第871話 〈エデン〉で相談。〈青空と女神〉を援助する!
〈青空と女神〉一行が帰ると、早速セレスタン、シエラ、リーナに相談する。
「ゼフィルスはどうしたいの? まずはそこを確かめさせて」
「そうですわね。ゼフィルスさんのしたい事を手伝うことがわたくしたちの役目ですわ」
シエラとリーナの信頼が厚いな。
俺はちょっと嬉しくなる。
しかし、ことは〈上級転職チケット〉、デリケートな問題だ。
俺は気を引き締めながら先ほど頭に浮かんだ考えを語っていく。
「俺としては供与を前向きに考えたい。〈青空と女神〉、そして上級生産職を味方に付けるのは大きいぞ。ハンナでは作れないアイテムだってあるし、回数アイテムの回復も任せられるだろう。当然アルルやマリー先輩でも作れない物もたくさんある。そういうのを注文出来れば〈エデン〉のさらなる実力向上に繋がるだろう」
「そうですわね。今のハンナさん、アルルさん、マリーさんを見ているととてもよく分かります」
「あなたにはマリー先輩に〈上級転職チケット〉を渡したっていう前例もあるしね」
「だからこそ彼らは〈エデン〉に助けを求めたのでしょうね。一番可能性が高いですから」
「まだ〈ハンター委員会〉も〈救護委員会〉の方も自分たちだけで手一杯だからな。学園が〈霧ダン〉を開放したことでいくつかのギルドを上級に進出させているが、そっちも自分たちで手一杯だ」
「まずは自分たちのギルドを強化するのは当り前のことですわ」
「仮に学園が〈上級転職チケット〉を他の生産ギルドに配るとしても、〈青空と女神〉より公式ギルドである〈生徒会〉の方が優先されるはずだもの。〈青空と女神〉が〈エデン〉に助けを求めてきたのにおかしな所はないわね」
「話を聞くかぎり矛盾したところは無いですわ。セレスタンさんはどう思いますの?」
「こちらでも情報を収集しておりますが、把握している〈青空と女神〉の状況に違いなどは見られませんでした」
まずは〈青空と女神〉の状況を確認する3人、ことは〈上級転職チケット〉だ。
向こう側の話を鵜呑みにせず違和感などが無いか話し合う。
おおう、俺には至らなかった部分だ。こういう所をサポートしてくれるのは本当にありがたい。
「それでは〈青空と女神〉の話は真実として、次に〈エデン〉から〈上級転職チケット〉の供与する是非について話を進めていきましょうか」
「でも、私たちだって反発が無いわけでは無いわ。自分たちに使われるはずだった〈上級転職チケット〉が先に他のギルドの人に使われるのは面白くないと思う人もいるはずよ」
「そこは信用してもらうしかないな。俺たち〈エデン〉なら〈上級転職チケット〉はこれからも多く集められる。その実績もある。昨日上級ダンジョンを初めて周回したとき、すでに2枚の〈上級転職チケット〉を手に入れているのがその証拠だ。最悪年度末までには全員分集められると思う。だから最低でも年度末までには全員上級職にすると確約する形で話を進められないか?」
「……そう聞くと、やはり〈エデン〉はとんでもありませんわね」
「ですが事実、最近の〈エデン〉の〈上級転職チケット〉の取得数を見ると年度末までにメンバー分のチケットを確保するのは難しくありません」
「常識が壊れるわ……」
リーナとシエラが頭を押さえる。
甘いな。〈ダン活〉は如何に〈上級転職チケット〉を効率よく集められるかが攻略の鍵だ。
俺は最大限の効率をもって挑んでいるだけだぜ?
セレスタンはさすがだ。すでに適応し、色々と考えている。
「僕からも、今回の話は受けても良いと思います。〈青空と女神〉は上級職こそいませんが学園の天才たちが集うトップギルドの一つに間違いありません。〈青空と女神〉に大きな貸しと恩を売るのは今後を見据えても有りだと思います」
「それは、そうなのだけどね。でもみんなには私たちが上級ダンジョンを攻略するために色々と手伝ってもらった恩があるわ」
「それこそゼフィルス様が言ったように確約すれば宜しいでしょう。年度末までに必ず上級職にすることを約束すれば反発は無いと思われます」
「確実に貰えるのでしたら、確かに反発はしなくなりますわね。いくら〈上級転職チケット〉が手に入りやすくなったからと言って、その価値は未だ高いまま。本来ならギルドメンバーの手伝いをしたからといって貰えるものではありませんもの。破格の待遇には違いありませんわ」
「ゼフィルスはどのくらいの供与を考えているの?」
「とりあえず2枚だ。【魔道具師】と【クラフター】の上級職だけはすぐに欲しいと思っている。その後はおいおい、チケットの余分が出た時で良いと思う」
「余分が出たときって……なんだか本当に余分が出そうなのよね……」
「このペースで獲得し続ければ確実に出ますわね……」
「2枚でしたら今すぐ配られても問題無い範囲かと」
様々な意見が出る。
特にこの世界の住人の心証に関して俺は疎い部分があるのでシエラたちの意見は重要だ。
そして、ギルドメンバーの反発はほとんど無いだろうとの結論に達した。
もちろん確約が前提だが。
「続いてメリットの話です。〈青空と女神〉は生産職関係全般に手を出している大手のギルドです。その在籍数40人、下部
「凄まじい規模ね。さすがAランクギルドだわ」
本来生産職のギルドというのは特化型の方向になりがちだ。
服飾師なら服飾師ギルド、鍛冶なら鍛冶ギルド。その方がやりやすいし、他のギルドとの棲み分けもできる。全部に手を出すというのはそもそも上限人数上難しい。ギルドハウスの工房という意味でもだ。
Cランクギルドの生産職がランク戦を仕掛けないのは、そもそもこれ以上ギルドを大きくしても意味が無いということでもある。特化型ならCランクギルドハウスさえあればスペース的にも問題無いのだ。
だが、〈青空と女神〉は大企業全てと契約し、Aランク以上のギルド全てを相手にすることで学生と棲み分けし、販路を確保。
Aランクギルドという大人数の人材を活かし、ほぼ全てのジャンルに手を出し成功しているとの話だ。
メーガス先輩は13代目らしいが、すごいものだ。
「〈青空と女神〉の生産職は多岐に渡り、優秀な人材が豊富です。今後の上級ダンジョンの攻略に生産職の力が不可欠なのは明らかです。味方に引き込むのが宜しいかと」
「セレスタンさんに賛同しますわ。ついでに〈上級転職チケット〉を援助するという情報も流しましょう。先ほども言ったように〈上級転職チケット〉の価値は未だ高いままですわ。これを援助するということは〈青空と女神〉が〈エデン〉に組み込まれたのだと示すのによろしいかと思います」
「上級生産職に〈
おう。3人に任せたらどんどん話が進んでいくぜ。
俺は方向を示しただけ。
やっぱりこういうことは3人に任せておいた方が良いな。
と、うんうんと内心で頷いていると。結論が出たようだ。
「少し問題もあるけれど、〈上級転職チケット〉を〈青空と女神〉へ供与する話は受けてもいいわね」
「これが他のギルドでしたら一蹴する所ですが、〈青空と女神〉であればむしろ援助をするべきですね。メリットがとても大きいかと」
「企業と関わり合いが深すぎるのがネックですが、そこは少し制限してもらいましょうか。上級生産職を生み出すことで上級ダンジョンの攻略も進むでしょう。ゼフィルスさんの向かう先には必要な手だと思いますわ」
満場一致。
これは〈エデン〉だけではない。学園全体の実力を向上させる切っ掛けになるだろう一手。
今のままでは生産職に〈上級転職チケット〉が回ってくるのはかなり先になるだろうというのは明らかだ。
ならば〈エデン〉が援助しよう。その代わり〈エデン〉の注文品を作るのが最優先ね。
さて話は決まったな。
まずは〈エデン〉メンバー全員にメッセージを使って速報で通達した。それの返事が返ってき次第メーガス先輩に返事を出そう。
続いて俺はこの前から考えていたある提案をする。
「生産職を援助する件についてもう一点俺から要望なんだが、俺たちは今回の上級ダンジョン攻略で新たな〈乗り物〉装備、〈浮遊戦車イブキ〉のレシピを手に入れた。これの作製もしたいんだが、俺はこれをいつも〈馬車〉の作製をお願いしている〈彫金ノ技工士〉へ頼もうかと思っている。新たな上級乗り物が完成した暁には〈エデン〉のダンジョン攻略は飛躍的に進むだろう。【クラフター】の上級職は〈青空と女神〉ではなく〈彫金ノ技工士〉に頼みにいきたい」
「いいですわね。それは非常に重要なことですわ」
「なるほどね。〈青空と女神〉は有名すぎるわ。今後〈エデン〉が援助すると発表するわけだし注目度が高すぎて変な横やりが来ないとも限らない。Cランクギルドに依頼するのは良いと思うわ」
「〈乗り物〉装備の作製のためでしたら間違いなく〈エデン〉のメンバーは〈上級転職チケット〉を使うのに賛同します。問題は無いかと」
これも満場一致だった。しかも即、全員肯定だった。
〈乗り物〉は〈エデン〉にとってそれほど大きな意味を持つのだと分かる光景だな。
さて、これも速報でメンバー全員に一斉送信する。
するとすぐに返信の通知が止まらなくなり、メッセージを送って僅か30分でメンバーの全員が賛成のメッセージを返してきたのだった。
さすがは〈エデン〉〈アークアルカディア〉のメンバーズ。
みんな分かってるねぇ。
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