第885話 聖竜の卵をゲットする〈火山の入口ダンジョン〉
上級ダンジョンには隠し通路というものが隠されている事がある。
隠し扉と呼ばれているものと同じような感じだ。部屋か通路かの違い、それと隠し通路では鍵は使わないってところだろうか。
通路には様々なものがあって攻略の助け、あるいは妨げになる場合もある。
例えば次の階層への階層門が隠されていたりとかな。隠し通路の入り口が発見できないと永遠に先に進めない、恐ろしい罠もあるんだ。調査系の
逆に攻略の助けになるものが置いてあるのがここ、〈火山の入口ダンジョン〉の2層だ。その先に待ち受けているのはなんとレアイベントなのだ。
隠された道の先に
レアイベントはボスと戦闘が起こるケースも多いが、その分レアなお宝ゲットは確定。
実は隠し通路の先でレアイベントに遭遇するケースは結構多かったりするのだ。
前の〈嵐ダン〉の時は隠し扉で発生だったけどな。
レアイベントの数は一つのダンジョンに多くて2箇所程度しかないが、そこに行けば普通のお宝よりも凄まじいものが手に入るのだ。もちろん上手くいけば、という言葉が頭に付くが。
というのもこのレアイベント、大体がダンジョンの攻略適正レベルより遥か上の難易度を誇るため、「わーい隠し通路発見~」「LVが足らんな」「ぶびゃら!?」と返り討ちになる事も多い。
そのため上級下位ダンジョンのレアイベントですら安全にクリアするならLV30くらいからが適正値だったりする。場所によっては上級職LV60以上が適正値なんて場所もあるほどだ。大変危険である。ハイリスクハイリターンってやつだな。
適性値がLV60以上ならそこに眠っているお宝もそれ並なので、一端先に進んでLVを上げてから戻ってくるやり方が普通だ。
そして上級下位ダンジョンが一つ〈火山の入口ダンジョン〉の浅い階層である第2層では、〈竜の宝物庫〉というレアイベントが発生する。
ここは適正値がバリバリの上級職LV60以上である。
しかし、そこを低レベルでクリア、いや報酬をゲットする方法を〈ダン活〉プレイヤーは編み出していた。そして、この〈竜の宝物庫〉にはカテゴリー〈竜〉のモンスターである、〈聖竜の卵〉が眠っているのである。
アイギスには、この〈聖竜の卵〉を手に入れ、テイムしてもらうつもりだ。
というわけで、俺たちは早速〈火山の入口ダンジョン〉へとやってきていた。
「わ~、ここが火山なのね! なんだか凄く空気がもわっとしてるわ!」
「ラナ殿下、気をつけてね。周りは溶岩もあるから、誤って落ちると大変な事になるわよ」
「ん、溶岩、怖い」
ラナがはしゃぎ、シエラが諌める。カルアもシエラの言葉にコクコクと頷いていた。
シエラはエステルから、「どうかラナ様をよろしくお願いいたします」とお願いされているのでしっかりお目付役をしている様子だ。
ダンジョン門を潜ると正面にドデカい山が見えた。あれがこのダンジョンの象徴、大火山だ。ちなみにゲームではここから火山を登ることはできなかった。
ここを登りたくば
そう、この火山ダンジョンは珍しいステージシリーズ型ダンジョンなのだ。
ちなみにこの溶岩には普通は入れない。ゲームでは入れなかった。しかし何らかの理由で進入してしまう場合はある。そのときは戦闘不能になって〈敗者のお部屋〉へ強制転移させられる仕様だった。
このダンジョンの〈敗者のお部屋〉はダンジョンの中心地付近にあるため復活アイテムが無いと自力で戻ってくることは困難。もし落ちたら〈救難報告〉で救助を待つことになっていたのだが、リアルではどうなるのか分からない。
「見たところ、かなり気温が高いようですが、熱くはありませんね。〈ヒエヒエドリンク〉は優秀なようです」
「だな。ここはただ居るだけでHPが減るほど熱い地帯だ。〈ヒエヒエドリンク〉は必須だ。シエラとアイギスは補給を忘れないようにな」
「わかったわ」
「承知しました」
この火山地帯は常に熱さでHPが減るという凶悪な環境をしている。
そのため『耐熱』装備か〈ヒエヒエドリンク〉を飲んで対策しなければならない。
ちなみにラナとカルアは〈自然適応ペンダント〉を装備しているので問題無し。
「それじゃ、行くか!」
「「「「おおー!」」」」
カルアに索敵してもらい、出発だ。
このダンジョンは溶岩が固まった火山岩が地表を占めているという設定だったため、かなりゴツゴツしている。
草木は無く、露出した岩や石ころがそこら中に転がっているような環境だ。
たまに火山植物の採取ポイントはあるが、伐採ポイントは皆無。ほとんど発掘ポイントだな。時々発掘で素材をゲットしながら進む。
ここには木々はないので見晴らしは悪くない、索敵はしやすいのが良いな。ただ、
「『ソニャー』! ――ん、あの溶岩の中、敵うようよいる」
「溶岩にはあまり近寄らないようにな。きっと奇襲を仕掛けてくるぞ」
溶岩の中にはなぜかモンスターがうようよ潜んでいるので要注意。
近づくと溶岩から飛び出して襲いかかってくるのだ。
なるべく溶岩が流れていないところを進もうな。
「ん~、ん? あの岩、変?」
「カルアお手柄だな。あれは〈ロックミットゴイル〉という石のモンスターみたいだ。石に擬態していたみたいだな」
カルアが首を左に傾げ、続いて右に傾げてから岩を指さして変と言った。
何その動作。やっぱり耳で索敵するから集中するには頭を傾げる必要があるのだろうか? とても良いと思います。
それはともかくあの岩も奇襲だ。
岩に擬態し、近くを通りかかると容赦なく襲ってくる。ガーゴイルの一種だ。
見た目は石を背負ったヤドカリみたいだけどな。
これは『索敵』系が効きにくいため、目視で確認出来るまでカルアは気が付かなかったのだ。しかし、さすがは『直感』スキルがカンストしているカルア、見逃すことは無かったな。俺は〈幼若竜〉を抱えて情報を共有する。
さて、周りに溶岩は無いし、戦闘してみますか。俺は〈幼若竜〉を仕舞って指示を出す。
「戦闘準備だ。シエラ、『オーラポイント』頼む。引き寄せるぞ」
「任せて、『オーラポイント』!」
シエラの全体挑発スキルが飛ぶと、それまで周囲の岩に擬態していた〈ロックミットゴイル〉が動き出し襲ってきた。
その数、11匹。ちょっと多いですね。
「! こんなに潜んでいたのですか」
「索敵が効きにくいとこういうこともあるな。ま、こいつらは足が遅い……みたいだから各個撃破していこう! ラナ、獅子と守護、あと迅速をくれ」
「分かったわ! 『獅子の大加護』! 『守護の大加護』! 『迅速の大加護』!」
「『ライトニングバースト』! ふむ、敵は岩を背負っているが岩の部分に攻撃してもダメージを受けないみたいだ。気をつけろよ!」
「中級にも同じようなモンスターがいましたので大丈夫です」
初めての上級モンスターが相手なので心配してアイギスに声を掛けるが、アイギスは割と冷静だった。
「それに、ゼフィルスさんたちがいるパーティに入っているのですから、ただのモンスターなど恐るるに足りません。行きます、『スパイラルチャージ』! 『スラストゲイル』!」
嬉しい事を言ってくれるね。
さすがに下級職のアイギスでは火力に難があるが、敵の速度は遅い。アイギスはAGIをかなり育てているのでヒットアンドアウェイに徹すればそうそう被弾することも無いだろう。
「まずは数を減らそうか、『サンダーボルト』!」
「ん。『
「『属性剣・雷』! おっし! どんどん行くぜ! 『聖剣』!」
こいつらは〈雷属性〉と〈氷属性〉に弱い。
俺は〈雷属性〉で、カルアは〈氷属性〉を使い弱点を突いていく。
〈ロックミットゴイル〉が
シエラは6体くらいを引きつけてくれている。
ラナはそんなシエラが引き寄せる敵を光の宝剣でズドンッしていた。
そうこうしているとあっと言う間にモンスターとの戦闘が終了する。
「余裕だったな。みんな、お疲れ様だ」
「「「「お疲れ様(です)」」」」
ドロップを回収して一度集まる。
「でも、毎回これだけのモンスターが出てくるとなると困るわね」
「私は結局1体しか倒せませんでした」
「アイギスは下級職なんだから1体倒しただけでも立派だぞ」
シエラがどうしようかしらといった表情で言い、アイギスは自分の戦果に悩ましいといった表情だったが、そんなことないぞとアイギスをフォローしておく。
全体挑発スキルを使うとそこら中で擬態している〈ロックミットゴイル〉を引き寄せてしまう。
火山地帯の厄介な点だな。
とはいえ、今の戦闘と同じ事が出来るのであれば問題はあまり無いだろう。
動きが遅いので、シエラでも十分逃げられるからだ。
「よし、じゃあこういう時に使える効率的な殲滅方法を教えよう」
そんな時こそ俺の出番である。
首を傾げたり、またか~みたいな表情のメンバーたちを連れて少し移動し、その間に作戦を説明。移動完了後にシエラに再び挑発スキルを使ってもらった。
「『オーラポイント』!」
「よし、集まって来た集まって来た。それじゃあシエラ、トレインしてくれ。時計回りにな」
「分かったわ」
挑発したシエラが逃げる。『迅速の大加護』によって素早さがとても上がっているので〈ロックミットゴイル〉たちは追いつけず、時計回りに逃げるシエラによって徐々に中心地に固まり始めた。そこで一網打尽にする。
「だらっしゃー! 『シャインライトニング』! 『ライトニングバースト』! 『サンダーボルト』!」
「「「「「ゴ―――!!!?」」」」」
トレインして一掃。
RPGゲームの基本だ!
集められたところに俺の魔法を叩き付ける。ただそれだけの戦法だ。
「ちょっと残ったわね! 『聖光の宝樹』!」
「サンキューラナ!」
取りこぼしが出たが、ラナのエリア魔法でそれも殲滅。
こうして簡単に〈ロックミットゴイル〉は全滅してしまったのだった。
「ゼフィルスにしては、意外に普通の方法だったわね」
「ゼフィルスさんたちと一緒だと、本当に安心ですね」
「ん。ゼフィルスたち、強い」
うむ、やはり手堅い戦法はどんなときでも頼りになる。それは上級でも変わらない。
こうして俺たちは戦闘するときは纏めて一掃しながら進み、ついに溶岩で先へと進めない地点へと到着した。
「みんな見てくれ。溶岩が流れててこれ以上進めないだろ? ここでお待ちかね。本来この溶岩道を通りたければ特殊な上級職の〈スキル〉〈魔法〉を使うしかないんだが」
俺はそこで一度言葉を句切る。
目の前には溶岩の川が流れており、とてもでは無いが向こう岸に渡る事なんて出来ないような場所だ。だが、そこを通る技が存在する。
ここでは【ネプチューン】などで溶岩を凍り付かせる〈魔法〉を使って渡るしかない。〈浮遊戦車イブキ〉のような浮く〈乗り物〉に乗っても渡れないエリアなのだ。
しかし、それが無くても進める救済アイテムが存在する。
「このアイテムさえあれば溶岩を固め、進む事が出来るようになるんだ」
俺はそう言って〈嵐ダン〉で手に入れた〈鎮火の秘薬〉を取りだした。
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