第808話 学園祭当日の朝、テンション高めにハイタッチ!
あの後、ユーリ先輩と〈霧払い玉〉の納品について話し合った。
詳しくはリーナ任せだけどな。
突然の呼び出しに来てくれたリーナには感謝でいっぱいだ。
とりあえず、俺が知っている〈霧払い玉〉の売り値の40倍の値段で納品することに決まった。本当はもっと出そうかと向こうが言ってきていたのだがさすがに辞退。
40倍だぜ? さすがに貰いすぎだろうとの判断だ。
これ、将来的には〈エデン〉で売り出す予定なのでそこまで消耗品の価格を釣り上げられてしまうと逆に学生が買えなくなってしまうので困る、という理由もある。
色々と面倒ごとが終わって〈エデン〉で売り出すときはもう少し良心的価格にするつもりだ。こんな理由で攻略を止められたらたまらないからな。
ユーリ先輩は交渉終了後〈霧払い玉〉100個を手に、先ほどまでとは違う気合の入った表情で帰っていった。頑張ってほしい。
残りは今後随時納品予定だ。
「さて、ではワシからもお礼を言わせてくれ。〈上級転職チケット〉の収集、〈救護委員会〉のステップアップが好調に進んでいると報告を受けておる」
「まだまだ出だしですけどね。問題はこれから〈上級転職チケット〉を誰に使うかですよ」
「うむ。〈上級転職チケット〉を巡る問題はデリケートなものじゃ。当面は〈救護委員会〉に〈上級転職チケット〉を使ってもらい安全を確保。〈サンハンター〉と共同でさらなる〈上級転職チケット〉の収集をするつもりじゃが、これが非常に順調じゃ。〈上級転職チケット〉回収組織、第四の公式ギルド発足は思ったよりも早いかもしれん。まずは〈サンハンター〉に声を掛けておるが、向こうは乗り気じゃな」
学園長は予定通り進んでいることに喜ばしいといった喜色の表情を浮かべて言う。第四の公式ギルドの話も着々と進んでいるようだ。
Aランクギルド〈サンハンター〉をそのまま組織に加えることも検討中の様子だ。
しかし、それはもう少し先の話だな。
まずは人材育成、地盤をしっかり固めなければならない。
同時に〈救護委員会〉も育成し、上級ダンジョンの安全性をさらに高める狙いだ。
二つの公式ギルド(一つは予定)の連携にもなる。
「となると、学園祭が明けてからは〈サンハンター〉と行動を共にするのは〈救護委員会〉になりそうですか?」
「彼ら彼女らもだいぶ上級ダンジョンのボスに慣れてきたらしいからの。〈転移水晶〉もあるし、一足先に〈霧ダン〉でもボス狩りが出来る。徐々にではあるが〈エデン〉の手を離れていっても良い頃合いじゃろうて」
「出来る限り協力は惜しみませんよ。こっちにも益のあることですから」
〈サンハンター〉と〈救護委員会〉が上級ダンジョンで収集した素材などは市場に流れるし、〈エデン〉も仕入れがしやすくなる。
今の所、上級素材を加工できるのは〈エデン〉の関係者だけだ。買い取りは〈エデン〉へどうぞ!
これによって〈転移水晶〉や〈エリクサー〉を始めとする上級の消耗品アイテムの素材を、採取の手間なく集められるようになるのはかなり大きい。
時は金なりなのだよ。リアルブーストが徐々に掛かっていくのを感じるぜ。
笑いが止まらないな。ふはははは!
と、色々と学園長と今後のことを打ち合わせして、帰宅したのだった。
「さてさて、今週はまた忙しくなるぜ」
俺はそんなことを口走りながらカレンダーを見る。そこに書かれている今週の後半の日程には、迷宮学園祭の文字が書かれていた。
――〈迷宮学園祭〉。
11月の半ばに3日間行なわれるお祭りイベント。
ゲーム〈ダン活〉では、この期間はダンジョンの入ダンがNGになり、学園祭のイベントを謳歌する強制イベントとなる。
とはいえこのイベントはここでしか手に入らないアイテムや装備、果ては
それにイベント自体も結構面白い。
気に入ったキャラ同士で組ませてデートっぽくすることも出来るし、ミニゲーム的なものも多くて楽しめる。むしろ時間が全然足りないと嘆くことも多い。スクショがよく
学園全体がお祭りムード一色になってわいわい騒ぐのだ!
俺もものすごく楽しみだ。
今週は月曜日と火曜日が学園祭の最終準備で授業は免除、そして水曜日から金曜日までが学園祭本番だ。
その間、俺たち警邏組の1組から6組までは〈秩序風紀委員会〉の指導の下、しっかりマニュアルを叩き込まれ、そうして気がつけばもう水曜日、迷宮学園祭の当日になっていた。
「ハッピー学園フェスティバール!!」
「い、イエーイゼフィルス君!」
迷宮学園祭当日。
俺とハンナはいつも通り俺の部屋で朝食を取ろうとしていた、のだが、テンションが思わず高くなってしまう不思議!
そしてノリを頑張って返してくれるハンナが尊い!
ちなみに何で学園だけスクールじゃないんだという異論は受け付けない。
ただフェスティバルって言いたいだけなんだよ。ゲームでイベントでお祭りと言えばフェスだ!
「ハンナ、タッチタッチ!」
「はいはい、ハイタッチね」
二度ハンナとハイタッチ。
今日は朝からテンションが高くてやばいんだ。
ハンナもクスクス笑いながらあわせてくれる。ハンナマジいい子!
「それで、今日の朝ごはんはどうする? いつもと同じ? 軽くする?」
「軽めでいこうか! フェスが始まれば色々とおいしいものが売り出されるはずだ!」
「楽しみだね!」
「おう!」
学生の出し物は半分が食べ物系だ。どんな食べ物が売られているのか楽しみだぜ。
「でもゼフィルス君、お仕事はちゃんとしなくちゃダメだよ?」
「分かってるさ。でも警邏の仕事は割と自由が利くんだ。自由時間も多いらしいしな。その代わり突然自由時間が終了することもあるようだけど」
俺たちが〈秩序風紀委員会〉と共にする仕事は警邏。
しかし、見回るだけではない。ちゃんと相手を捕まえる権限も持っていたりする。
当然スキルを使うこともあるだろう。スキルや魔法を使った乱闘騒ぎだってあるかもしれない。そんな時、応援の要請が当然のようにあって呼べば近くに居るメンバーが駆けつけることになっている。ただ、近くに居ればその人が警邏中だろうが休憩中だろうが関係なく集合なので、自由時間が終了になることもあるのだ。
その代わり、自由に行動できる時間は多めに取らされている。
買い食いの機会はいくらでもあるだろう。
俺はハンナから軽めのフレンチトーストをいただき、フワッと蕩ける食感に舌鼓を打った。美味い!
朝からこんな美味いものを食べていいのだろうか? ハンナ、もしかしてフェスティバルに対抗してる?
いや、ハンナのご飯はいつも美味しかったな!
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