉攻撃は、
城を落とす技量において、〈ミーティア〉がAランクで最も強いと言われている所以だ。
それまでの小競り合いから一転、ポイントをぶんどりに拠点へ仕掛けてきた。
今回も、横に並んだ魔法使いたちが同じ魔法を使い、
さらに時にはタイミングをずらし、時には合わせ、緩急を付けるなど、遠距離攻撃にも工夫を凝らし、相手のリズムを狂わせる。
本来ならば拠点は防衛出来たとしても防衛モンスターは食われてしまうだろう攻撃。
しかし、相手はあの〈千剣フラカル〉だ。
〈ミーティア〉の一斉攻撃を叩き落とし、即反撃に転じてきた。
「〈千剣姫〉の反撃だーー! 千の剣が防御力紙な魔法使いたちに飛んでいくーー!!」
「当然〈ミーティア〉は結界で防ぎますよね。ですが、武士に結界は効かないのですよ。ほら〈
「キタキタキターー! たった2人での特攻!? かと思いきや一瞬で結界が斬り割かれ、襲い来る千剣の雨が降り注いだーー!!」
「さすがは〈鬼将〉と〈炎武〉です。防御破壊はお手の物ですね」
「〈ミーティア〉が阿鼻叫喚だー!」
「〈ミーティア〉も一筋縄ではいきません。すぐに隣接マスに退避していますね。それに〈ミーティア〉の魔法使いは回復にもバフにも通じていますから、そう簡単には倒せません。ですが、〈千剣フラカル〉が回復なんて見逃すはずがありませんね。ここは攻めるでしょう!」
「ああっとスティーブン君の言うとおり、〈千剣フラカル〉は拠点の防衛はどうするのか!? なんと打って出てきたー!? 確かにこの状況は打って出るしかないけども、これは大丈夫なのかーー!?」
「早速〈ミーティア〉は守りの乏しくなった拠点や打って出たメンバーに向けて魔法攻撃を開始していますね。ですが、〈千剣フラカル〉は人材も豊富。ちゃんとギルドバトルをする上で必要な人材を揃えてくるギルドなのです。そこら辺は経験の差かもしれません」
「なんと〈千剣フラカル〉も結界出して防いだー! もしくは叩き落としたーー!」
「〈ミーティア〉、この結界を破壊すべく〈流星のアンジェ〉のメテオが飛びます!」
「ああっと〈千剣フラカル〉の結界破壊され――てない!? いやすぐに張り直されたーー!? ダメージは軽微!?」
「1人や2人ではありませんね。あの結界、コンボスキルですよ。一方〈ミーティア〉の守りは先陣を切る〈鬼将〉と〈炎武〉が切り開きます! こちらの方が攻撃速度が速く、結界を張ってもすぐに割られていますね」
「すっごーー!! どっち見れば良いかわからーーん!?」
【侍】系統は防御破壊系のスキルをいくつも覚えられ、防御崩しが得意な系統として知られている。
リカの姉であるキリちゃんやリンもそれに漏れず、上級職なのに加え防御破壊スキルを多く所持していた。
「! 不利を悟った〈ミーティア〉が撤退していきます――いえ、あれは!」
「コンボ攻撃!? ここで【聖装】攻撃部隊を出してきたー!?」
「【聖本士】たちによる同時攻撃!? 〈ミーティア〉の奥の手と思われます!」
【魔装】系の上級職である【聖装】系
しかし、キリちゃんとリンがそれを両断した。
「特大の合体技を放ったー! ってそれを斬ったーーーー!?!? 斬れるのあれーー!?」
「さ、さすがは侍! 〈鬼将〉〈炎武〉が強力な合体技を相殺させましたー!! カウンターのようです! ここで完全に〈ミーティア〉が撤退を開始しますが!? そこに別働隊が奇襲を仕掛けました! かなり高度な隠蔽スキルで隠れて接近していた模様です!」
「〈千剣フラカル〉に追いつかれたーー! 乱戦に突入!? ああ、〈ミーティア〉がどんどん討ち取られていきます!」
「近接されたら魔法使いは弱いですからね。〈ミーティア〉はそれでも近接されたときの対処法をいくつも持っていたはずですが、どれも〈千剣フラカル〉のギルドマスター、〈千剣姫〉の千剣によって破られていますね。そして術者が狙われています。あっと千剣が降り注ぎました! 真っ先に嫌な手を打つ敵を倒す。セオリー通りとはいえ〈千剣姫〉の実力は本当に凄まじいです」
試合開始から52分。
とうとう〈千剣フラカル〉の拠点を攻めていた〈ミーティア〉の部隊が全滅する。
ギルドマスターアンジェも頑張った。〈流星〉の名に恥じない『メテオレイン』での殲滅攻撃、空から無数に降る隕石の雨は凄まじいものだった。
そこへ飛ぶ『千剣大軍』のぶつかり合いはド派手で観客席を大いに湧かした。
しかし結果から言うと、〈千剣姫〉の勝ち。
いや〈流星〉と〈千剣姫〉の対決、制空権の取り合いはどちらも譲らない手に汗握るものだったが、〈鬼将〉の間合いに〈流星〉が入ってしまったのが勝負の決め手になった。
〈鬼将キリエ〉の大技、『竜王の構え』から『竜峰一閃』がクリティカルで〈流星〉に決まって大ダメージを与えると、そこから流れが一気に〈千剣フラカル〉に傾いたのだ。
最終的に〈流星〉は〈千剣姫〉によって討ち取られ、〈ミーティア〉は大きくその戦力を削られてしまい、そのままカウンターによって〈ミーティア〉の拠点へとなだれ込まれて〈千剣フラカル〉が落として決着。
〈ミーティア〉が敗北した。
残り、ギルドは二つ。
観客席から熱狂的な声援と歓声が響き渡った。
しかし、ここで思いもよらぬ決着を見せることになる。
「お、おお? おおおお? これはいったいどういうことでしょうスティーブン君!」
「分かりません。今審判に確認しております。これは――〈獣王ガルタイガ〉が棄権!?」
「棄権!? ちょっとそれ見せてスティーブン君! ああああーー!? これはいったいどういうことだ! 会場スクリーンに突然現れた〈千剣フラカル〉勝利の文字! これは嘘偽りでは無く、〈獣王ガルタイガ〉が棄権した結果のようだーー!? いったいどういうことなんだー!」
そう、キャスが叫んだとおり、試合開始から1時間10分。
突然上空スクリーンに――勝者:〈千剣フラカル〉の文字が出てきたのだ。
当然〈獣王ガルタイガ〉は余力十分で残っている。
これはいったいどういうことかと誰もが誤報かと訝しんだ。
しかし、すぐにこれが〈獣王ガルタイガ〉が棄権したからだと知ることになる。
「みなさん、大変お待たせいたしました! ようやく〈獣王子ガルゼ〉と連絡が、というより実況席にご招待することに成功いたしました!」
「これから棄権の理由とか聞いていくからねー!」
そこで実況席に招かれた〈獣王子ガルゼ〉は応える。
「おう。〈獣王ガルタイガ〉のギルドマスター、ガルゼだ。悪いなみんな。これはうちのギルド――〈獣王ガルタイガ〉の都合なんだが、俺たちがSランクになると傭兵業に支障が出ちまうんだ。Sランクへの依頼なんてなかなか来るもんでもないからな。Aランクの座がちょうど良いんだよ」
「なるほどです。確かに〈獣王ガルタイガ〉は傭兵業を営むギルド、Sランクともなれば契約金も跳ね上がり、学生では手が出ない領域になってしまいそうですね」
「そういうことだ。Bランクだとちと頼りなさ過ぎるが、Sランクだと強すぎる。俺たちはAランクがちょうど良い席ってわけだ」
「はー、あ、じゃあ私からも質問ー! なんで今回の〈拠点落とし〉に出たのー! 特に〈カオスアビス〉なんてやられ損じゃない?」
「は! 上がる気も無いギルドも参戦してんだ、俺たちが出てもなんの問題もないだろ。Sランクになりたきゃ、せめて〈獣王ガルタイガ〉を越えて行けってんだ。まあ、〈千剣フラカル〉とやり合うとうっかり最後までやっちまいそうだから、ここでストップを掛けたわけだ。うちの若い奴らにSランク戦を経験させることも出来たしな」
「〈カオスアビス〉もその辺弁えていたんだろうねー。なるほどー」
「夢の〈千剣フラカル〉対〈獣王ガルタイガ〉の対決が見れなかったのは残念ですが、仕方ありません。ではこれにてSランク戦の結果発表に移りましょう」
「言うまでもないけど敢えて言うよーーー! Sランク戦〈拠点落とし〉! 勝ったのはーーー〈千剣フラカル〉だーーー!!」
「「「「「おおおおーーーー!!!!」」」」」
これにてSランク戦〈拠点落とし〉試合終了。
勝者―――〈千剣フラカル〉。
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