第907話 打ち上げ&〈アークアルカディア〉昇格者発表!
続いて向かったのは防衛の功労者、ハンナとラクリッテの所だった。
「ハンナ、ラクリッテ、お疲れ様~」
「あ! ゼフィルス君、いらっしゃ~い」
「ぜ、ゼフィルスさん! お、お疲れ様です!」
「お~う、ラクリッテはもう少し気を抜いてもいいぞ?」
「は、はい!」
今回、ハンナは【アルケミーマイスター】になって初めて作製できるようになった、上級アイテムの〈ゴーレム〉を戦場に投入した。
――ゴーレム。
これはなかなかに有用で、擬似的なテイムモンスターのようなアイテムなんだ。
ロマン溢れるプレイヤーのためにアップデート出来るシステムになっており、どんどん強く
戦闘のアタッカーからタンクまで多くのポジションで活躍し、使用者の命令に忠実に動いてくれる。
初見殺しにめっぽう強く、過去ゲーム〈ダン活〉ではこのゴーレムを最初にボス部屋に入れ、ボスの初撃を防ぐことで大きく活躍してきた実績を持っているんだ。その節では大変お世話になりました。
アイテムなので誰でも使えるというのがミソだな。1ギルドで1体までしか出せない制約はあれど、とても頼りになった。
俺もハンナ用に用意したかったんだがゲット出来ず、今回は見送りかと思っていたらハンナがすでにレシピを持っていた不思議。そんなわけで本日初お披露目となったわけだ。
名前はコテちゃんと言ったか。なかなか強いらしく、Bランクである〈カッターオブパイレーツ〉の選手1人を倒すのに大きく貢献したのだという話を聞いた。
これでハンナはさらに大きな戦闘力を得たな。本当にどこへ向かう気なのだろうか?
「ハンナちゃん凄かったんですよ~。アイテムをこう迷いなく投げ込んだり、使ったこと無い大砲をドーンドーン命中させたりして。Bランクの戦闘職さんを倒しちゃったんですから!」
「えへへ~。普段錬金砲を撃ってたから慣れてただけだよ~」
ハンナの錬金砲って片手銃じゃん。物見台設置型大砲だと全然違うと思うのだが、さすがはハンナ、ということにしておこう。
それからしばらく話し合ってその場を離れた。
次は、ルル、シェリア、リカ、ノエルの所に行くか。
「よ、盛り上がってるか~」
「あ! ゼフィルスお兄様なのです!」
「ゼフィルス殿、もちろん盛り上がっていますよ」
「ゼフィルスも楽しんでいるか?」
「あ、ゼフィルス君、この料理凄く美味しいんだよ。食べてみて~」
「おう、ありがとな」
ノエルにお皿をもらってもぐもぐ。なるほど、食通のノエルを唸らせるだけあるぜ。これは美味!
「こっちでは何の話をしていたんだ?」
とりあえず食べながらそう聞いてみるとシェリアの目がくわってなった。
「聞いてくださいゼフィルス殿、ルルの勇姿を。ルルはアイギス殿と分かれた後、たった1人で3人の敵に囲まれてしまったそうなんです」
「あ! それな、ルル大丈夫だったのか?」
「あい! 返り討ちにしたのです!」
元気があってよろしい!
返り討ちにしちゃったのか~。
「うむ。私とノエルが拾った時にはすでに終わった後だった。エステルに聞けばほぼルル1人で討ち取ってしまったらしい」
「私たちも心配して駆けつけたんだけど、あれ絶対応援必要無かったよねってくらいルルちゃんが圧勝だったんだよ~」
なるほど~。
ここではどうやらルルの武勇伝に集まっていたみたいだ。
ロード弟によって分断されてしまったルルとアイギス、アイギスの方は俺たちが駆けつけられたが、ルルの所はちょっと遠まわりでエステルが駆けつけ、その後はリカとノエルが駆けつけることになったようだ。
「へたをすればルルが一方的に負けていたかもしれない状況で、やっとの事で駆けつけた私たちが見たのが、先ほど言った光景だったわけだな」
「ルルちゃんは強いね~」
「えっへんなのです」
「ルルがとても可愛いです。私もその場に居たかったです」
全員でルルを絶賛だ。
俺も手放しで褒めた。
さすがは【プリンセスヒーロー】のルルだ。
スペック的に並の相手では歯が立たないとはいえルルのこの体である。心配事は尽きない。だが、やっぱりスペックではどう逆立ちをしても勝てなかった模様だ。
結果はルルが通常攻撃の連打、2回スキル攻撃の連打で打ち勝って普通に終わったらしい。バフもデバフも変身も使っていないというのだからとんでもない話だ。
ルルは上級職が2人分歩いているのと変わらないからな。倒すには並の上級職なら2人はいないと話にならない。それなのにルルの相手をしたのは上級職1人に残りは下級職だったそうだ。さもありなんである。
しばらくノエルのオススメを食べながらルルの可愛い戦いっぷりを聞いた後、また移動。
移動する前には、エリサやフィナリナをはじめとする〈アークアルカディア〉のメンバーたちも集まっていたよ。さすがはルル。人を引きつけて止まない魅力を持っているんだぜ。
今度はパメラとカルア、レグラムとオリヒメさんがいるエリアへ向かう。
「という感じに避けると良い感じに反撃をズバーっと行けるのデス!」
「ん!」
「なるほど、ではこう攻められたときはどうする?」
「(にこにこ)」
着いた時にはまだ俺が居ることを気が付かずに何やら熱く語り合っていた。
どうやら速度特化型の3人だからこそ通じる話題のようだ。
「レグラムさんは肉体防御という手段が使えるデース! だからこの時は避けるよりか押し通った方が有利ではないかと思うデス!」
「ん!」
「確かに、ここは下がるのではなく、前進し懐に入り込むべきか。いや、頭上を取るべきか?」
どうやらレグラムの動き、戦術についてパメラとカルアが身振り手振りで相談に乗っている様子。その姿をニコニコのオリヒメさんが見ている図だった。
「オリヒメさんもお疲れ様、ここは熱くなっているなぁ」
「ゼフィルスさんも見ていきますか? 和みますよ」
「和むのはオリヒメさんだけだと思うけどな。だが、少しだけ見ていこうか。何を熱心に話し合っているんだ?」
「今は三次元の動きが可能になったレグラム様がパメラさんやカルアさんに相談して動きを学んでいるところですね」
なるほど。確かにレグラムは【ウラヌス】になって空中機動型剣士というとんでもない剣士へと目覚めた。
これにより、回避アタッカーという魅力がとても強く出てきているのだが、レグラムはまだ自分の動きに納得しておらず、三次元の動きをする回避アタッカーであるパメラとカルアに教えを願った事が真相のようだ。
パメラが意外にも理知的に説明できている不思議。でもカルアは「ん」としか言ってなくない?
「オリヒメさんはなぜここに?」
「うふふ。見ていて面白いですから。レグラム様はずっと見続けても飽きません」
「さいですか」
オリヒメさんの惚気を聞き、3人が白熱して戻って来ないため次に移動する。
続いては、アイギスとタバサ先輩のいるところにしよう。
「お疲れ様~、話に参加してもいいかな?」
「あ、ゼフィルスさん。もちろんですよ」
「ちょうど私たちも待っていたところよ」
「おや? 待っていたとは??」
「そろそろ私たちの番かなと思いまして」
「それと、アイギスがゼフィルスさんにお礼を言いたいそうなのよ」
「礼?」
「はい。その、遅れて申し訳ないのですが、あの時は本当に助かりました。助けに来ていただいてありがとうございますゼフィルスさん」
アイギスがお礼を言いたいのはおそらくピンチの時に俺たちが駆けつけたときのことだろう。どうやらタバサ先輩にもお礼を言っていたらしかった。
「どういたしましてだ。いや~、助けられて良かったよ」
「はい。その、ゼフィルスさん、とてもかっこ良かったです」
「羨ましいわねアイギス。私も絶体絶命のピンチを救ってもらったことがあるから気持ちは少し分かるわ。私も同じ事があったらまた助けてくれるかしら?」
「もちろんだぜタバサ先輩。アイギスも、仲間がピンチなら俺は絶対に助けに行くぞ」
「うっ、とてもキュンとしました」
「はぁ。今のはとてもときめいたわ。もう一回お願い」
「タバサ先輩!?」
うむ、タバサ先輩がお茶目さんだ。
元々だったけど、アイギスはこのタバサ先輩を見慣れていないのか割と驚いていたな。
それから改めていくつかギルドバトルの話をして、話題は例の〈聖竜の卵〉になる。
「そうだ、先ほど連絡が来たぞ。どうやら〈上級孵卵器〉が完成したらしい」
「! ついに出来ましたか!」
このギルドバトルには間に合わなかったが、これでようやく〈聖竜の卵〉を孵すことが出来る。Aランク〈拠点落とし〉には間に合うな。
「楽しみにしていてくれアイギス」
「はい!」
アイギスが喜色を浮かべていた。
これでアイギスも万全な態勢で戦えるようになるからな。今回みたいな目にあっても大丈夫だ。
アイギスも気合いが入ることだろう。
テンションの上がったアイギスと、それを喜ぶタバサ先輩と3人でもう一度乾杯して呑み、その後俺はまた移動した。
最後はメルト、ミサト、シズの所だな。
「メルト、盛り上がってるか~」
「ゼフィルス、珍しい組み合わせだが、盛り上がってはいるな」
メルトがそう言ってジュースで口を濡らす目の前では、ミサトとシズが今日のギルドバトルの最後について語り合っていた。
「では私の銃弾を反射跳弾させて敵の不意を撃つことは難しいと?」
「う~んちょっと勿体ないかなって。鏡は脆いから反射出来る数に限界があるんだよ。できれば相手の攻撃を反射するのに使いたいかな~」
「回数制限ですか。では続いて、地雷を仕掛けたとします。爆発したとき反射はどう動きますか?」
「え? う~ん、ただの壁になっちゃうんじゃないかな~。反射してもダメージ2倍とかには成らないと思うよ?」
「なるほど」
ミサトの言葉にシズがメモを取っていた。
メルトが俺の横に立ち解説してくれる。
「最後のバトル。シズの『マルチバースト』が相手に避けられた時に偶然ミサトの鏡にぶつかって反射し、相手に直撃したんだ。それのせいでシズから新たな戦法が試せないか話を聞いている所だな」
「反射、跳弾か~、ロマンだな~」
跳弾はロマン。シズが食いつくのも分かるぜ。
だが、〈四ツリ〉はまだまだ【色欲】の発展途上、さすがに数発攻撃を反射すれば劣化して壊れてしまうためその戦法は使えないだろう。
壊れたら次の鏡を張るのにクールタイムが掛かるからな。
しかし、着目するところは悪くない。今後【色欲】が成長し、〈五ツリ〉〈六ツリ〉が使えるようになれば、おっとこれ以上はまだいけないな。黙っておこう。
その後メルトと話をしながら飲み交わし、続いて〈アークアルカディア〉の子たちの所に行ってさらに乾杯する。
そして盛り上がりまくっているうちにセレスタンが登場して言った。
「ゼフィルス様、宴もたけなわですね。そろそろ発表しても宜しいかと」
「! そうか!」
実はBランクになったらしなくてはならないことがあったのだ。
俺はセレスタンに促されて再び壇上に上がると、徐々にメンバーが注目し出す。
「傾聴! この場を借りて発表したいことがある! 大事な発表だ!」
俺の言葉に大部屋が静かになり、全員が聞く体勢になったのを感じた。
俺は意を決して発表する。
「俺たちはBランクギルドになった! これで上限人数は30人! 10人の枠が増えることになった! そこで、以前から宣言していたとおり、下部
「「「「わっ!!」」」」
再び大部屋が一気に大きな熱を持ってざわめいた。
以前〈アークアルカディア〉のDランク昇格試験。そして〈エデン〉への昇格試験を込みで行なったことは記憶に新しいだろう。
その合格者をここで発表し、〈エデン〉の昇格を認めるのだ!
「さあ、応募者の10人は前へ出てくれ!」
その言葉に従いDランク昇格試験に臨んだ10人が前へ出る。
新参者であるラウとルキアは残念だが不参加だったので見守ってもらおう。
全員が前へ出揃ったことで俺は再び発表する。
「では行くぞ! 本当は1人1人発表していこうと思っていたんだが、色々と予想を上回る結果が出てな。ここは1人ずつではなく、合格者を纏めて発表する形にしたいと思う!」
ざわざわ、ざわざわ。
再び10人がざわめいた。
アイギスたちの時は1人1人、順番に呼んだからな。
なぜ、今回はそうでは無いのか、それをすると、最後に呼ばれた子が微妙なことになりそうだったからなのよ。
「発表します! 今回の〈エデン〉昇格者は――――――――――」
ここでたっぷり引き延ばして、俺は言った。
「なんと10人全員合格だ!」
「「「「ええええーーーー!?」」」」
「「「「わーーーーー!!」」」」
「「「みんなおめでとう~」」」
結果をドキドキ待っていた〈アークアルカディア〉の10人はビックリ仰天し、結果を知っていた〈エデン〉メンバーたちは拍手で祝福した。
そう、今回は全員が全員むっちゃ活躍していた。〈新学年〉組も新しい
これで誰を落とすのよというくらいみんな
しかもまだまだ向上心が高い。
俺たち〈エデン〉メンバーは全員が全員に高ポイントを付け、その結果に満場一致で10人全員を昇格させることに決定したのだった。
さあ、もうそこからは盛り上がり盛り上がり、超大盛り上がりだ。
祝福と拍手と賛辞の嵐で〈アークアルカディア〉、いや今はもう〈エデン〉になった10人を出迎えた。
みんなで叫び、笑い、喜んで。
Bランク戦勝利&〈エデン〉昇格発表はこうして大盛り上がりで夜が更けるまで騒いだのだった。
第十八章 ―完―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます