第932話 〈マグメタ〉戦決着! 新攻略法を発見!?




「ギギギガガガガ!」


「姿が変わってくわ!? 『光の刃』!」


「変身中にまさかの攻撃!?」


〈マグメタ〉第二形態へメタモル中にまさかの攻撃にあう。しかし残念ながら届かない。


「わ! 攻撃が曲がったわ!」


 メタモル中は磁場の力が強くなり遠距離攻撃はほとんど逸れてしまうのだ。

 変身中に攻撃しちゃダメ、ということだな。


「今のうちに俺たちも回復しておくぞ!」


「と言ってもMPもあまり減ってないわよ」


「そうだな!」


 シエラの言葉に素早く同意を返す。

 速攻で第一形態が飛んだので俺たちのMPも全然減っていなかったな。


 ということでHPもマックス。MPも8割以上残した数値で変身が終わるのを待った。


〈マグメタ〉は一度球体になると、黒い岩肌がただのボール状へと変化。

 すると全身の岩肌から何本もの筒状の突起がニョキニョキ生えてくる。

 最後に中央に巨大カメラである目が出てきたら変身完了だ。


 あれが〈マグメタ〉の第二形態。〈砲台ゴーレムモード〉だ。

 30を超える砲から来る攻撃が、空中から一方的に降ってくるのだ。

 マジ恐ろしい形態だぜ。


 この形態の時も先ほどと同じようにゴーレムを生み出す。あ、さっきはゴーレム出なかったけどな。

 それはともかくこの形態の時でもゴーレムを倒すと降りてくるので、そこを攻撃するシステムは変わらない。

 ただ、ゴーレムと一緒に砲撃が降ってくるようになるだけだ。つまりはパワーアップ。


 俺はすぐに指示を出す。


「シエラ! あれはきっと砲撃だ! 上から砲撃が降ってくるぞ!」


「そうみたいね。どう見ても砲だわ。それがいったいいくつ付いているのかしら? 要警戒ね――『オーラポイント』! 『シールドフォース』!」


 シエラにもあれが何なのか分かったのだろう。

 味方に攻撃が行かないよう、さらにヘイトを稼いだ。


「ギギギガガガガ!」


「来るぞ!」


 ドドドドドドン!!

〈マグメタ〉の初撃。

 こっちの届かない空中からの一方的な射撃だ。

 球体の身をその場で回転させながら、砲をシエラに向けてドンドン撃ってくる。


「まずは受けてみるわ」


 シエラの言葉と同時に四つの盾が展開。

 シエラに一発の砲撃を通すとその後の砲撃は全部防いでいく。

 その一発の砲撃はシエラの大盾に命中した。


「く、なるほどね、これは連続では受けられないわね」


「『回復の祈り』!」


 ダメージはそこそこ。援護射撃に近いので威力は高くない。

 だが、そう何度も攻撃を受けていると気が付けばとんでもないダメージになっているだろう。シエラの表情に真剣味が増す。


「シエラ、大丈夫か!」


「ええ。自在盾で防げば問題なさそうよ。あなたたちも十分気をつけて!」


「もう! そんなところから一方的に攻撃なんて卑怯よ! 降りてきなさい!」


 シエラのHPはラナの回復と付与した継続回復によってすぐに回復する。

 自在盾からのフィードバックはせいぜい20~30程度のようだが、ラナの継続回復も1秒で10~20回復なのであっという間に回復しきってしまう。

 一方的な攻撃にラナがいきどおっていた。


「ギギギガガガガ」


 ラナの言葉に反応したわけではないだろうが、〈マグメタ〉が次の行動を起こした。

 身の下部の部分が開くとそこから球体の石を何個も落とし始めたのだ。


「今度は何?」


「シエラ殿、とりあえず下がってください」


「ん。なんだか『直感』が危険って言ってる」


 カルア正解だ。

 あれはさきほど言っておいたゴーレム。

 ほら球体から手が生え、足が生え、変身していく――。


「きゃー! ゴーレムじゃないの! 『聖光の宝樹』!」


「「「――――!?」」」


「あ」


 とうとう姿を現したゴーレムたちだったが、ビックリしたラナがエリア攻撃魔法を発動。

 地面から光の樹木がニョキっと立ってゴーレムたちを襲ったのだ。

 しかも俺ですら予想外なことを起こした。


 ニョキニョキっと伸びまくった光の木は、そのまま〈マグメタ〉の下部、開いたままの身に突き刺さったのだ。


「!?!?!?!?」


「ま、マグメターー!?」


 思わず叫んじゃったよ、おい!?

 ちょ、それ当たるのかよ!? ゲームではそこまでニョキニョキ伸びなかったのに!? 磁場はどうなった!? エリア魔法だからか!?

 まるでクリスマスツリーの天辺に飾られる飾り物のようになってしまった〈マグメタ〉。

 しかもそれで終わらない。


「『ナンバーワン・ソニックスター』!」


 気が付けばカルアが木を登って〈マグメタ〉の砲を足場に立っていた。

 ええ!? そこ立てんの!? というか宝樹も登れんの!? 『悪路走破』か!?

 あ、宝樹消えた。足場に出来てもあんなすぐに消えるんじゃ普通は真っ逆さまだが、ユニークスキルを発動したカルアならあの時間で登り切れるらしい。マジかよ!?


 さらに驚愕は続く。


「『64ろくじゅうよんフォース』! 『スターバースト・レインエッジ』! 『スターブーストトルネード』! 『32スターストーム』!」


「ギギギガガガガ!?」


「ちょ、カルアマジか!? っていうかマジか!?」


 なんとカルアが空中に浮かぶ〈マグメタ〉の砲を足場に取り付いてめっさ攻撃を開始したのだ。

 しかも〈マグメタ〉はどうやらカルアを振りほどくスキルやらは持っていない模様で、あちこちに射撃をドンドン撃ち出して抵抗してはいるもののカルアが振り落とされることは無いという始末だった。

 ラナの宝樹も消えてしまい、あの高さから落下したらとても大変だと心配になるが、そういえばHPがあるから落ちても平気なんだよな。


 というかそうじゃない!? あれってもしかして、リアル特有のハメ技じゃないか!?

 ゲームでは出来なかった新しいハメ技まさかの発見!?


「すごいわねカルア! 私の攻撃は逸らされちゃうのにカルアは全部当たってるわ! カルアーその調子よー!」


「ん! 『二刀山猫斬り』! 『デルタストリーム』!」


「ギギギ!?!?」


 やっべぇ。〈マグメタ〉マジでカルアを引き離せないっぽい。砲を足場にしているから攻撃されない安全圏で攻撃できるのだ。むちゃくちゃやべえぞ! 新発見だ。

 あ、ただ砲を撃つ大きな音を間近で聞いているからだろう。カルアの猫耳がヘにゃんとしていた。それ以外は順調のようだ。


「エステル!」


「これで、最後の1体です! 『ロングスラスト』!」


 下では生み出されたゴーレムが暴れていたので俺とエステルでこれを掃除。

 すると案の定。

 砲撃しながら〈マグメタ〉が地上に落ちてきていた。

 ということで、


「俺も乗るー!」


「私も乗ります」


 俺とエステルのアタッカー組もカルアに便乗して砲身を足場に乗り込んだ。

 俺はバランスを取るのが難しかったので左手の盾を背中に仕舞い片手を自由にしていつでも砲に掴まれるようにしておく。安全圏だし盾は要らないだろうという判断。

 左手で1本の砲身を掴んでバランスを取りながら、1本の砲身を足場にして剣でサクサク斬っていく。


「おらっしゃー『勇者の剣ブレイブスラッシュ』! 『ライトニングバニッシュ』だ! 『聖剣』!」


「いきます。『レギオンスラスト』! 『閃光一閃突き』!」


「ん! 覚悟」


「ギギギガガガガ!?」


 しばらく地上に降りてシエラや周りを砲撃しまくっていた〈マグメタ〉だが、すぐにまた空中へと逃げる。

 これのせいでこいつを倒すのは時間が掛かる、はずだったが。


「ゼロ距離『サンダーボルト』! 『ライトニングバースト』! 『ライトニングスラッシュ』!」


「『戦槍せんそう乱舞』!」


「ギギギガガガガ!?」


「あ、二つ目のHPバーも消えたわ、3人とも降りてきてー」


 そして二つ目のHPバーがあっという間に消えさった。

〈マグメタ〉が再び変身し始める。


「わはははは!」


 いややべぇわ。

 まさかこんなリアル攻略法があっただなんて。笑いが止まらん!


 俺とカルア、エステルは足場が消えて空中に投げ出されてしまったが普通に着地。

 これくらいの高さならノーダメージなので余裕だ。


「まさかの攻略法だった!!」


「あら、あなたが驚いているなんて珍しいわね」


 シエラがちょっと驚いた仕草で見てくるが頷くしかない。

 リアル攻略法発見とかテンション上がりまくりだろこれ!

 とはいえ第一形態と第三形態には使えないっぽいけどな。


〈マグメタ〉の上に飛び乗ればワンチャンかと思うかもしれないが、それはゲームでも出来た。そしてそのまま〈マグメタ〉が上昇すると天井と〈マグメタ〉の間に挟まれて退場してしまうので、今まで〈マグメタ〉に乗って嵌め技なんて出来なかったんだ。

 ということでこのリアル攻略法発見はやばいぞぉ。

 あとでラナとカルアはたくさん褒めてあげよう。カレーもあげよう!


「また変身。今度はどんな形態になるのかしら?」


 ラナの言葉にこいつの第三形態を思い出しつつ〈エリクサー〉で補給する。

 いや、思い出すまでもない。〈マグメタ〉の変身がもう終わりそうだからだ。

 砲身はそのままに、新たに腕と足が生えてきた。

 しかし、その腕は短く、足なんて腿から脹脛ふくらはぎまでが無くて本当にくるぶしから足先までしかなかった。


 見た目はどこのピンクの星の戦士、という姿になってしまう。黒いけど。

 名称もそのまま〈星の戦士〉モードと呼ばれていたからな。


 しかし、これが侮れない。


「ギガーー!」


「! シエラ回避!」


「っ!」


 変身していた〈マグメタ〉が空中から落下し、否、飛び掛かりシエラを踏みつけようとしてきたのだ。

『ストーンスタンプ』というスキル攻撃だ。

 シエラはそれを回避するが、


「ギガー!」


「今度はパンチ!? いきなり接近戦で来たわね!?」


 ラナのビックリした言葉の通り、〈マグメタ〉第三形態はまさかの接近戦をシエラに挑んだのだ。

 そう、第三形態はまさかの接近戦型。

〈星の戦士〉、星っぽい見た目なのにまさかの戦士と言われていた所以である。

 短い腕のパンチをシエラが防ぐと、〈マグメタ〉はふわりと浮く。


「! そう攻撃してくるのね! 『城塞盾』!」


 浮いたと同時に足2本でキックキック。さらに爪先立ちのようになって回転しながらのドリルキックととんでもない俊敏な動きをしてくる。


「なんですかあれは!?」


「ビックリ形態!?」


「驚いている暇は無いぞ! シエラをフォローしつつ攻撃だ! 『シャインライトニング』!」


 浮きながら腕と足を十全に使った攻撃方法に度肝を抜かれるメンバーたち。

 あいつは磁場の力のおかげであの重そうな見た目のくせにふんわりと浮くのだ。

 今までとはまったく違う攻撃方法だし、ビックリするよな。

 俺も最初は驚いたよ。


 しかし、とても有効な攻撃であることは確かだ。

 大きさ7メートル級の巨石の回転ドリルキックである。むちゃくちゃやべぇ。

 さらには縦回転してのローリングかかと落としやストーンで踏みつける攻撃。

 浮いているからこそできる見たこともない攻撃方法にみんな圧倒されていた。


 さすがのシエラでも自在盾がほとんど機能していないので苦戦していた。

〈マグメタ〉のとても軽いフットワークの猛攻が続く。ダメージもかなりのものだ。


「『鉄壁』!」


 シエラはその場から動かない『鉄壁』を使って相手の動きを止める狙いのようだ。

 空中をふわふわ浮きながら攻撃していた〈マグメタ〉がその場に留まる。


「今だ攻撃して崩せ! シエラへの攻撃を和らげるぞ! 『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!」


「ん! 『64フォース』!」


「『戦槍せんそう乱舞』!」


「シエラ回復するわ! 『大回復の祝福』!」


 猛攻に晒されても崩れないシエラが最高。

〈マグメタ〉はシエラに掛かりきりだが、体にニョキっと生えている砲が死角無く周囲に攻撃を仕掛けてくる。

 回転ドリルキックしながら全方位に砲撃をバラまく攻撃はマジ避けられない。

 カルアは避けてるけど。猫人の『直感』かな?


 俺、カルア、エステルはダメージを受けつつもそのままガンガンダメージを与えていった。

 ラナはシエラが危険な状態なので攻撃には参加せず回復重視のようだ。たまに砲撃もラナに届いてしまうので無理に手を広げる必要は無い。回復重視、そのまま頼む。


 よし、そろそろ仕掛けるぞ!


「いくぜ! カルア、合わせてくれ! 『太陽の輝き』! 『陽光剣現』! 『サンブレード』!」


「ギガ!?」


 防御力デバフで防御力を下げ、自己バフで強力に仕上げた一撃を背中に叩き込む。

 すると、衝撃に〈マグメタ〉が仰け反った。そこをカルアが突く。


「そこ、『急所一刺し』!」


 カルアの『急所一刺し』はノックバック中に突き刺すとダウンする確率が上昇するスキル。

 巨石に急所とかあるの? と思うかもしれないが、〈マグメタ〉は目が弱点だ。

 カルアは目の部分に真上からトドメを刺すように短剣を突き立てた。

 そして巨体の〈マグメタ〉が地面に落下する。


「ギ!?」


「ダウン!」


「総攻撃ですね! ここで仕留めます!」


〈マグメタ〉がひっくり返るようにダウンした。そのままゴロンと転がり弱点の目が真横を向く。

 俺はそこへ向けて『ソニックソード』で素早く回り込んで切りまくった。

 エステルも付いて来て一緒に攻撃する。


「うおおおおりゃああああ!」


「『閃光一閃突き』! 『ロングスラスト』! 『プレシャススラスト』!」


 俺たちの猛攻に耐えかね、とうとう〈マグメタ〉のHPがゼロになる。


「「あ!」」


「ギガ……ギ……」


 そして〈マグメタ〉は戦闘が始まってからとんでもない短い時間で膨大なエフェクトを溢れさせて沈んで消えたのだった。


 その後に残ったのは――〈銀箱〉だった。

 惜しい!? ええいもう一回だ!

〈金箱〉を出せーーー!!


 タイムは? え? 10分? 10分で終わったの?

 カルアの新ハメ技がタイムを縮めたのだろう。

 次はもっと早くなるはずだから、もしかしたら今日中にLV30もあり得る?

 テンション上がってきたーー!!


「さらに上級ダンジョン、2個目の攻略者の証ゲットだぜ!」


「…………はぁ。本当に手に入れちゃったわね……しかもこんなにあっさりと」


 シエラがなぜか憂いていたが、どうしたんだろう?

 もっと喜ぼうぜ!


 さあ、続きの周回だ!



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