第909話 〈上級孵卵器〉完成! 〈青空と女神〉へ出発!
学園の方針としては〈上級転職チケット〉収集のため、まずエリアボスの討伐数を稼ぎたい。
その方針はとても理解できる。〈エデン〉だって〈公式裏技戦術ボス周回〉で〈上級転職チケット〉を始め、様々な装備やアイテム、レシピなどをゲットしているのだから。
ボスの周回はとても大切。
しかし、そのために生産職の〈
現状エリアボスを狩れているし、ボスから上級装備がドロップするのだから上級装備の生産は後回しにするという話だな。
ということで現在は〈転移水晶〉を始め、上級の有用アイテムはハンナとソフィ先輩しか作製出来ないという状況となっている。ソフィ先輩には別で頼みたいことが盛りだくさんなので実質ハンナのみだ。
とっても儲かるのでそれも良いのだが、さすがにハンナが大変になってきている。
そこで人手を増やそうという
とはいえ〈上級転職チケット〉の数がまだ足りていないので、今すぐは難しい。
しかし〈キングアブソリュート〉が生産ギルド〈青空と女神〉に〈上級転職チケット〉を渡した話は徐々に広がりつつある。
他のギルドがチケットを使って同じように行動しアルストリアさんたちを引き抜かないとも限らないのだ。勧誘を断りまくっているという2人とて〈上級転職チケット〉をヒラつかされたら転向もやむなしとなるかもしれない。
故に、先に〈エデン〉が話を持ちかけることにした形だな。
アルストリアさんとシレイアさんはやらん!
「〈エデン〉の専属ですか!」
「ああ。まあ、今とやり方は大きく変わらないさ。ハンナと一緒に錬金工房も使っていいし、そこで作った物は〈エデン店〉で売り出すといい。もちろん上級品を、だ」
「え? え? 私たちが〈
信じられないとでも言うようにアルストリアさんとシレイアさんが沸く。
そこへハンナが説得しにいった。
「落ち着いてください2人とも。実は学園は生産職の人手不足なんです。2人が協力してくれるならもっとたくさんの上級に必要なアイテムを生産できると思いますから」
「ですがハンナさん。〈上級転職チケット〉はその……」
「本当に貰ってもいいものなのでしょうか?」
2人の懸念は分かる。〈上級転職チケット〉はお高いものだ。
いくら〈エデン〉の専属になるという条件があるとはいえ、おいそれと受け取るには精神的なハードルが高いだろう。
その辺の説得はハンナに任せる。別に今すぐという話でもないのだ。
〈上級転職チケット〉の数も足りなければ設備も足りていない。
Bランクに上がり、錬金工房の部屋を大きくして3人でも活動が余裕になれば2人を迎えることが出来るだろう。
ちなみに彼女たちのLVは73だそうなのでカンストは目の前だ。レベル高いな! ハンナが育てたらしい。まあ、〈エデン〉の素材を使っていれば、さもありなんである。
「あ、ゼフィルス君はそういう意味で渡しているのではなくて、純粋に〈エデン〉の専属になってほしいという意味なので、勘違いしないようにお願いします」
「あ、分かりましたわ」
「そ、そうですよね。ビックリしました」
何かビックリすることが別にあった模様。〈嫁チケット〉……。また忘れてたぜ。
「コホン。上級職になれば〈転移水晶〉や〈エリクサー〉とか、色々作れるのが増えますし悪い話ではないと思いますよ」
「そうですわね……」
「まあ、答えはすぐじゃなくても構わないから。ちょっと考えておいてくれ」
「は、はい!」
そう言って後の説得をハンナに任せて俺はその場を離れた。
もうすぐ、冬休みに入る。
その分ダンジョン週間は無くなってしまうが3週間の休みはデカイ。
ここで俺は〈上級転職チケット〉の入手を始め、色々と手を尽くす予定だ。
アルストリアさんとシレイアさん分の〈上級転職チケット〉も取りに行かなければならない。妖怪は撲滅だ! 忙しくなるぞ~。
その後、メンバーが全員集まるのを待っていたら午前中が終わっちゃいそうだったので、アイギスが到着したところで俺たちは〈青空と女神〉へ向かうことにした。
例の〈聖竜の卵〉を孵化させる〈上級孵卵器〉が完成したからだ。
「これで聖竜の子と会えるのですね。とても楽しみです」
そう楽しそうに言うのは俺の隣で〈聖竜の卵〉を抱っこしながら歩くアイギスだ。
優しく卵を撫でる表情が聖母そのものである。聖竜め、羨ましい限りだ。
「まさか本当に竜種と会えるかもしれないなんて、不思議な感覚です。少し前に〈ホワイトセイバー〉に行く機会があったのですが、フレックDさんが顎が外れそうなくらい唖然としていましたよ。あ、もちろん秘密にしてもらっています」
アイギスと〈ホワイトセイバー〉の交流は続いている。
この世界では竜種は伝説、物語に登場する空想上のモンスターという認識が強かった。
だからこそアイギスは【竜騎姫】になることを諦めていたというのに、アイギスはその【竜騎姫】に就いちゃったからなぁ。〈ホワイトセイバー〉のみんなはさぞかしおったまげただろう。俺も見てみたかったぜ。
アイギスの話を聞きに徹しているとすぐに目的地に到着した。
〈青空と女神〉ギルド。そのギルドハウスの前には1人の見知った人物が立っていた。
ギルドマスターのメーガス先輩だ。
「お待ちしていましたゼフィルスさん」
「あれ? メーガス先輩が出迎えなんてしていいの?」
まさかギルドマスター直々の出迎えに俺は驚いて思わず問うた。
「はっは。上級職が3人に増えたことで僕もトップの座から降りましたからね。今はしがない
「ええ! メーガス先輩ギルドマスターじゃなくなったのか!?」
なんてビックリなニュースだ。
3年生で卒業間近ということもあり、若い後進を優先して〈
そう思ったのだが、どうやら俺の早とちりだった模様。
「そう驚くことでもないですよ。実力が上の者がギルドを引っ張るのは当然のことですから。それに僕ももうすぐ卒業です。そろそろギルドマスターの座を誰かに譲る時期かと考えていたのです」
「そうなのか」
本来ならギルドマスターの入れ替わりは冬休みが明けてからがほとんどのようだが、生産職では早ければ11月後半には行なうものらしい。
そういえば生産系の学園三大ギルド〈生徒会〉も世代交代するとかハンナも言ってたっけ。
11月に行なわれた学園祭では生徒会生産隊長選挙のアピールをしたとかなんとか。選挙自体は冬休み明けだが、世代交代の準備はもう始まっているということだろう。
「こんなところで話すのもなんですから中にどうぞ。ソフィが中で首を長くして待ちわびていますよ」
メーガス先輩に案内されて中に入ると、前と同じ服飾工房と思われる場所に通された。
あのやたらソフィ先輩のために絡んできたフリーン先輩が見当たらない。果たしてどこに行ったのだろう? まさかつまみ出されたか。ありそう。
しかしそんなこともすぐに忘れる。
そこには椅子に腰掛けていたソフィ先輩と、〈上級孵卵器〉が置いてあったからだ。
「ゼフィルス様、アイギス様。お待ちしておりました。こちらがご依頼のあった孵卵器です」
ソフィ先輩が立ち上がると同時に紹介してくれた〈上級孵卵器〉に注目が集まった。
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