第810話 10組はサービスで筋肉が接待してくれるってさ!
「見よ! これが他のどのクラスにも真似出来ない、マッスルポーズだ!」
シャキーンッ!
元〈マッチョーズ〉メンバーと〈天下一大星〉、そして元2組のウェルカム君の9人が壇上で筋肉を膨らませてポーズを取っていた。
ここは10組、中を覗けば偶然こちらのクラスに来たのだろうか、女子が3人集まったグループが両手を口に当てたポーズで顔を真っ赤にしていたのだ。悲鳴の原因は彼女たちだな。
「何をやってんだ?」
「む! 貴様は、ゼフィルス!?」
「ふふ、いったい何をしに来たのです?」
「今俺たちは筋肉の最終確認中なのだ。後にしてほしい」
「俺様の筋肉を忘れてもらっては困るな。ゼフィルスも見たいというのなら見ていっても良いんだぜ?」
「おいおい、こいつらまさか、全員筋肉済みなのか?」
壇上で筋肉を盛り上げて未だにポーズを決める9人に俺はまさかと言った声を出す。
前々から筋肉に汚染されていたようだった〈天プラ〉たちだったが、その汚染具合が進んでいた。いつの間にかあの細身だったサターンまで細マッチョになっている始末である。
この1ヶ月の間に何があったのだろうか?
さらにはサターンを10組に連れて行ったあのウェルカム君(後で聞いたが本当の名前はムカル君というらしい)まで筋肉に染まっていた。
「〈秩序風紀委員会〉だ。――それで、俺たちは悲鳴を聞きつけて駆けつけたんだが、本当になにをしてんだ?」
とりあえず事情聴取。腕章を見せつけることも忘れない。俺は筋肉9人に聞いた。
ちなみにリーナとナギは先ほど悲鳴を上げていた3人女子や10組の他のクラスメイトに事情聴取である。
「ぬ? その腕章は!」
「ふふ、おかしいですね。目の錯覚でしょうか?」
「貴様が、〈秩序風紀委員会〉、だと? 何かの冗談か?」
「俺様を――」
「やかましいぞ! さっさと話せ」
「俺様を忘れてもらっては困るな!?」
なぜか信じられていない俺。なぜだ?
しかし、腕章の効果自体は絶大。筋肉たちが説明してくれた。
「ふ、どうもこうも無い。先輩から筋肉接待という技能を教えてもらってな」
マッスラーーーーズ!!!!
そういえば〈マッチョーズ〉はマッスラーズに吸収合併されたんだった。
それの影響かーーーー!?
「10組には筋肉が多い」
「なら、出し物は筋肉以外無いだろう?」
「今は本番に向け最終チェックをしている所だったのさ」
出し物は筋肉以外無いだろう? じゃねぇよ?
「安心してくれ、しっかり環境に配慮し、こうしてタンクトップも装着している」
「本当はこの筋肉を十全に見せたかったのだが、上半身裸は学園から許可が下りなくてな」
そりゃあな! そりゃあそうだろうさ! それでも筋肉接待をやる気か!? 学園がよく許可を出したな!?
「このクラスには美しい筋肉が揃っている。ならば、やることは一つだろう?」
そんなこと聞かれても困るぞ!?
こいつらを一つのクラスに纏めたのは失敗だったんじゃないか?
「ゼフィルスさん、戻りましたわ」
「いや~、すごいねこのクラスは~」
ある程度聴取を終え、リーナとナギが戻ってきた。
リーナは少し困った表情、ナギはやや顔を赤くして頬を掻いている。
ナギはさっきっから筋肉ポーズを視界に入れないようにしていた。もしかしたら男子にあまり免疫が無いのかもしれない。
そして報告を纏める、即オペレーターに報告も出すと、「問題無し、注意喚起などは現場の判断に任せる」と返事が来た。ついでに10組の学園祭の出し物の概要も纏めた文章と共に。
それによると10組の出し物はテイクアウトも可能な焼きそば屋。なお壇上の筋肉と
またサービスで筋肉が接待してくれる。
最後の本当に必要?
途中まで10組の特色を活かした出し物でなるほどと納得出来ていたのに、最後だけよく理解出来なかったんだが?
とはいえ学園には正式に受理されているとのことだ。
そして、さっき悲鳴を上げていた3人女子は、どうやら筋肉好きらしい。黄色い悲鳴だったようだ。
筋肉を一目見に女子が来るとなると、これは正しいサービスなのだろう(混乱)
とりあえず、悲鳴を上げた女子には注意、10組にも「他のお客様の迷惑にならないよう悲鳴や歓声などはお控えください」と書かれたポップを貼ることを指示した。
こうして俺たちの最初の
「次行くか」
「はい」
「アイサー」
オペレーターに報告後、俺たちは再び巡回に戻った。
その後は、まあ色々とハプニングの目白押しだった。
1年生、気合いが入りすぎなんだよ。
どうやら〈新学年〉に対抗して頑張っている模様。頑張りすぎに注意だ。
〈新学年〉は今年から新設された新しい学年であり新校舎。
つまり外からの注目度が高い施設だ。
そこと渡り廊下で繋がっている〈戦闘3号館〉は間違いなく比べられるだろう。
人だって多く押し寄せるに違いなかった。
だからだろう、結構無茶をする人たちが多かったのだ。
HPバリアがあるから無茶ができるということもあるだろうな。
射撃アイテムを使って避ける人間に当てる、「人間的当て」とか、あれは良いのだろうか?
でも面白そう。眉間に当てたら豪華景品だそうだ。俺もやってみたい。まあ、眉間は危ないのでボツになったんだけどな。急遽ちょんまげと的の組み合わせを頭に着けて代用するそうだ。
続いて外。
外はすでにお祭りモード一色だった。様々な形の巨大なバルーンがいくつも浮かび、それだけでも気分を高揚させてくれる。
バルーンには横断幕などが貼り付けられ「迷宮学園祭・1日目」や「おいでませ学園祭」「学園祭にいらっしゃい~」などいくつもの学園祭の文字が躍っている。
変わり種ではモンスターの形をしたバルーンなども浮かんでおり景観を損ねない程度に来園者の心を楽しませてくれるだろう。
他にもイベントには気合いが入っており、「学園格闘大会参加者募集!」や「コスプレコンテスト開催!」、「最終日5000人参加型アリーナレイド大戦!」など大きなイベントの受付も行なわれている。
この学園祭でしか行なわれないイベントだ。俺も休み時間にはちょくちょく見に行きたいと思っている。
学生たちの気合いの度合いがうかがえた。
そしてあっと言う間に時は過ぎ、時刻は10時。
「―――時刻は10時になりました! 只今より、迷宮学園祭を開催します!」
そんなアナウンスにより、学園中は「わあああああ」という歓声が響き渡った。
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