第841話 上級職ランクアップ! ミサト編!

 前書き失礼いたします。

 新年明けまして、おめでとうございます!

 今年も〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!


 それではうさぎ年一発目、ミサト編をお楽しみください!

 ――――――――――――




「最後のトリはー、ミサトだ!」


「いえーい! 私、どんな風にパワーアップしちゃうのかな?」


「そうだなぁ。逆に聞くが、ミサトは予想できているのか?」


「【セージ】の上級職でしょ? ゼフィルス君のことだし、高位職のどれかが当然。そうなると【癒しの賢兎】か【マスターセージ】か。うーん、もしかして【色欲】とか?」


「ふっふっふ、ご明察だ。ミサトに就いてほしいのは、大罪系の一つ――【色欲】だ!」


 ヒーラー特化の【癒しの賢兎】も悪くは無い。

 だけど【癒しの賢兎】はレイド仕様というか、あまりにも回復が強すぎてレイドボス相手にも1人で全体を回復できる、ヒーラー系の頂点の一つだ。

 だが、あまりに強すぎるが故に普通のボス戦では持て余す。『レイドヒール』とか最奥ボスには必要ない。【心癒しんゆの聖女】に近い系統の職業ジョブだな。


 普通のレイドボス戦だって、1人に回復を任せて後は全部アタッカーとタンクという戦法は、一見効率が良く強そうに見えるが、リスクがむちゃくちゃ高くなる。

 何しろヒーラーが1人しかいないのだからやられたら終わりだ。

 また、自身のヘイトを下げたり、味方に押し付ける魔法も使えるが、もしヘイトが上回って【癒しの賢兎】が狙われたら一気に戦線は崩壊してしまうだろう。


【癒しの賢兎】は強すぎるが故に除外対象なのだ。等級は上級職、高の中。


【マスターセージ】は魔法型オールマイティな賢者系だ。しかし下級職の頃を忘れず、ヒーラーと結界の適性が高い。

 アタッカーからタンク、バッファー、ヒーラーまでなんでも出来る上、ヒーラーなのに狙われても結界で自衛できるという点が素晴らしく、全体攻撃を連発してくるボス戦でとても重宝されていた。


 また、対デバフに高い適性を持っており、下級職の時は唯一デバフを打ち消せる魔法を持っていた【セージ】だったが、上級職になった事でその方向性がより強力になり、デバフの無効化までできるようになった強職業ジョブだった。


 そして最後に、「獣人」系が持つ強職業ジョブルート、七つの大罪の一つ、「兎人」のカテゴリーが就ける――【色欲】。

 名前から性に関する職業ジョブなのかと連想するだろうが、〈ダン活〉は対象年齢B(12歳以上)が対象のゲーム。まったく過激なのは無い。せいぜい桃色空間を発生させる空間魔法を使ったり、『マジックパフパフ』で相手の動きを止めたりする程度だ。


 しかしその能力は非常に強く、【色欲】が司るのは、――ドレインと反射だ。


 ――『エナジードレイン』。【色欲】と言って真っ先に連想するのはやはりこれだろう。

 その例に漏れず〈ダン活〉の【色欲】はドレイン系に高い適性を持っており、敵からいろんなものをドレインしてしまう。HPやMPはもちろん、攻撃力や素早さを奪い、敵を弱くして自分はパワーアップしたりする。


 また色欲とは鏡と切っても切れない関係だ。色、情、愛、恋、どれをとっても鏡と深いつながりを持つ。その関係から【セージ】の時の結界が鏡化して反射が出来るよう進化した、というのが〈ダン活〉の設定だった。


 ――ドレイン、そして反射。いずれも大罪の名にふさわしい強力な能力である。


【セージ】の〈上級転職ランクアップ〉はレイド戦なら【癒しの賢兎】。最奥のボス戦、ギルドバトルなら【マスターセージ】か【色欲】の二択だ。

 そして俺はミサトに是非、【色欲】へ就いてほしいんだ。


「たはは~。さっすがゼフィルス君! 期待を裏切らない、そこに痺れる憧れる~」


「はーはははは! もっと褒めても良いぞ」


 ミサトのノリをノリで返す。ミサトの反応良し。


「ミサトは【色欲】で問題無いか?」


「もっちろん。これで〈エデン〉にもーっと貢献できるよ~。メルト様もどうかな?」


「そんな大切なことはミサトが自分で決めるべきだ。と言いたいが、ゼフィルスに頼っている時点で今更か。俺の意見としては、ミサトが【色欲】に就けば心強い」


「は、はわ!? メル君が素直だ! すごい、メル素直君!? いったいどうしたの!? デレた!?」


「ええいメル君と呼ぶなといつも言っているだろう! メル素直君ってなんだ? 勝手に変なあだ名をつけるんじゃない。おい、待て、何をする、抱きつくな!?」


 ミサトとメルトがイチャイチャしだした。


 ちょっとロリ気味な身長とは裏腹にとてもよく育っている胸部装甲をメルトに押し付けているミサト、むしろ抱きついているな。

 メルトの身長がミサトよりも低いせいでほっぺが幸せなことになっている。

 なんとかうさ耳を掴もうとメルトが手を伸ばすが、ゼロ距離では不利なようだ。届いていない。


「ぐお、くっ、ゼフィルス、こいつを引き剥がしてくれ、これじゃ進まないぞ!?」


「仲良きことはいいことだな」


 メルトが自ら幸せを手放すような発言をしている。きっと照れ隠しだろう。

 俺には分かるのだ。


 自然とメルトが解放されるまで、俺はミサトの〈上級転職ランクアップ〉の準備をしておくことにした。


 とはいえやることは多くない。

 俺は〈天罪てんざいの宝玉〉を取り出す。大罪系専用の〈宝玉〉だ。名前が大変分かりやすい。


 そして最後にこれを忘れてはいけない。

 リカたちが悪魔系のレアボス〈ブレンモール〉を撃破して手に入れたという〈じょうしき魔法杖〉。常識の文字が大変間違っている魔法杖だ。なんでその方向に間違っちゃったの?

 コホン、これは【色欲】を発現させるのに必須な装備だな。


 いやぁ、リカたちはマジナイスだ。


「ゼフィルス君お待たせ~」


「おう、終わったか。こっちもちょうど準備できたところだ、最後にもう一度確認させてほしいんだが【色欲】でいいんだな?」


 ミサトが戻ってきた。メルトが後ろで膝を突いてぜぇぜぇ肩で息をしているがスルーする。きっと窒息しかけたのだろう。


 満足したようで戻ってきたミサトに再確認。

 何しろ、大罪系だ。非常に強いとはいえ名前があまり宜しくない。

 しかし、この世界は実力主義、まったく問題無いらしく、ミサトは元気よく答えた。


「もっちろんだよ! メルト様も良いって言ってくれたしね!」


 ミサトは本当にメルトが大好きだな。

 息の整ったメルトは目を瞑り我関せずのポーズを取っていたが、顔がやや赤いぞメルトよ。まあ、からかったら可哀想なのでそのままだ。

 俺はミサトに向き直る。直った時に視線が下に行きそうなのが注意だ。


「こほん。よろしい。ではこれを使ってくれ。〈天罪てんざいの宝玉〉だ」


「使っちゃいまーす!」


天罪てんざいの宝玉〉をミサトに渡す。

 それをなんのお構いもなしに即行で使ったミサトを見て、後ろでラクリッテが再び震えている気がしたが、きっと気のせいだろう。


 続いて〈じょうしき魔法杖〉を渡して装備させ、〈上級転職チケット〉を持たせる。


「よし、これで準備完了だ」


「ドキドキしてきたよ~。ミサト、いっきまーす。タッチ!」


 ドキドキしているという割には勢いの乗ったタッチを繰り出すミサト。ぺちんって鳴った気がする。

 そうして表れたジョブ一覧には、確かに【色欲】の名があった。


「あったよ! ――【色欲】!」


 ミサトがタップするとズームされて【色欲】のみが残り、ミサトに覚醒の光が踊った。


「ミサトも、なのか」


「そりゃ【色欲】だからな」


「兎人」のカテゴリーの中でもトップクラスの職業ジョブである。

 ミサトに覚醒の光の演出がなされるのは必然だった。

 ちなみにミサトは光に包まれながらも色々とポーズを取ってメルトへのアピールを欠かさない。ノエルを見て思いついたのか?

 さすがだなミサト。


 演出が終わると真っ先にメルトの下へ来るミサトが言う。


「どうだったどうだったメルト様? 私も覚醒の光出たよ~」


「…………ああ。おめでとうミサト」


「「ミサトちゃんおめでとう~」」


 素直に祝うメルト。そしてラクリッテやノエルを始め、メンバー全員でお祝いの言葉を贈った。


「いえーい!」



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