第939話 上級初!〈パーフェクトビューティフォー〉だー
パーフェクトでビューティフォー!
〈幸猫様〉〈仔猫様〉ありがとうございます! ありがとうございます!!
俺は深く深く〈幸猫様〉と〈仔猫様〉に感謝を捧げた。
レアボス周回、その第1周目でまさかの〈パーフェクトビューティフォー現象〉をツモ!
これもここに来る前にたくさんお供え物をしたおかげに違いない。
帰りましたら追加のお供え物を捧げますね!
「〈金箱〉が四つよ! 四つ出たわ!」
「ん! ん! ん!」
「本当に、ゼフィルス殿は持ってらっしゃいますね」
「上級ダンジョンは〈金箱〉が出やすいとは言うけれど、凄まじいわね」
「ハーッハッハッハ! 俺たちには〈幸猫様〉たちがツイてる! イエス〈幸猫様〉バンザイ!」
「「バンザーイ!」」
俺のバンザイに、普段ならまったく乗ってこず、その隙に〈金箱〉へ走るラナとカルアも今回ばかりは乗ってくれた。
何しろ〈ビューティフォー現象〉の時は争わず、みんなで宝箱を開けましょうという暗黙の了解がギルドにはあるからだ。いつのまにか出来た。
2人は共同作業、残り3人は単身で開ける。
これで5人全員が宝箱を開けられるって寸法だ。
〈ビューティフォー現象〉で争うなんてとんでもないことだからな。
「じゃあ今回は、私がゼフィルスと開けてあげるわ!」
「待ってラナ殿下。今回は私がその役目を担った方が良いと思うわ。最近の事もあるし」
「それこそちょっと待ったよシエラ。シエラは大事なのだから分け合うなんてとんでもないわ。ここは一番多く開けている私が分け合うべきなのよ」
「でも最近の私は宝箱を開けすぎていると思うの。少し緩急を付けた方がいいわ」
と思ったら何やらラナとシエラの間で何やら揉めていた。
いったいどうした!? でも近づかない方がいい気もする。そう『直感』が囁くんだ。
「もうこうなったらゼフィルスに決めてもらいましょう」
「そうね。それが一番良いわね」
「あれ!? 向こうから近づいてきた!?」
触らぬ神になんとやら。俺は近づくのをやめ、カルアより先に良い宝箱を見つけるべく動こうとしたところでラナとシエラがやってきてしまう。
神の方から近づいてきたらどうすればいいですか!?
「ゼフィルス、どっちと、その、共同作業するの?」
「ゼフィルスが決めてくれるかしら?」
「ええ……」
俺は頬が引きつるのを感じた。なぜだろう?
いや、〈金箱〉を開けるためだと思えば分からなくはない。
ここで「じゃあラナとシエラが共同作業をすれば?」なんて発言してしまえばどうなるのか? 『直感』が最大級の警報を鳴らしているのでそれは絶対に言えない。ここまで危ない危険と『直感』が警報を鳴らすのは初めてかもしれないぞ!?
ということで、俺は無難に答えるしかないのだ。
「えっと、じゃあ順番で。まずはラナからでどうだ?」
「良いと思うわ!」
「順番なら、まあ、そうね。今回はラナ殿下が、次は私が開ける形にしましょう」
「ふう。話が纏まってくれて良かった」
なんとか『直感』の教えてくれた通り無難な道を選んだことでやり過ごすことが出来そうだ。もう『直感』に足を向けて寝ることは出来ない。これからは『直感』様と呼ぶべきかもしれないな。ありがとう『直感』様!
先に共同作業に立候補したのはラナだったので、最初はラナからだ。
「それでゼフィルス、私はこの〈金箱〉が良いと思うのよ」
「お、おおう」
「ん、それ、すんごいやつ……」
さすがラナだ。適当に選んでいるかに見えるが俺とカルアが密かに目を付けていた宝箱だった。ラナの勘はいったいどうなっているんだろう?
そしてカルアがしゅたっと別の宝箱を確保していた。賢い。
「みんな配置について! 〈金箱〉を開けるわよ!」
「「「「おおー!」」」」
ラナの機嫌がすこぶる良い。こういう時は俺の役目をよく取っていってしまうのでラナに任せよう。
「まずはお祈りよ! 〈幸猫様〉〈仔猫様〉、ありがとうございます! 良い物ください!」
「良い物ください〈幸猫様〉〈仔猫様〉!」
お礼は何度言っても良い。俺もお礼を言おうとして――間違えて欲望を言ってしまったが、さっきたくさんお礼を言っておいたからきっとセーフだろう。
「ん!」
「ってカルアはもう開けたのか!?」
横を見ればカルアがキラキラした目でそれを手に取っていた。
一見ただのランニングシューズに見えるそれ。だが俺は知っている、それは『回避率上昇LV5』『移動速度上昇LV10』『高速戦闘LV5』が付いた
かなりの当たりだぞ!
「ゼフィルス、カルアに負けてられないわ! 私たちも開けるのよ!」
「お、おう!」
カルアのインパクトに驚愕していた俺をラナが引き戻す。
ラナはまだアレがどんな性能しているのか知らないからな。
特に『高速戦闘』がヤバい。素早さ上昇に加えてスキルの発動がやや速くなるというとんでもない性能を持っているのだ。ルルの2回攻撃とまではいかないが、LV10で1.2回攻撃くらいの速度が出せるのである。めちゃくちゃヤバかろう?
いや、それは後で驚けば良い。今はラナとの共同作業に集中しないと。
「行くわよ。ゼフィルス、集中して」
「おう!」
「せーの!」
「せっ!」
真剣に〈金箱〉を開ける。
何しろこの中にはカルア以上にとんでもないものが眠っていると『直感』が告げているのだ。
緊張の一瞬。
そして中に入っていたのは、竜の意匠が入ったアームレット。
「こ、これは!!」
「知ってるのゼフィルス?」
「ゲフンゲフン! いや、ともかくすぐに『解析』だ!」
あぶねぇ! つい言ってしまいそうになったがなんとか抑えた。これってセーフだよな?(アウト)
俺はラナにそれを持っていてもらい、〈幼若竜〉を取りだしてスタンバる。
カルアも集まってくるが先にラナからだ。これ、めっちゃ凄い装備なんだよ。
「〈幼若竜〉『解析』! 出たぞ、これは〈クーラーユニークアームレット〉だ!」
「「〈クーラーユニークアームレット〉?」」
ラナと並んだカルアも2人してコテンと首を傾げる姿が微笑ましい。
少し和みながらもその効果を説明する。
これの効果は至ってシンプルだ。
アクセサリー装備なのにそのスキルはたった一つ。
「こいつのスキルは―――『ユニーククールタイム軽減』だ!」
「クールタイム、軽減」
「のユニーク版ってこと!?」
カルアが前半、ラナが後半を引き継いでビックリした声をあげた。
ラナが持つ『祈り系クールタイム軽減LV5』が付いた〈慰安のタリスマン〉と同系統なため、ラナは一早くその優秀さに気が付いたからだろう。
『ユニーククールタイム軽減』とはユニークスキルのクールタイムを軽減するという意味だ。これだけでも鬼強いが、それだけじゃ無い。
これが誰でも装備出来るアクセサリー装備でユニークスキルのクールタイムを軽減してしまうのだと言えばこのヤバさが分かるだろうか?
なお、普通に『クールタイム軽減LV10』を持つ俺が身に着けても重複しないのが残念なところだ。
ラナにカルア、そして後から来たシエラとエステルも驚愕の声を上げる。
「ユニークスキルのクールタイムを軽減しちゃうの!?」
「ん! しゅごい!」
「なんてとんでもない、これが上級装備の性能なの?」
「これほどの品、とても値段など付けられない価値がありますよ。どういたしましょう?」
「もちろん使うに決まってるだろう! よっしゃー! 激レアの大当たりだー!!」
これ、レシピないから直接ドロップを狙うしか無いんだよ!
レアボスしか落とさず、上級ダンジョンから稀にしかドロップしない超激レアアイテムだ! おっしゃー! やったぜー!
もうこれ一つでビンタ30は堅い。
俺は〈幼若竜〉を置くとラナの手を握り腰に手を回す。
「わひゃ!?」
「凄まじい当たりだぜ! ひゃっほぉぉぉ!!」
そうして恒例のクルクルダンス。
ラナの口から一瞬妙な声が漏れた気がしたが、きっと気のせいに違いない。
そうれクルクルクルクル~~。
「ちょっと、もう、ゼフィルスは突然すぎるわ! もうちょっと手順を大事にしなさいよ!」
「いいじゃないか! なにせめでたいことだ! そうれクルクル~~」
口ではぷんぷんしているがラナの表情は笑顔だ。それにちゃんと乗ってくれている。
俺と一緒で心の中では激レア装備をツモってテンションが高くなっているに違いない!
「ん!」
「お? 次はカルア行くか?」
「ちょっとゼフィルス! 終わるのが早いわよ! もうちょっと!」
続いてカルアに行こうとしたらラナから抗議が上がる。
ははは、待て待て順番だ! 今日はみんなと踊るぞ! なにしろ上級で初めての〈パーフェクトビューティフォー現象〉だ! いつもガードの堅いシエラとも踊ってやるぜ!
「わ、私はいいわ。こら、ゼフィルス手を伸ばさないで」
「いいじゃないかシエラ、一緒に踊ろうぜ!」
「だ、だから待ちなさい」
シエラはやや強引に行く。
最近シエラには押せ押せで行けばイケそうだと分かってきたのだ。今日こそは踊ってやるぜ!
「むう、ゼフィルスったら、シエラにはなんだか本気な気がするのよね。私も一度拒否したほうがいいのかしら?」
「良いではないですか。素直なほうがゼフィルス殿はお喜びになりますよ。ラナ様は拒否してゼフィルス殿が引いてしまったらどう思われますか?」
「むう。難しいわ」
「うふふ」
なんだかラナが不満そうに、その横にいるエステルがニコニコしながら話し込んでいるが、その間に俺はとうとうシエラの腰を捕まえた。
「ひゃ!」
「さあシエラ遠慮するな、テンションに任せて踊ろうぜ~」
そしてクルクル回る。シエラは最初だから少しやさしめに。
ふっふっふ、ついにやったぞ! シエラともクルクルダンス、達成だ!
〈金箱〉から取りだしたレシピを持っていて手が塞がり、盾を出されなかったのが勝因。
なに、恥ずかしいのは最初だけだ! すぐに楽しくなるさ!
「も、もう。ゼフィルスは強引よ……」
少し顔を逸らして頬を赤くしたシエラがむっちゃグッと来た。
テンションがさらに上がる!
みんなで激レアドロップを祝い楽しんだ!
さて問題は〈クーラーユニークアームレット〉を誰に持たせるかだな。
最終的には彼女に持たせたいが、まだその時では無い。
明日は〈拠点落とし〉、候補はリーナか? いや、それは後で決めよう。エステルに持たせられればよかったんだが、〈イブキ〉でアクセ枠が埋まっているからな。残念。
「おっと、こればかりに注目してもいられないな。〈幼若竜〉『解析』――シエラとエステルの方はどうだった?」
あんまりクルクルダンスをしすぎると周回時間が終わってしまう。
ようやく落ち着いてきたので次へと行こう。
なぜかシエラが少し息を整えていたが、もう少しやさしく回ったほうがよかったかな? 次に活かそう!
カルアの〈アディオスダッシュシューズ〉を『解析』しながらシエラとエステルに問う。
「はぁ、私のはレシピが2枚だったわ。『解読』をお願いできるかしら?」
「私のはこの石版ですね。召喚盤、とはまた違う作りにも見えますが……」
「レシピ! それに、そいつは! よし、すぐにやっちまおう! 〈幼若竜〉『解読』! 『解析』!」
シエラの方はレシピが2枚。二つ入っていたってことはこれは
「読めるわ。これは〈回復薬の息吹〉と〈身代わりのペンダント〉のレシピみたい」
「〈回復薬の息吹〉と〈身代わり〉か!」
「ん。イブキ?」
「そっちの息吹じゃ無いな~」
〈回復薬の息吹〉のレシピ。これはなかなかの大当たりだ。
以前、現物の〈回復薬の息吹〉を10本ドロップしたが、それのレシピ版だ。
普通級でパーティのHPを300回復出来るというとても強力な効果だったが、これを高品質で大量生産出来るようになるといえばこれがどれほどとんでもない物か分かるだろう。
しかもこれ、飲む必要が無く、使えば効果範囲にいるパーティ全員が回復するのだ。
これを〈拠点落とし〉で使えばどれほどの猛威を振るうか、想像するだけでも恐ろしい。
ちなみに〈身代わりのペンダント〉の効果は『即死無効』。『耐性』じゃなくて『無効』という能力だ。強い! これもレシピでゲット! でもこれは作ってもしばらく売らないでおこう。
「エステルの方は、〈捕獲召喚盤〉だ」
「捕獲? 普通の〈召喚盤〉とは違うのですか?」
「違うのだな。普通の〈召喚盤〉はドロップした時点で何が召喚されるのかがすでに決まっている。しかしこの〈捕獲召喚盤〉は任意で捕獲したモンスターを召喚出来るようになるんだ!」
「ええ!?」
「まあ、ボスは捕獲できないから、通常モンスターっていう縛りにはなってしまうし、捕獲したモンスターはテイムと違って育成も進化もできないけどな。それでも相当強いぞ」
「それは……分かります」
エステルの目がキラキラして〈捕獲召喚盤〉に向かう。
ヤバいな。〈拠点落とし〉に行く前に〈捕獲召喚盤〉来ちゃったよ!
通常モンスターしか捕獲できないとはいえ、これ、デリート出来てしまうのでストーリーを進める毎にチェンジが可能なんだ。超強かろう?
上級なんてただのモンスターでも余裕で強いのですぐにでも選定して捕獲しに行かないと!
これは忙しくなるぞ!
いやぁ、今回の〈パーフェクトビューティフォー現象〉も大当たりだった!
やっぱり〈パーフェクトビューティフォー現象〉は最高だ!
――――――――――――
後書き失礼いたします(2023年7月3日追記)
昨日まで400コメントでカンストしていたのに、今日になったらカンスト突破した件!!
いったいなにが!?
まさかビンタの力でカンストを突破した!?
なにそれすごい!!
限界突破ビンタ(??)ありがとうございます!
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