第881話 上級職ランクアップ! ケイシェリア編!




「シェリア、前回は待ってもらって悪かった。今度こそエルフ最強職業ジョブに就かせてやるぜ!」


「お願いしますよゼフィルス殿。面接で言ったこと、叶えてくださいね」


 おう。シェリアの面接の時の話だな。

 あのことは今でも覚えている。シェリアは精霊術師で最強になりたいと言っていた。

【精霊術師】はまさに最強になれるポテンシャルを秘めている。

 シェリアもそれを望んでいるし、なら、俺はそれを叶えてやるだけだ。

 むしろ要望を言ってもらえたためにやりやすいまであるぜ。


「じゃあ、発表しよう。シェリアに就いてほしいのは――【エレメンタラーハイエルフ】だ。これでよかったよな?」


「はい。よろしくお願いいたします」


 ――【エレメンタラーハイエルフ】。

 精霊術師の最高峰の職業ジョブの一角だ。

 また、ハイエルフに至ることで精霊との親和性が上がり、今まで1体しか召喚出来なかった大精霊が複数呼び出せるようになる破格と言っていい能力を持っている。

 加えて『エレメントリース』で貸し出せる精霊を複数に出来る他、成長すると大精霊まで貸し出せてしまうのでさあ大変だ。そして最終的には精霊王まで召喚出来るようになってとんでもない威力の精霊魔法で薙払う。

 さらには召喚なので、ギルドバトルでは威力の減退無しでマス越え攻撃可能。


 これがシェリアが望んでいた職業ジョブ

 正真正銘、超高火力を叩き出すトップクラスの魔法ダメージディーラーだ。 


 俺は早速アルルの時も使った〈天進てんしんの宝玉〉を取り出した。


「シェリアにはこれ、〈天進の宝玉〉だ。使ってみてくれ」


「わ、よくこれが手に入りましたね? これは今、エルフとドワーフの間で取り合いになっているものですよ?」


「勇者だからな!」


 驚いたように手を口に当てて言うシェリアにドヤ顔で返す。

 ふっふっふ、前もって買っておいたのさ。


 この〈天進の宝玉〉はシェリアが言ったように「エルフ」と「ドワーフ」が上級職、高の上の特殊ルートへ〈上級転職ランクアップ〉するときに使う〈宝玉〉だ。

 エルフとドワーフで取り合いしているというのはそういうことだろう。

 もう少ししたらシェリア以外の上級職、高の上が現れるのかもしれないな!


 俺から〈天進の宝玉〉を受け取ったシェリアはそれを慈愛に満ちた表情で一撫でしてから使用した。


「ありがとうございますゼフィルス殿。これが……では、〈天進の宝玉〉を使用します」


 瞬間、さらさらと〈宝玉〉が粒子になり、シェリアの体へと入り込んでいく。

 エルフのシェリアが光の粒子に包まれていく光景は、なんとも言えない幻想的な雰囲気を生み出していた。


「よし、さらに条件を満たしていくぞ。とはいえもうほとんど準備は出来ているけどな」


「そうなのですか?」


 俺は改めてシェリアの姿を見る。


 実は先ほどここに来る前に着替えタイムを設けて、シェリアとシャロンには全身装備を装着してもらっていた。

 そして現在のシェリアは、〈精霊衣装シリーズ全集〉の精霊術師版を装備してもらっている。


 これはしっかりマリー先輩にお願いして仕上げてもらっていたものだ。実は前回ラクリッテたちの〈上級転職ランクアップ〉が終わった辺りから作ってもらっていた。

 ふっ、俺に抜かりは無い。


【エレメンタラーハイエルフ】の条件の一つが〈精霊に関する装備を五つ以上している〉だからな。〈妖精ダン〉では最奥ボスか40層守護型か徘徊型からしかドロップしない装備なので本来なら集めるのは少し大変なのだが、運良く〈金箱〉の全集が来てくれたからな。〈金箱〉産は見栄えも最高だぜ!


 それを着たシェリアは、なんというか幻想的だった。

 ファンタジー独特の衣装を思わせる全身装備。

 ぴったりと身体のラインが出るように装着され、緑系を基調として以前のエルフ装備にも似ている自然に溶け込むような独特の雰囲気を持っている。周りにキラキラした光が浮いており、シェリアいわく、これは精霊の一種なのだそうだ。

 精霊を常に纏うこの装備は、エルフにとってとても安心出来るものだとシェリアは言う。


 後は特定のスキルに加え、〈精霊と名の付くアイテムもしくは素材〉を持つのが特殊条件になる。

 なんだ簡単じゃないか、と一瞬思うかもしれないが、しかし面白いことに「エルフ」カテゴリーをスカウトするためのギルドアイテム、別名〈精霊園〉と呼ばれている〈ユグドラシルの苗木〉〈赤い実〉〈観葉植物セット〉には精霊の文字が無いのだ。

 なので別口で精霊と名の付くアイテムをゲットしなければならない。これがやや難しい。


 そこで比較的簡単に手に入るのが〈精霊樹の苗木〉から採れる〈精霊樹の幼い実〉だ。

 だが少し前、俺たちはそれよりも遥かに入手難易度の高い〈精霊樹の成樹〉をゲットしたため、今回はそこから手に入る〈精霊の果実〉を用意した。


〈精霊樹の成樹〉は〈救護委員会〉と交換してしまったが、〈精霊の果実〉は現在ハンナしか加工できないため、加工する代わりにいくつかの果実を〈エデン〉に譲ってもらっていたのが功を奏した形だな。まあ、それも込みで交渉したのは俺だけど。


「んじゃシェリア、この〈精霊の果実〉と〈上級転職チケット〉。この二つを持って〈竜の像〉へ触れてみてくれ」


「分かりました」


 シェリアに〈精霊の果実〉と〈上級転職チケット〉を渡すと、シェリアはゆっくりとした動作で〈竜の像〉へと手を置く。

〈上級転職チケット〉に反応してジョブ一覧が現れた。


「! ありました。【エレメンタラーハイエルフ】です」


 シェリアは昔からこの【エレメンタラーハイエルフ】に就きたかったのだそうだ。

 なんでも尊敬する偉大な長がこの職業ジョブなんだとか。


 そしてシェリアはなんのためらいもなく、即で【エレメンタラーハイエルフ】を選んだ。細い指先で【エレメンタラーハイエルフ】をタップする。


「私を【エレメンタラーハイエルフ】へ、どうか」


 すると選ばれなかった他のジョブ一覧がフェードアウトしていき、【エレメンタラーハイエルフ】だけが残り、シェリアの頭上へとクローズアップして煌めく。


 瞬間起こる覚醒の光。

 俺はそれを見てシェリアにお祝いの言葉を贈った。


「おめでとうシェリア。これでシェリアは【エレメンタラーハイエルフ】だ」


「ゼフィルス殿、ありがとうございます。ゼフィルス殿に付いてきて本当に良かったです。これからも〈エデン〉の力になれるよう精一杯努めて参ります」


 黄緑色の光に包まれて満面の笑みを浮かべるシェリアは、とても幻想的で綺麗だった。



 ――――――――――

 祝! 1000話!



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