第888話 上級職ランクアップ! アイギス編!
〈転移水晶〉で無事〈上下ダン〉に戻ってきた俺たち。そこでようやく俺は気を抜いた。
「いやースリリングだったぜ」
「もう無茶したわね。でもゼフィルスが無事で良かったわ」
おお!? シエラがデレた!
「心配してくれたのか?」
「当り前でしょ?」
「し、シエラ~」
少し顔を赤くして目を瞑り顔を逸らすシエラがごちそうです。
ご飯三杯は行けそう。
「ゼフィルス、私も心配したのよ! あんなに番人に追いかけられて、戻って来なかったらどうしようって」
「ラナ~」
感動。ラナまでデレた! 今日はデレ日か?
とても素晴らしい日だ! 少し体を張った甲斐があったってものだ!
「安心しろって。何しろ俺だぜ? これくらいで俺がやられるわけがないだろう?」
そう言って俺は勇者のキメ顔を作る。
おお! ラナがチラチラ俺の顔を見ては目を逸らしています。効いてるぞ!
「ん。ゼフィルスは最強」
「まあな!」
カルアの言葉に俺は大変気分が良くなった。
「あの、ゼフィルスさん、宝物庫でこのようなものを見つけたのですが、どうすれば良いでしょう?」
そう聞いてきたアイギスの手の中にはしっかり〈聖竜の卵〉が抱えられている。
俺は卵を見て思わずニヤッとした。すると、何を勘違いしたのかカルアが手を広げてかばう。
「ゼフィルス、これは食べ物じゃない。食べちゃダメ」
「いや食べないぞカルア!?」
やっぱりカルアはカルアだった。
カルアよ、食べないからな!? 本当にこれ食べちゃダメなやつだから。
竜が食べたければドロップを狙いましょう。
とはいえこの〈上下ダン〉でする話では無いな。
なんか注目されているし。ざわざわされている。
あれ? いつものことだっけ?
「それの話も含めてギルドハウスに一度戻ろうか」
「異議無しよ」
ラナの返答に全員が同意したのでダンジョンはここまで。
時間はまだ15時だったがアイギスの〈
ギルドハウスに帰ってきて大部屋。
学園祭の影響でさらにファンシーになってしまった部屋を見て「ふう」と一息吐きつつ、特大テーブルに向かって荷物を降ろす。
そして神棚に
今日もありがとうございます!
なお、女子はすでにギルドハウスのシャワールームへ向かったのでここにはいない。カルアもラナに抱っこされて連れて行かれてしまった。
なお、俺は〈スッキリン〉があるのでシャワーは夜だけの予定。
「〈スッキリン〉発動!」
さて、スッキリしたところで今のうちにマリー先輩の下へ行って今回ゲットした火山の素材を卸しに行こうか!
「またか兄さん!? 今度はランク9の火山素材やんか!」
「どうするマリー先輩、買い取るか?」
「いんや、鉱石系なんてうちが使うわけないやろー、アルル行きやな」
「そらそうだな~」
火山ではほとんど発掘での採集だった。つまりは鉱石類。
うーむ、やっぱり鉱石類だけだとマリー先輩の反応が弱いんだぜ。
「まあ、多少は使える素材があるようやから、そっちはもらおかぁ」
「毎度あり~」
「それうちのセリフやで兄さん!」
というわけでマリー先輩にはあまり買い取りはしてもらえず、ほとんどの素材はアルル行きになった。
そうして素材を持って帰ってくると、ちょうどシャワーを終えてちょっと色っぽい姿のラナたちが戻ってきた。すごくいい。
「待たせたわねゼフィルス!」
「いんや、待った甲斐はあったぜ」
「?」
ありがたやありがたやと心の中でありがたがりながら、今日の戦果、宝物庫にあった装備をテーブルに並べていった。
「すでに『解析』済みだ。武器の名称は〈ドラゴンダガー〉〈竜刀〉〈竜杖〉〈ドラゴンランス〉〈ドラゴンカイト〉〈ドラゴンイヤリング〉だな」
「〈金箱〉の中身ね! 私、凄く楽しみだったのよ!」
「ふっふっふ、俺もだ。しかもそこらじゃお目にかかれない数値だぜ?」
何しろ推奨LV60のレアイベントの報酬である。これ全部、なんと
「すごい迫力」
「本当に、強力な武器だと一目で分かりますね」
テーブルに置いた装備品たちを見て、ラナがはしゃぎ、カルアとアイギスは装備に目を見張っていた。
何かオーラ的な物が出ているのかな?
「この数値、本当に見たことが無いのだけど……。ねぇ、これって王家――」
「さて、それでは装備を振り分けようと思う! 装備は使ってなんぼだ。寝かせるなんて勿体ないからな!!」
シエラから何やら不穏なセリフが出てきそうだと『直感』が囁いたので被せ気味に装備の振り分けを宣言した。
「…………そうね」
シエラがジトっとした目で俺を見つめた後、色々何かを呑み込んだような素振りをして頷いたのだった。ふう、セーフ。
「良し、まずラナにはこの〈ドラゴンイヤリング〉を使ってもらおう」
「私が使って良いのね!」
「おう。ギルドバトル時は〈白の玉座〉に座ってもらうから外さなくちゃいけないが、ダンジョンでは〈自然適応ペンダント〉と合わせて使ってくれ」
「分かったわ! ありがとうゼフィルス!」
〈ドラゴンイヤリング〉の性能はすんごいぞ。単純なステータス上昇効果だが、俺の〈煌めく夜空の腕輪〉を超える性能を誇る。
ラナは絶対に倒れちゃいけないヒーラーだからな。
〈自然適応ペンダント〉の方はステータス上昇値が少ないので〈ドラゴンイヤリング〉でカバーしたい。
「続いてシエラは、この〈ドラゴンカイト〉を使ってくれ」
「すごい性能ね。今まで見たどんな盾より強いわ。ありがたく使わせてもらうわね」
〈ドラゴンカイト〉の分類は〈大盾〉なので俺は装備不可だ。そしてシエラの防御力をさらに上げたいので硬い装備はなるべくシエラに渡す。
「続いて〈ドラゴンランス〉だが、これは片手槍だからな。アイギスが使うといい」
「あ、ありがとうございます!」
エステルは両手槍使いなので、片手槍はアイギスだな。
特に、これから〈
この〈ドラゴンランス〉、片手槍なのにエステルの両手槍〈マテンロウ〉を余裕で超える性能を持っているからな、少し悩んだのは内緒。
「カルアは〈ドラゴンダガー〉だ」
「すごい。とても強そう。ありがと、ゼフィルス」
〈ドラゴンダガー〉は短剣だ。カルアが装備している〈結氷短剣・ヒウレェラ〉と交換する形で右手に装備することにしたようだ。左手に〈コウセイ〉を持ち替えた形。
〈氷属性〉短剣では無くなってしまったものの普通に強いぞ。
「俺は、今回は縁が無かったな」
そして残った二つはのちに〈竜刀〉をリカ、〈竜杖〉をメルトに贈ることに決まった。
〈竜刀〉は反りが有り、〈竜杖〉は両手杖だったからな。
杖はシェリアに、という考えもあったのだが、メルトの装備の方が弱かったので優先された形だ。
さて、ではいよいよメインディッシュ。〈聖竜の卵〉のお時間だ。
「竜。――あのゼフィルスさん。これは竜の卵なのですよね?」
「だな。〈幼若竜〉の『看破』にはこれは〈聖竜の卵〉、カテゴリーは〈竜〉とある。間違いなく竜だな、その卵だ。
アイギスはまだ実感が持てないらしく、テーブルの上に座布団を敷き、その上に鎮座される卵を見て困惑したように俺に聞いてきた。
「さて、モンスターの卵を
モンスターの卵は通常〈食材〉として使われるのだが、孵卵器というアイテムを使うと卵からモンスターを生まれさせることができる。
この〈聖竜の卵〉には〈食材〉カテゴリーは無いのだが、孵化させるには同じく孵卵器が必要というわけだな。
しかし、竜の卵を孵すには〈上級孵卵器〉が必要。残念ながらハンナの【アルケミーマイスター】では作製が出来ない。
竜の卵を孵せるほどの孵卵器を作るには【アイテム職人】系の上級職のスキルが必要だ。
エリアボスを呼ぶ笛である〈フルート〉の回数も回復出来る
〈上級転職チケット〉を使用すると聞いてアイギスが少し動揺した声を出す。
「な、なるほど」
「それについては今朝のブリーフィングで決まってたことだから気にしなくていいぞ」
「は、はい」
そう言ってアイギスをフォローしておく。おっとそうだった!
孵化させる前に大事なことがあったな!
「だが、その前に」
「その前に?」
「アイギスを【竜騎姫】にしに行こうか。こいつをテイムしている状態なら、間違いなく【竜騎姫】に〈
「…………ふえ?」
俺の言葉にアイギスの口から可愛い声が漏れたのだった。
ふっふっふ、卵状態でも〈竜〉をテイムしている事実は変わらない。
つまりは〈竜のテイム〉という条件を満たしているということに他ならないのだよ! 早速行動を開始する。
そこからの話は早かった。
何しろこの世界では【竜騎姫】は有名すぎる
ラナもシエラもカルアも見てみたいと挙手し。
アイギスは実感が追いつかないうちに〈聖竜の卵〉を抱えさせられて測定室まで連れて行かれ、〈竜の像〉の横に卵を置き、そのまま〈
「…………」
現れたジョブ一覧を見て、ビックリしすぎて声すら出ないアイギスが微笑ましい。
ふっふっふ、良いリアクションだ!
「わあ! 【竜騎姫】が本当にあるわよ!」
「本当に……発現不可能な伝説の
「竜に乗って駆ける? 速い?」
表示されたジョブ一覧を前に固まるアイギスと、その一覧を見てはしゃぐラナ、シエラ、カルアの温度差よ。
ちなみに俺は腕を組んで後ろで監督っぽく頷いていた。
うむ。それが君の成果だよアイギス君。なんちゃって。
「さあアイギス、【竜騎姫】をタップするんだ」
「あの、はい。【竜騎姫】、です」
これでアイギスは【竜騎姫】だ! 続いて起こるのはお馴染みの覚醒の光。
「! わわわ! これは、覚醒の光ですか!?」
「わ~! 綺麗ね! アイギス、とても綺麗よ!」
「ああ。ラナの言うとおりとても綺麗だ」
「その、これはとても、照れますね?」
ようやく心が追いつき、覚醒の光を浴びて深く実感した様子で頬をかくアイギス。
制服姿でお姉さんな雰囲気のアイギスが覚醒の光でライトアップされている光景は、控えめに言っても魅力的だった。とても綺麗で、幻想的で、俺はその光景を目に必死で焼き付ける。
「あ、終わってしまいましたね」
ほんの少し宙に浮いていたアイギスも、覚醒の光が収まっていくと無事足が地面に付き、これでとうとう〈
では、いつものセリフをアイギスにも贈ろう。
「おめでとうアイギス、これでアイギスは【竜騎姫】だ」
「――はい!」
アイギスの満面の笑みを見て、俺は頑張った甲斐があったなと再認識したのだった。
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