第816話 2日目夜はギルドメンバーで大宴会!
学園祭2日目夜。
「わ~、まだパレードやってるよ。これって寝静まったりするのかな?」
「午後11時までは承認されているみたいですよ。何しろお祭りですからね」
「学園祭だけどな!」
ハンナ、シェリア、俺が外を眺めまだまだやっているパレード夜版の進行を見て呟く。
学園祭は2日目の夜になってもその勢いは治まらず、むしろテンションが上がる一方な気がしなくも無い。とはいえちゃんと消灯時間厳守なので午後11時には寝静まるだろう。寝静まるよな? まあ、羽目を外しすぎて朝までオールという学生も少なくないかもしれない。
俺たちもその例に漏れず、羽目を外している真っ最中だったりする。
学園祭中のみ開放されている貴重なエリア、屋上。
俺たち〈エデン〉メンバーはそこで宴会をしているところだったからだ。
はい。学園祭でしか味わえない食べ物屋さんをメンバーで手分けして巡って買い込み、ここで宴会を開いちゃっております! それだけでむっちゃ楽しいです!
そこへルルがやってくる。
「ハンナお姉ちゃん、ゼフィルスお兄様、見てくださいなのです! 今日はキラキラしたお星様がたくさん手に入ったのです!」
「あ、ルルちゃん。これは、〈魔石〉ですか! 〈魔石〉をこんなに綺麗に加工するなんて、すごいですね」
「おお~彫金屋系の仕事か? アクセサリーアイテムとかじゃなく〈魔石〉なんだな。ほんと綺麗だな~。良かったなルル」
「
ルルが星形に加工された〈魔石〉を両手一杯に見せてくれたので褒める。可愛い。
なるほど、既存の素材の形をそのまま変えることも出来るのか。凄いなリアル。
ゲームじゃ絶対そんなことはしなかった。多分〈魔石〉はゲットしたらどんな形でも使っちゃっていたと思う。
「いっぱいあるので、お
「わ~! ありがとうルルちゃん大切にするね!」
「ありがとうなルル」
「
笑顔いっぱいのルルが星を配りにてててと走る、それにシェリアが心配そうに付いていっていた。
「ルルちゃん様、俺にも恵んでくださるのですか!?」
「サトル、あなたにはこれで十分でしょう」
「へ? あのこれ、石ころ?」
「それがあなたへのルルの愛です」
「これがルルちゃんの愛!? 凄く小さいんだけど!? それにとても軽いよ!?」
シェリアとサトルは冗談が言い合えるほど仲が良くなったみたいだな。
ちなみに後になってサトルはちゃんとルルから星形魔石を貰えたようだ。
それぞれがそれぞれ、学園祭を楽しんでいる様子だ。
夜の校舎の上から明かりに照らされた学園祭を見ながら宴会。
うむ、とっても良いものだな!
「あ、ゼフィルス君、そういえばミーア先輩からお裾分けを貰ったんだよ、食べて食べて!」
「おう、いただくな!」
む! 今日は唐揚げさんか。しっかり良いところを突いてきますねミリアス先輩。
ハンナが取りだした料理は定番人気メニューの唐揚げさん。
しかも〈味とバフの深みを求めて〉ギルドのミリアス先輩お手製だ。一つ貰ってパクリ。
うおお! 醤油ベースの味わい深い染みこんだ味がジュワって出てきた。美味い、美味いぞーー! 噛めば噛むほど味が吹き出してくる! 美味ーい!
「あ、ゼフィルス君が良いもの食べてるよ~」
「わ、私もた、食べても良いですか?」
「もちろんですよノエルさん、ラクリッテちゃん。どうぞ」
「覚悟して食べろよ? あまりの美味さにホッペが落っこちそうになるぜ」
「はむ、―――~~~美味しい~!!」
「ほ、本当、と、とっても美味しいです! わ、お肉柔らかいのに外はパリパリです~」
ノエルとラクリッテはこれでも食に目が無い。俺が美味いものを食べているとちょくちょくやってくるんだ。その度にオススメを教えている。
特に今日は本当に様々な料理があるからな。さっきからこの2人は並べられた料理巡りをしているみたいだ。そして新しい料理が追加された瞬間に現れる勘の良さよ。
しかし、そんな彼女たちでもこの唐揚げさんはトップクラスに美味しかったらしい。
二つ目に手を伸ばしかけ、いやいや、まだまだ御料理はたくさんあるのだからと我慢し、ハンナにお礼を言ってそのまま向こうに行ってしまった。
今の屋上には数十個のテーブルが並べられて立食形式で料理が置いてある。
これが凄くて、料理を保温、状態をなるべく劣化させない日常アイテムなんかもあってそれを使って外で食べても熱々状態で食べられている。美味しい!
「もう一度やるぞー! カンパーイ!」
「夜になってもゼフィルスのテンションは治まらないわね」
「ゼフィルスさんですもの」
「あ、カンパーイだよゼフィルス君!」
「俺に毎回乾杯を返してくれるのはハンナだけだー」
「あ、しまった」
「失敗しましたわ!」
立食コーナーにいたシエラ、リーナのところで2人に乾杯。
だけど、乾杯はさっきから何度もやっている影響か2人の反応は薄い。
さっきから毎回付き合ってくれるハンナが尊い!
しかもね、ハンナが乾杯してくれると他のみんなも乾杯してくれるんだよ。
ハンナの存在が偉大すぎないか?
「あ、ゼフィルス君、私も乾杯して良いですか」
「もちろんだカタリナ。それより照明とか、テーブルの用意とかありがとな」
「いいえ、これくらい当然ですわ。また何かあればいつでも頼ってくださいまし」
「ちょっとカタリナ、自分だけ良いかっこ! 私たちも手伝ったんだよ!?」
「フラウの言うとおりです。1人だけ褒められるなんて許されないことです」
「もちろん2人にも感謝してる、フラーミナもロゼッタもありがとな」
「むふふ。どういたしまして~」
「こちらこそ、またいつでも頼ってください」
実は屋上のセッティングはカタリナ、フラーミナ、ロゼッタたちが請け負ってくれていた。
セレスタン采配の下、ササッと1時間もせずに会場っぽい雰囲気が出来上がってしまったのは凄いと思う。
「しかし、あの「~学園祭2日目お疲れ様会~」の横断幕はいったい誰が作ったんだ? いつの間に」
「あれは私たちが作りました!」
「シャロンか!」
「横断幕というか、適当な布にそれっぽく書いて、『防壁召喚』してくくりつけただけだけどね」
マジか。魔法って凄いな~。
「あ、ちなみに横断幕に書いてくれたのはトモヨさんです」
「私です」
「みんな急な話だったのに悪かったな」
「とんでもないよ。ゼフィルス君のためならたとえ夜の帳が完全に降りようともたたき起こしてもらっても構わないから!」
「いや構おうぜ? そこまではしないぞ?」
この宴会はゲリラ開催だった。
ラナとエステルと仕事している最中に、デート中のレグラムとオリヒメにバッタリ会ったのが始まりで、どこの露店が良かった。カップルならここに行くのがオススメとかいう話にラナとエステルが食いつき、そこにカタリナ、フラーミナ、ロゼッタが合流してなぜか学園祭で盛り上がるならという話になって、そこに両手に多くの料理を持ったノエルとラクリッテまでバッタリ出会い、わいわい喋っている間に今日の夜は集まって宴会しようということになったのだ。
うん、俺も経緯を知っているのによく分からない。女の子のパワーってすごい。
しかし、確かに学園祭は同じクラスのメンバーとばっかり行動している自覚もあるし、他の課のメンバーとも何かしらしたいという気持ちもあったため、この宴会は嬉しいものだった。
早速〈学生手帳〉のチャット機能でメンバーにメッセージを送り、夜には宴会としゃれ込んだのである。そして全員参加だ。学生のバイタリティってやべぇな~。
そんな事を考えていたら『直感』が緩やかな警告を囁き、直後腰に衝撃が走った。
「エリサちゃんの突撃よ!」
「おっふ!」
「ゼフィルス君!?」
犯人を見る。いや、見るまでも無く分かっていたけれども、俺の腰に抱きついていたのは紫の髪に赤目、悪魔ッ娘衣装のエリサだった。
STRが初期値で体が10歳児並みなのでまったく痛くない。
それを知っているからだろう。エリサは時々こうして突撃してくるのだ。
しかし、テンションが上がりきっているためかいつもより攻めが強かった。
「姉さまに続きます、ヒシ」
続いてエリサとは反対側の腰に抱きつくのは天使の輪に白のワンピース、天使の翼を付けたフィナリナだった。こっちは天使衣装とも言うべき装備である。昨日のコスコンの衣装、そのまんまだった。
「私の天使衣装はどうですか? 良い感じですか? 昨日は感想を聞きそびれました」
「私たちの格好、どうよご主人様? バージョンアップしてみたのよ! お祭りだしね!」
フィナは天使っぽい清楚な格好だった。天使の輪とちょこんと小さな白い翼がよく似合っている。
エリサは、悪魔、かな? 所謂ゴスロリという格好だった。確かに悪魔的可愛さがある。
黒い傘まで用意しているのだからエリサの情熱は相当だな。
「おう。2人ともすげえ可愛かったぜ。コスコン優勝もおめでとな」
「やりました」
「エリサちゃんに掛かれば優勝も楽勝よ!」
実はあの後、2人はコスコンで見事優勝を果たしたらしい。
2人は可愛いからな。紳士にとても人気があったのだろうと思う。俺も投票には参加したかった。
たくさんフィナとエリサを褒めておいた。
とそこで思わぬハプニングが発生する。『直感』が盛大に警報を鳴らした。
「あ、エリサお姉ちゃんもフィナお姉ちゃんもずるいのです! ルルも突撃なのです! とう!」
星配りから帰ってきたルルの突撃、鳩尾直撃コース。
「あ、ルルは待って!? おおお!? せ、セーフ」
ルルのおでこはボスをも倒す。
危なく誅殺されるところだった。あ、あぶねぇ……『直感』に従いルルが直撃する直前に抱っこする事で難を凌いだ。
「ちょ、抱っこ! ルルちゃんだけズルくない!?」
「ルルちゃん、羨ましいです。私とその場所を変わりませんか?」
「やーなのです!」
何この可愛いの。お持ち帰りしていい?
そう思ったところで背中がぞくりときた。振り返ればメンバーのほぼ全員の視線が集まっていたからである。
「こ、こほん。ほらルル、大事な話があるから一旦降りてくれ」
「分かったのです! ルルは良い子なのですよ!」
「ルルは本当に良い子だなぁ」
さて、ルルを降ろして周りを改めて見てみれば、うむ、アウト寄りかもしれない。
これは全力で誤魔化す必要がありそうだ。
ほとんど全員の視線を集めているのであれば、ちょうど良い話題があったなと思い出す。
俺は咳払いと二拍手でなんとか空気のリセットを図り、注目を集めてからしゃべり出す。
「こほん。みんなにお知らせしておきたいことがある。学園祭3日目、明日のビッグイベント、〈迷宮防衛大戦〉についてだ」
俺がそう言うと何人かの気が引き締まったのを感じた。
しかし、じっとりとした視線もまだ多い。
俺は極めて真面目なキリッとした表情で語る。エリサとフィナリナがまだ腰に抱きついていることを忘れて。
「――〈迷宮防衛大戦〉、最終日に七つのアリーナを貸し切って行なわれる学園最高にド迫力なイベント、約2万人の参加者を誇る、超巨大レイドバトルイベントだ! これに〈エデン〉は参加するぞ!(キリッ)」
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